第21話 死徒

 二十八部衆が守る街も村も沼入りさせて滅ぼして、やって来ました次の四天王。奴は市街の外で決戦を挑んで来た。


 巨大すぎてゲートを超えられないサイズの石の巨人、その上、中心部が赤熱して燃えてやがる、魔法生物か? こんな生物は自然発生しない、作られた何かだ。


『止まれー一いっ! そこまでだっ、お前達は悪魔かっ? 病原菌を撒きながら前進するなど、そのような事は決してしてはならんと言う事すら分からんのかあっ!』


 はい、悪魔です、鑑定眼持ってたら分かるよなあ?


 前の街も前の村も、ペストに感染して更に複数の病気を患って、それでも生きて行けるような奴は少なくて、抵抗力も減って組織が壊死して真っ黒になる黒死病で死んで行った。


 真っ赤な痘瘡出してるのは天然痘、下痢で下痢で水便出すのがコレラ赤痢、片足動かなくなるのがポリオ、水を怖がるのが狂犬病。


『そうだ、悪魔だっ、よく見てみろっ! お前達が人間殺しまくって国を滅ぼして、人間を食肉として扱ってたから、聖国で勇者召喚が行われたっ! でも来たのは勇者じゃなくて、悪魔だったわけだっ! アハハハハハハッ!』


『くそうっ』


『魔族の魂でも犠牲にして作られた奴が、人の道や神の道を説くとはなあ? お前ら殺し過ぎたんだ、毎年人間数万人犠牲にして、生贄に捧げさせて来たから、それだけの人間を食って来たからっ、人間達の怨念で異世界から悪魔が召喚されて、お前達を殺しに来たわけだ、ギャハハハハッハハハハッ!』


 武人タイプらしいので、出来るだけ挑発して怒らせてやる、マジの殺し合いに病原菌散布だけは駄目だとか、お公家集団かよ?


 出来るんなら化学兵器散布でも、麻薬の散布でも何でもやってやる。


『よくも家族を殺したなっ、俺達の国を滅ぼしたなっ、何も悪いことなんかしてなかったのに、俺達がお前たちに何をしたと言うんだっ!』


 リッチ連中、正当な怒りをありがとう、俺のモチベーションもその辺りだ。でも子供の言い分。


『…………』


 言葉での言い合いには勝った模様。巨大でも複数の魂で練られている訳でもなく、スレッタさんのエリアルみたいに手足や剣に別々の魂が入っている訳でもない、高い知能を持ち合わせている訳でもない。


 人間国は複数殺されて滅ぼされてしまい、全員お前らに食われた。


 どうせ綺麗事しか聞かされてなくて、魔族を救うためとか適当な嘘で騙されてたんだろう。


 石の巨人に封印される時も、喜んで志願した馬鹿。


『こっちはお前ら四天王と魔王に勝つために、地球人30億人犠牲に捧げて来たぜ、どうだ? 怖いか? レベル八億の化け物で悪魔と戦う気はあるかっ? 今すぐ始末してやるっ!』


 リッチ連中は参戦、騎士団長とマリオ君は弱すぎるので、一瞬で火炎系の攻撃食らって、ストーンゴーレムごと焼かれる恐れがあるので後退させ督戦側に。


『正々堂々の決闘を望む、後ろの市街地には手出し無……』


 そんなもん聞くとでも思うか?


『マイクロブラックホール』


 奴はサッカーのキャッチャーみたいなスーパーセーブでもしようと思ったのか、ブラックホールに手を伸ばしたが、手ごと吸収されて持っていかれ、残念なことに奴らの市街地にはマイクロブラックホールが到達した。


『そっ、そんなーーっ!』


 俺達が正々堂々と戦って、お前が死んでからも市街地には手出ししないとでも思ったか? リッチ連中みたいに苦しむよう、お前の目の前で蒸発させて、吹き出すジェットにして素粒子以下の「弦(ひも)」にまで分解してやる。


『あああっ! あああああああああああああっ!』


『目の前で大事な物を奪われる気分はどうだっ? それがお前たちが今までやって来た事だっ、苦しんで苦しんで苦しんでから死ねっ!』


 いつも通り、ブラックホールの周囲に事象の水平線が発生して、市街地の真上でグルングルン回転してからジャイロ効果で安定して、市民も建物も城壁も全部上空に吸い出されてから、上下方向には吸いきれなかった物質がジェットになって吹き出した。


