第12話
郵便受けに茶封筒が入っていて、長谷部尚樹さんから手紙が届いていた。母さんが不思議そうに俺に手渡すが、見舞いに代わりに行ったのは俺だった。
長谷部尚樹の手紙はパソコンで一度書いた文章を印刷したようだった。俺は一度さらりと目で流すと、もう一度読み返してみた。
話の内容は、俺のおかげで除霊されて、長谷部さんは元気になった。林檎美味しかった。長谷部尚樹が食べることに疑問を持たないように。祖母はまだ固形物を咀嚼できないという話だった。
「仕方ないですよね笑」
と書いてあった。長谷部尚樹には可愛い妹がいて俺と結婚させることはできないと釘を指していた。
「目に入れても痛くないんです」
長谷部尚樹の妹の
情けない話だと前提を置き、美雨に同行してもらえないか、という話。
最後の行には電話番号があった。
俺は電話するか迷っていると、母さんが偶然にも背中を押してくれた。
「そういえば、長谷部さんのところの娘さん、大学のコンテストに出るらしいわよ」
「そんなに美人なの?」
「え、会ったことないのか」
「まったく」
「あんた、生活リズムが普通じゃないからね」
俺はもう一度手紙を読んでみた。
「長谷部さんからの手紙?」
「そう」
「ちょっと」
母さんは語尾を強くするが、俺は気にせずに2階に上がり、自室に入った。手紙に記載されていた電話番号にスマホから掛けてみることにした。
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