第7話

 病院の入口から離れるために建物を回り、物陰に隠れた。入口付近には警備員のおじさん達が集まり、何かを話し合っているようだった。一人が病院の入り口を開け、作動している警報のそばに立っているのだ。頭の中で再び機械音が聞こえてきたのだが、今はそれどころではない。


 俺は後ろ足でその場から退いていく。バキッと枝のようなものを踏んでいた。遠くにいる警備員の一人と目が合う。


「あああ」


 警備員は大声をあげたのだ。


「ちょっと君、君」


 警備員はそう言って俺の方に走ってきた。自転車に乗った警備員は、別の方向に走っていく。


 俺は木の陰に隠れると、咄嗟に「ハイド」と呟いた。


 警備員のおじさんがすぐに木を回り込み、俺の目の前に立った。


「そんなところに逃げたって、え、あ」


 警備員のおじさんはそう言って木の上を見上げた。木をトンと叩く。


「降りてきなさい」


 俺のすぐ目の前におじさんがいるのだが、彼は全然気付いていないようだった。


『隠密6を取得しました』

『ストレス耐性4を取得しました』


 頭の中で機械音がし、おじさんが聞いているようで平静を保つのが辛かった。ストレス耐性がなければ、俺はハイドという姿を消す能力を解いて、自首していたに違いない。


 別の警備員がやってくると、おじさん警備員に話しかけた。


「木を登ったんですか?」

「いや、わからねえ、急にいなくなったんだよ」


 若い警備員は木の周りを調べる。


「たぶん、あっちに走っていったんじゃないですかね。木を死角にして」

「頭いいな」


 若者の警備員が指さした方向へと二人の警備員は走り去った。


 俺は大きく息を吐くと、足が急に動けるようになっていた。高い柵を伝って、出口の方へと向かうが、門の前には警備員達が集まっているのだ。そしてバイクが門の側に停められていた。ドコデモックの制服を身に着けた男が警備員の男と話し合っている様子だった。そして俺はあるスキルを閃いていた。さきほど警備員が集まっているときに、閃いたスキルだ。


『索敵1』


 使い方はたぶん敵を探知するスキルだろう。

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