 この時点でいかに魔族と言えど分解されて放射線で焼かれて、真っ黒な特異点を見ることもできず死んだことだろう。


 周囲は暴風で満たされ急激に天候が崩れて、ここが低気圧になってダウンバーストも発生、地獄の底みたいな天気になって、ストーンゴーレムに入れて置かなかったら騎士団長でもマリオ君でも死んでいただろう。


『ハハハハハハハハハッ、アハハハハハハハハハハハハハッ!』


 もう完全に悪役、守護者が守るべき市民、お前が見ている目の前で焼き尽くして「ひも」にまで変換してやった。


 リッチ連中でもドン引き、武人を倒した後は市民に手出しせず立ち去るつもりでいたのか、ここまでの破滅は求めていなかった模様。


『し、市民たちがああああっ』


 無くした左手を伸ばすが時既にお寿司。あの暴風と地獄みたいな放射線の中で生きられる市民なんかいません。


 やがてマイクロブラックホールは蒸発したが、集まって来た黒雲と雷雨と大音量は消えない。


 凄まじいまでの稲光が落ち、世界がでんぐり返るぐらいの豪雨が降り、普通の物理法則の世界が帰って来たが、ほんの数秒この世界に特異点が出現した悪夢は消えることが無い。


『見たかっ、これからお前たちの都市は全部こうしてやるっ、二度と再建できないようになあっ、放射線で汚染されまくって、まともな生物には絶対に絶対に絶対に再建させてやんねえっ、ハハハハハハハハハッ!』


 石の巨人には悔し泣きする機能まで付いているようだ。


『おのれっ、おのれえええっ!』


 俺のストーンゴーレム目掛けて、ドッスンドッスン走って来た燃える石の巨人。


『アンチマター』


 俺は「ハアアーー!」と気合入れずとも反物質が生成できるので、低速移動してくる奴に100発ほど反陽子を叩き込んでやった。


 防御呪文も反射呪文も突き抜けて、何もかもが対消滅で消えて行く。


 消えると言う表現は間違いだな、全てが吹き飛んで眩い光に変換されて、量子論的爆発の前には、石なんて脆すぎる構成材、粉々のナゴナゴに砕かれて消えて行った。


『む、無念…… 市民たちよ……』


 温情でせめて一太刀と思ったが、そこまで届く大分前で力尽きて、石の巨人は砕け散った。



 モニターを見ると、リッチ連中や騎士団長もマリオ君までドン引き。


 流石にここまでの「処刑」は望んでいなかったのか、市街地には手出し無用と言った武人の目の前で、都市にマイクロブラックホール叩き込んでやって、市街ごと消滅させてやったのはやりすぎ。


「立ち去ろう、次の都市へ」


 後はゴーレムの中でゴロゴロしてたら勝手に着く、最初はちゃんとした格好をしていたが、洗濯できないのでパンイチかサルイチ。


 ちなみにサルイチと言うのは猿股一丁と言う意味だ。


 こっちでもデーモンコアレベルの魔石作ってやったら、水使い放題でドバアアアッ! と出せるが、るつぼも各種設備が無いのでやってない。


 ストーンゴーレムでも飛べるようになるが、面倒なのでやってない。


 うん、全員ドン引きしている事なので、残りの四天王も二十八部衆もヌイて、直接魔王の所へ行こう。何か準備してやがるかもしれないので、それが済む前に行こう。


 四天王は帰りにでも訪問して殺して行こう。


「もう、魔王の所へ行こうか?」


「いいんですか?」


「ああ、人間が奴隷として捕らえられている訳でもなさそうだし」


 全員人肉の塩漬けか腸詰か燻製に加工され終わっていた。


 救出できる状態でもない、復活させるにも苦しい思いをし過ぎて、魂も散逸して記憶もなくなって、天命が尽きていて復活も多分不可能。


 毎回いないのを確認してブラックホールかアンチマター、人肉専用の食肉加工工場がある時は証拠隠滅。マリオ君には見せてやらない。


 魔族が人間世界にやってきた因果を突き止めて、縁(えにし)の起こりまで遡ることが出来たら、全員復活させることも可能かもしれない。


「さあ、魔王城へ」


 向こうでも魔王城と言っているのかどうか知らないが、スホーイやミグは西側の呼称ではフォックスバットとかフロッガー。


 フルメタでも両陣営で呼び方が違って、製造元ではmil15とか呼んで、ソースケの陣営では中二病のカリーニン大佐がヴェノムとか命名してたが、流石にゴーストライターが書かされていた頃には断念した模様。


