第4話

 玄関の扉を静かに開けると、母さんが立っていた。心配そうな顔をしている。靴入れに靴を入れると、母が騒がしい声を出すのだ。


「あんたまた変なところに行ってきたでしょ」


 公園のことを言ってるのだろうか。それとも暴走族に絡まれたことを言っているのか。


「なんでもない」

「あ、怪しい」


 母さんはジロリと薄めになる。


「なんでもねえから」

「隠しごとしてるでしょ」

「し、してねえから」

「ふーん、まあオヤツあるから」

「もう夜だけど」


 俺はスマートフォンを見るが、時刻は22時を回っていた。廊下を渡り、リビングに入るとテーブルの上には新聞紙が置いてあるだけだった。


「おやつってどこ?」

「嘘です」

「はあ」


 俺は母を一瞥してリビングのソファにドテンと腰掛けた。目を閉じると、暴走族とのやりとりが浮かんできた。我ながら激しい出来事だった。スキルらしき物を覚えたが、未だにどうやって身につけたのか分からなかった。


「変なところなんて行ってないからね」


 俺が言うが母は無視をしてテレビを観ていた。放送番組は若い男が若い男とじゃれ合っているもの。気分が悪いんだが、何も言わないでおく。


「あんたも何か出来たらいいのにね」

「何かできるかもよ」

「資格とか取ったの?」

「そんなものじゃなくてさ、俺だけができるみたいな」

「意識高いわね。悪いことじゃないけど」

「そういうのじゃねえから」


 俺はそう言って台所の方に向かい冷蔵庫を開ける。中からジュースを取り出してぐいっと飲み干した。


「ビッグになれるとかじゃなくてよ、ビッグになれるのになってないみたいな」

「へえ、なるほどね」

「なんだよ」


 ジュース缶を台所に置くと、リビングの扉を開けて2階へと上がる。階段を上がる途中で父さんに気づかれないように静かに歩いた。すると。


『隠密が1上がりました』


 頭の中で機械音が聞こえてきたのだ。


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