第18話
ジグゾーパズルが完成し、大きな城と緑で覆われた森があらわになった。青い空に鳥が飛んでいて。俺が求めているのはそんなことではなく、スキルの分析の上達だった。母さんはジグゾーパズルを覗き込み、間違いがないか細かく観察していた。
「間違いなんてないけど」
「そうじゃなくて」
「じゃあ何だよ」
「まあ」
母さんはそう言って台所に向かい料理を再開した。揚げ足を取るつもりなら始めから興味を持つなよ、とは言えず、俺はジグゾーパズルは箱に仕舞う。
ミルクパズルのほうは難しすぎるので少し手を出して止めてしまった。
「もう一つあるじゃない」
母さんの言葉を無視し、俺は2階に上がっていく。長谷部尚樹からメールが届いていたが、骨董品についての相談だったので、範囲外だと伝えておいた。
俺は再び本屋に向かうことにした。途中まで歩き、古びた本屋を通りに見かける。少し寄って見ようと思い、店内に入る。半開きになった扉を開けると、奥にいる男が顔を覗かせた。すぐに男は店の奥に消えるが、ずいぶんと無愛想な人に見える。
店内は所狭しと本が置かれ、平積みになった本を一つ手に取ってみた。普段は本を読まないので、ページを開いても、頭の中に文字が入ってこなかった。少し読んで、元の場所に戻すと、本棚に陳列されている本を見ていく。背表紙を眺めていると、頭の中で機械音がした。
『分析3を取得しました』
心の中で声を上げる。よく見ると薄っすらと本と本の間から光が漏れていた。その光は紫色をしていて、そちらのほうに吸い寄せられるように歩いていく。光の主は古びた辞書だった。価格を見ると3000円となっている。税込みだが、読んでみても何の辞書かわからない。古文の辞書だろうか。後ろのほうでは言葉が並べられてあるが、前半部分は崩れた日本語が使われていたのだ。
『霊感が1あがりました』
『分析4を取得しました』
俺は分析が上がっていくので読み進めてみることにした。しかしながら先ほどの男が寄ってきて口を開いた。
「立ち読みするなら、購入してくれませんでしょうか?」
下手な接客を受け、少し気分が悪くなったが、俺は財布を出して本を買うことにした。店を後にすると、少し立ち止まり、本を開いてみた。相変わらず紫色のオーラで覆われていた。赤髪の少女に聞きたいが、そいつは頭上にいない。しばらく前から姿を見せないのだ。
本を読んでいると、電話が掛かってきた。長谷部尚樹からだった。
「もしもし」
「浩太さん、霊感で骨董品を調べられないですか?」
「無理だと思うけど」
「なんか、オーラみたいの視えません? 骨董品には宿るっていうじゃないですか」
俺はそう言って、ふと思い出した。紫色の光がそれなんじゃないかと。
それなら、美雨さんも視えるのではなかろうか。
「妹さんに聞けばいいじゃないか」
「だから言ってるんです」
何をだ。
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