 視点や人称的には正しい記述になったのかも知れないが、1巻の頃のように手に汗握るような表現やらは全部失われて、どこそこの誰かも知らない隊長がやられて行き、新しい敵のティーアップになるくだりなど、読むのが苦痛で苦痛で仕方がなく、何度もそこで読むのを止めた。



 タイ


 先進国タイでは、俺の寝込みを襲って来て掘ろうとした奴が、先っぽ入れようと宛がっただけでカクセイしてしまい、俺のケツの中にある前立腺が、どうやら「賢者の石」らしいと評判になって、ケツを掘って合体しさえすれば天に至る道が開くとか、悟りの境地に至れるとか、俺を「食う」と三蔵法師でも食った妖怪みたいに千年寿命が延びるとか言われてしまい、ホモとかオネエとか18ある性別の中から、ケツを掘れる連中に追われていた。


「待て~~~っ! ケツを掘らせろ~~~っ!」


「ハア、ハア、しつこい奴らだっ」


「せめて先っぽだけでも~~っ!」


 俺は半脱ぎにされて、信号待ちでもズボンを降ろされかけて、ケツに「当たってるっ、当たってるっ」「当ててんの~」のコントが出来るぐらい狙われた。


 性の先進国では、真昼間から実写版のBLドラマが再放送されていて、男子学生同士が恋愛する様が垂れ流されている模様。


 屋台で朝飯食っているだけで後ろから先っぽを当てられたり、入れられそうになったりして、それだけでピキーンとカクセイした奴が「涅槃とは……」とか「彼岸に至るには」とかホザく覚醒者が出た。


 大半が善人なので沼も使えない、他人のケツを勝手に掘ろうとしているような奴らが善人なのはおかしいが、事実なので仕方がない。


 更に転移が禁止される結界でも貼られているようで、チベットみたいに逃げられない。


 便所の「上」からでも入って来ようとするので、救いようがない。


 どうやら全員、覚醒とか悟りを狙っているようなので仏教関係者らしいが、オレンジ色のバラモンの袈裟着てる奴が追いかけてくるので怖い。


 読経中、膝の上にネコチャンが乗って来ても追い払わない連中のはずだが、悟りや覚醒に関しては貪欲なようだ。


「ハア、ハア、このまま潜伏する」


 自分で自分の沼に入って潜伏、このままベトナムかどこかまで逃げよう。


「作麼生、ハッタイアにあるサレンテキタとは?」


「ひいいいっ!」


 なぜおれの後ろにいる? 何故悪魔の後ろに立てる?


「答えや如何に」


「アッーーーーーー!」


 誰か、他の俺に、悪魔の後ろから「刺せる?」奴がいると伝えてくれ。



 日本


「イエ~~イ、神の使徒のムスメチャンネル~~、ドンドンパフパフ~~」


 俺の視聴者からの通報により「貴方の娘を名乗る人物が出ているが本当なのか? 嘘なら早急に対処した方がいい」と報連相があった。


「はい~、はじまりました~、神の使徒の娘チャンネル~~~~、あたしのお父さんは神の使いで、世界を救っちゃいました~~」


「イエ~~イ(母)」


 元娘が「アタシは神の使徒のムスメ~~」などとホザいて、youtubeのチャンネルを開設したり、ブサイクでデブで低能のくせに、宣伝して芸能事務所と画策して、絵師や風呂の絵師やらゲーマーみたいに、地上波でアイドルデビューかAVデビューしようとしたので差し止め。


 なんとまあ元嫁まで出演して、無い事無い事言い張って、コイツは俺の娘なんだとか嘘ばかりホザくホザく。


 遺伝的関連性はないことを証明する書類を添付してやって、テレビ関連でも二度と嘘はつかないように報連相して弁護士を入れて法的処置。


 ヤクザが関わっている芸能事務所なので、全員シャブ漬けでAV落ちさせられる前に沼入り。


 和室界隈のボロアパートから、何とか脱出しようとしていたのを、俺の権力を行使してやり、俺に逆らったら本社ビル社員ごと全員月まで移転させてやると言うと、垢BANして二度とふざけた登録できないよう阻止してくれた。


