第5話

 部屋まですり足で歩くと、扉をゆっくりと開けた。隠密って、忍者とかが使う隠密行動のことだろうか。俺は自分の行動を振り返ってみた。ストレス耐性は暴走族に出会ってから身に着けたものだった。側にあった紙きれに『ストレス耐性』と書き込む。レベルがあった気がするが、覚えていないのでここでは書かない。父さんに見つからないように階段をゆっくりと歩いていると『隠密』を手に入れた。


 ベッドに横になり、ノートに書かれた言葉を眺める。まるでロールプレイングゲームみたいだな。

 俺は部屋を出て、階段を下っていく。一番下まで降りると、今度は誰にも気づかれないように階段を上がっていく。うん。隠密のレベルは上がりやしなかった。代わりに『体力』を1上げることに成功した。これならランニングをしたら体力は上がるのだろうか。

 

 ランニングウェアに着替える。たぶん母さんは病み上がりの俺を見たら絶対に走るのを止めるように言う。そういう面倒事を避けるために、俺は誰にも気づかれないように忍び足を使った。階段を降りて、一階の廊下を渡る。


『隠密2を取得しました』


 俺は廊下に立ち止まる。どうして上がったのか、謎だったが振り返らずに扉をゆっくりと開けた。


 ランニングをスタートする。


 近所にある大きな公園を目指す。途中で坂道を登ったのだが、そのときにも『体力』を1上げることができた。なんか結果が見えるってやりがいがあるな。そのまま、大きな公園を目指し、勢いよく走っていく。


 公園の前の通りには病院があり、深夜になると薄っすらとした灯が建物の中で光っている。病院の正門は開いているので、中に入ることはできるが、門の横にある駐在所には警備員のおじさんが常駐している。俺は病院の前で立ち止まった。


 もしかしたら、『隠密』のレベルを上げられるかもしれない、そんなことを思い浮かべたのだった。

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