 芸能人が問題を起こすと、誰それの息子と称して謝罪会見する奴として扱ってやり、何の関係もない奴として処理してやった。


 一緒に出演していた元女房とも何の関連性も無く、浮気して別の男の子供を産んで托卵しようとした最低の奴としてツイートしまくって処分。


 アッチでは脳みそお花畑なので「夫の浮気により離婚した」と立場が嘘で入れ替わってたので、厳重に法的処分を加えてやって賠償金も取り、接近禁止令違反で更に貧乏な地獄の底に叩き込んでやった。


 元娘の新しい携帯番号から「ナンデソンナコトスルノ~~!」と連絡が入ったが着拒。


 元嫁がまともな人物で、浮気しないで俺の子供産んでたら人生大逆転で、神の使徒の遺伝子を継ぐ正当後継者として、各種宗教から生活を保障されて、一京円ほど遺産相続できていただろうに、母親の気が狂っていたばかりに無駄な人生だったなあ。


 普通の年収も一千万あり、大卒で会社勤めもしていて、家も持っている人物の子供産まないで、働きもしないDVオラオラ系の遺伝子で生まれたから、Fランク大学にも行けないで、頭も悪くて高校ドロップアウト組。


 せいぜい「美容師の資格を取りたい」「ネイルサロン開きたい」程度のゴミみたいな寝言しか言えない脱落者で、体だけデカく更にデブになっても貧乏過ぎて、コスプレ用のペラい改造学生服しか買えないで、虐められてヒキコモリニートになって中卒。


 頭悪いと言うかアタマオカシイので、何一つとして実現することすらできないで、適当過ぎる人生送って我が儘放題育って、遅刻し放題で友達とも約束の刻限は一度も守れず、何の能力もないゴミが完成した。


 殺していないだけでも感謝して欲しい所だが、これ以上俺に迷惑をかけてくるようだと処分して沼入り。


 病気でも患って気の毒な事になっていない限り、中卒で犯罪傾向が強烈過ぎる奴は基本沼入りなのだが、元娘と言う事で生かしてあるだけ。



「お嬢さんをご案内してまいりました、さあ、お父さんですよ」


 ホテル関係者、それも結構上位の者が元娘を案内して来た。滞在先の部屋に行ってもいないので、下級官僚と折衝中の会議室までご案内。


 元娘は躊躇う事無く包丁を出して刺して来た。


「ああっ!」


 ホテル関係者も下級官僚も驚愕。


「で?」


「あっ? あっ?」


 お前の元親父、悪魔だから刃物なんか通じないんだ、その程度の下調べすらしてないのかよ?


 ホテルの大失態なので、ヤンウェンリーが泊まったホテルに、複数の暴徒が乱入して殴られるレベルの失態。


 警備関連の思考が一切できていないので、娘を名乗る人物が来たら、部屋まで案内して部屋にいなかったら、親切に会議室にまでご案内してきた馬鹿。


 チップでも貰えるか、サインでも貰えると思っていたのだろうか?


 馬鹿女は沼入りして貰ってサヨウナラ。警察に通報して堀の中に送る前に処分、もう二度と会う事も無いだろう。無駄な人生だったな。


 案の定、左手には刺し傷だらけでシャブ漬け、リスカ跡の方がまだマシ。ヤクザの性奴隷にされて孕んでるんじゃないだろうなあ?


「イヤアアアアアアアアッ! タスケテエエエエッ!」


 俺には不逮捕特権があるのと、日本国とも悪魔の契約があるから、犯罪者達数百万人殺しても沼入りさせても逮捕されない。


 コイツも今日から正式に犯罪者。日本人一億人ほど救っているから殺されもしない。



「退出しましょう、ここでは会議なんかできない」


「お待ちをっ、今すぐ別の部屋をご用意しますっ」


 警備がガバガバすぎて別のホテルに移動、会議室借りて部屋も借りて滞在していた連中も、警備がガバガバすぎるのを嫌ってチェックアウトして移動。


「何の関係もない殺人鬼案内してきやがったな? どこの組織に雇われたっ? アメリカかっ? 俺を殺すよう言いつけられたかっ?」


「ち、違います、そのような事は決してっ」


 馬鹿警備員か、スーツ着てるホテルのポーターは、下級官僚たちによって捕らえられ、警護のスタッフに捕まって公安行き、背後関連を調べられて徹底的に拷問されて、もう表社会には出て来れなかった。


 ご丁寧に「あの人は自分の娘を殺した」「黒い沼が」「私は見た」と丁寧に丁寧に人を告発する言い分をして、自分の犯行は自白しないで、他人を陥れる発言だけを繰り返したので、俺に引き渡されて沼入り。


「いやだあああああっ、たすけてえええええっ!」



 後を追うように元のホテルの経営者とやらが謝りに来たが、そいつも背後関係を洗われて、公安に拷問されてニ三週間外に出られなかった。


 そいつは社会的信用を全て失って、ホテル側の信用情報を回復するには、懲戒解雇以外の道はなかった模様。


 数十年勤務してきたが退職金も無く、犯罪組織に雇われて金で顧客を売った人間として、社会の底辺まで落ちて行った。


 カイゼン計画を提出してきたが、以後正式な会合場所として使用されることはなく、民宿程度の場所として扱われた。全部日本らしい子供の言い分。


 その後、金銭で返せないアメリカ様との折衝が進み、まずは横田基地の返還が決定された。


 歯向かったら東京に核ミサイルを撃ち込むか、基地そのものが核爆発して東京を焼き尽くす場所。今後羽田成田に続いて空港として整備される模様。



 元嫁も元の家に来て「娘はどこだ」と喚いているのがインターフォンの記録に残っていたが、俺が生きるための邪魔にしかならないのが確定したので沼入り。


「ヒイイイッ、イヤアアアアアアアッ!」


 早くこうしておけば良かった、悪は滅びた。


 何人殺しても俺は罪に問われない。



 サイケラス王国


「あはははははっ」


「うふふふふふっ」


 家族と再会?して、キャッキャウフフして楽しんでいる連中。


 うん、こんなに喜ばれるんなら早くこうしてやれば良かった。


 嘘の家族でも、ホムンクルスでも、偽の家族でも適当過ぎる嘘でも、家族と再会させてやって、子供とも楽しく暮らしていける。


 世知辛い家事や飲食などしないでもいいし、何度も食事をこぼしてしまったり、ぐずって食べ物をぶちまけたりしないよくできた子供。


 おもちゃ売り場で背中から寝転んで、泣き叫んで手足をバタバタさせたりしない。


 社会性を持っていて、浮気などしない女房。


 エリートで文官武官の妻としてプライドを持っていて「都心で一億円以上の屋敷に住まないと格好がつかないっ、召使を雇って家事なんか一切しないっ、私女優よっ(下着モデル)? ネイルが汚れるような事する訳ないじゃん!」と言い出す気が狂った女房じゃないし、子供の方も物理法則完全無視して、自分だけが絶対有利な事ばかりホザきだして「100円ショップでネクタイ買ってやったから、10万円のブランド物の財布買ってこい」とは言わない。


 思い出が純化しているから、バカ息子がとんでもないこと言い出さないし、バカ娘が馬鹿丸出しの要求とかしてこない。


 羨ましいばかりの家族の肖像。でもこんな家族現世には存在しない。


 義両親で姑や舅とも仲良くやって行ける妻だとか、この世に存在するはずが無い。


 上級国民様は気が狂ってないから大丈夫だろうか? 



「俺、こんな日々を願っていたんだ」


「嬉しい」


 手作りの花飾り程度のゴミみたいなプレゼントでも喜んでもらえる家族、それこそが家族の絆だとかホザいても通る家族。


 誕生日やクリスマスに、贅沢で数万円しない物を送ったりすると、即ゴミ箱に叩き込まれて泣き叫ばれたりしない家族。


 そんなもんある訳がねえっ、そこまで騙されるなっ!


 女さんだけは手作りプレゼントかワゴンのゲームでも許されて、男からのプレゼントはブランド指定まであって、4℃なんか贈ると「若い子供向けのブランド」として、馬鹿扱いされて即質屋に持ち込まれる。それが現実。


 誠意だとか気持なんか一切通用しない、子供相手でも値段とブランドで全てが決まる、グッチとかカルチェだとか欲しい物を最初から聞いておかないと、受け取り拒否までされる。


 箱床に叩きつけて「返品して来いっ!」それが女の人生。そこまでやっても揉めたり殴られると一生許さない。


 托卵して別の男の子供を育てさせている相手や親にまでそれを強要して、クリスマスプレゼントに食事に出ると言うと、夫や父親相手なら拒否する。


 クリスマス程度の記念日でも、自分達のパーティーは準備していても、父親の食事は一切作らないと拒否する、それこそが女の人生。


 でも「真実の愛」の相手なら、「おい、触んなよ」と5秒間他の男から守られただけで一生の思い出で、安いカレーでも作って貰えたら涙流して感激する馬鹿。


 沼入りさせたクズの記憶から伝わって来る。元娘も同じく、遺伝なんだろう。


 ホラー映画張りに、破滅していく様を味合わせてやった方がいいか? 「ちが~~~うっ、こんなの俺の家族じゃない~~~っ!」と気付かせてやって、ホムンクルス斬り倒させてやった方がいいか?



「ああ、こんにちは、良いお嬢さんですね」


「はあ……」


 俺とリタちゃんに気軽に挨拶して行った叔母さん、ここに生きている奴はいない。


 という事は?


「おばけ~~~~~っ! イヤアアアアッ!」


「うわああっ、びっくりしたああっ!」


 レベル五千もある大聖女でも苦手な物はあるようだ、ターンアンデッドでも喰らわせてやればいいのに。


 余りにも人が死にまくった王国、生きている魔族が消えた今、普通の街角にも気軽に幽霊が出現する。


 ホムンクルスにした奴らは、依り代があるから出現してもおかしくないが、身体が無い奴でも平気で出て来る。


 これは討伐対象か? それともホムンクルスにして、NPCその1として扱った方がいいか?


「おばけ~~~っ」


 リタちゃんが怯えている、うん、討伐対象。


 既に死んでいるので沼入りも難しい、怨霊とかなら即座に沼入りだが、普通に生活しているつもりで、気軽に挨拶して来て「怪しい者ではありませんよ」と言ってくる奴らは怨霊じゃない。


 死んでいる自覚が無い奴らだ。


 一体どうすれば? また四股でも踏んで怨敵折伏の祭りでも開いて成仏して貰うか? いや、魔族の方をどうにかすれば、全員生き返らせることも不可能ではない。


 歴史改変の時期を遡れれば「なかった事」に出来る。



「パパ~~」


「父さん」


 ホムンクルス化した息子も娘もよくできた子で、父親を尊敬していて大切に扱ってくれる。人生に節目には父親に相談して、進路や学校での出来事も父親を頼って相談してくれる。


 そんな人生ある訳がねえだろっ、ふざけるのもいい加減にしろっ!


 年行ったら母親に洗脳され終わっていて、父親がいかに無能で役立たずなのかを教育され終わっていて、せいぜい母親がウザ過ぎる息子が、男同士の連帯でクズの父親にも歯向かう程度で、実力行使で殴りかかって来る息子は良い息子で、完全無視してくる奴は使えない息子。


 うん、いい加減この光景も飽きた。そろそろ終わりにしよう。


「貴方、そろそろお別れだと思うの」


「何だって?」


 唐突に訪れた別れの瞬間、いい夢は良いうちに終わらせる、悪夢にしちゃいけない。


 陶器でも作るのに回転させながら、後ろから抱っこしている間に終わらせる。


 吉田栄作の偽物のドラマの方もあるが、虹の橋を渡らせてやる。


 虹の橋と言えば、意味を知らなかったのか? とっとこハム太郎で街を行進しているうちに、全員で虹の橋を渡るシーンがあって「ああ、人間の街を歩いているうちに全員死んだのか」と思ったが、児童が見る番組内でそこまで衝撃的なラストを迎えるのはミンキーモモ程度なので、無事死なないで帰還した時があった。


 嫁や子供の方がキラキラし始めて、姿が薄くなって消えて行きますよ、と言う雰囲気を作っていく。


 ここ数週間タップリ楽しんだからもういいだろう。


「ああっ、消えないでくれっ、俺も連れて行ってくれっ」


 そうすると全員地獄行き、まあ、家族は天国行きでも認めてやるんだな。


「PAPA~」


「TOUちゃNN~~」


 ホムンクルスの方も整合性が崩れて故障寸前、丁度良い時期だったようだ。


「ハア~~、ユッコラシュオ~~、ドッコイショ~~~、エンヤートトォ~~、エンヤ~コラ~~、ハア~~、ドスコイ~~ドスコイ~~(ヘブライ語)」


 一緒に周囲の幽霊も浄化、一応清潔にしておいたが、魔王の所に行って因果を確かめたら時間逆行で元にも戻せるだろう。


 処分理由は「ニワトリ踊り食いしはじめた「死徒」が発生した」とか、切嗣の親父みたいなことを言っておけば大丈夫だろう。

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