第4話 レベル上げ大会、肉配布会場

 貴族式屋敷


 前任の貴族のお爺ちゃんから下賜して貰った屋敷だが、やっぱりポーターの少年兄妹からすると凄い屋敷だったようで驚かれた。


「おにいちゃん、こんな大きなお屋敷初めて……」


 まだ長時間歩行できないので、兄におぶって貰って移動。でも貴族屋敷とか風呂とか外からしか見たことが無かったのか絶句。


「まあ、このまま住んでも良いし、気が休まらないなら使用人部屋の方に住んでも良し、一家で住むなら小屋の方もある」


 平屋のバラックに病人を帰す気もない、あばらやに住ませるのも気の毒だ。でも家の悪口は言わないようにしておく。


 特に両親も住んでたような思い出の家なら、丸ごとここに設置しなおしても良い。



「やあ、ポーターの子を雇ったんだ、冒険者的にはこの子の方が先輩なので、失礼が無いように」


「畏まりました」


 家に来ている家令に声かけたが、コイツらは俺を薬で操ろうとした実績があって、料理人のせいにして逃げたが、二人を毒殺しようとしたなら即地獄行き。


 従業員全員聖国の間者で、俺への監視員なので信用できない。


 全員解雇するかぶっ殺して、ホムンクルスに変更しておくと安心なのだが、連絡先か監視先で入れ替えられたと判断されると、次のが来るので中身の入れ替えはしてない。


 鑑定して見ると出るわ出るわ、家令のおっさんは聖国の間者で刺客、メイド長は敵国の間者で忍びで暗殺者、普通のメイドも貴族のお嬢様も聖国貴族からの間者で、情報収集に来ている模様。


 まあ知られて困ることもないし、俺が殺されることもない。マリオ君とかは俺の弱点になっているので、人質に取られると困る。


 でも薬で操ろうとしたり、毒盛ったり金で操ろうとすれば死あるのみ。



「部屋に案内してから風呂にでも入って貰って、それからゆっくり夕食かな?」


「畏まりました」


 昼のギルドに行って登録してから飲み食いして、まだ夕方なので夕食が出る。


 さっき腹一杯詰め込んでもらったが、もう一回食事。用意するには時間がかかるだろうから、出来るだけ引き延ばして貰ってから夕食。


 以後天蓋付きベッドに感激して貰って、兄妹でベッドでビヨンビヨンして、交代で入浴して着替え。


 下着も新品で貴族風のシャツに上着、前の着物は「汚くて穴空いててダニがいる」と言う訳で燃やされてしまった。


 今は亡き両親の手縫いとかだったらどうするつもりだよ? 取り返しがつかなくなるところだったが、普通の古着だったそうで致命傷にはならなかった。


 せめて煮洗いする程度にしろや。



 夕食の席


 マリオ君一行は使用人扱いじゃなくて客人扱い、そこの所を理解していなかった使用人連中が「平民如きが」とか、貴族家から押し付けられている嫁候補とか側仕えが「ギリイッ!」をやらかしていたが、逆らったり毒殺しようとしたら沼入りして貰ってホムンクルス変換。


 オマエラみたいな思い上がりまくったJKみたいな、恋愛一軍とか言う奴ら、嫁に迎える訳が無いだろうがよ。


 中にはデッブデブのクソブサイクまでいて性格も最悪、顔に性格が出ていて腐り果てた人格していて、何度「出て行け」と言われても親から言い渡されているのか出て行かない。


 古代か中世なので会話が一切通用しないアスペ発達障害だらけ、立場認識も不可能なレベルで知能が低く、いつの間にか立場が入れ替わっていて、有利な立場に移動している。


 お前らみたいなのは大食い大会にでも出ておけ、食い物出すのも無駄だ。


 自分の食費宿泊費出していなければ即追い出している所だが、家令が家に忍び込ませる奴を管理選別しているので出て行かない。我慢ならないクソデブブスは順次追い出すか、出て行かなければホムンクルス変換。


 夜這いしてくる奴までいて叩き出さないと出て行かない。婚約市場でも酷すぎる性格で断られまくっているらしい。


 召喚者で平民で暗黒系魔法使いで悪魔の系統でエルダーリッチだとか、悪魔崇拝者と間違えられてもおかしくないのに、俺の力を取り入れて権力を振りかざしたい所から腐った娘を送り込まれている。


 虐待されていた不遇系が来ているので全員追い出せないが、女なんぞもう沢山だ。


 こう言うとまるでマリオ君のケツを狙っているようだが、俺はストレートだ。


 クソ女房に嫌な顔されて、娘にも嫌な顔されて「パパと一緒に暮らしたくない、洗濯物一緒にしないで、養われるのまで嫌」と言われたので希望通りにしてやった。


 クソ女房も娘洗脳し終えていてゲラゲラ笑っていたので、馬鹿すぎて今では義両親で祖父母にもにも縁切られて、震災でも来たら一瞬で倒壊するボロアパートで暮らしていて、二十万する高校の制服も買えないで卒業生におねだりして貰ったそうだ。


 流行のアイフォンも無線イヤホンも買えないでブランド物の財布も買って貰えない。契約すると100円で貰える激安のアンドロイド携帯持って、通話しても相手方の音声聞こえない楽天モバイルのを使っているらしい。


 アジアで銀行員の夫が浮気したので離婚すると、それまでは奥様会で高価な食事などして楽しんでいた物を、最低の生活まで落ちて食事会の費用を出そうとすると現在の月収で、周囲から心配されていたそうだが、生活水準が違い過ぎて自然と離れて行ったそう。


 娘の方も周囲と経済観念が違い過ぎて、虐めまくられて後悔したのか「パパ大好き、また一緒に暮らしたい」とかホザいていたが電話は着拒、ブサイクすぎる顔とデブの体でパパ活でもして稼いで来い。


 奴らに一銭も金が渡らないように遺書書いて置いてやったので、俺の遺産は国境なき医師団とWFP国連食糧計画に遺贈されているはずだ。


 日本ユニセフ系列なので悔しいが、みかじめ料取られた後でも、アグネスの豪華な屋敷に使われても、最終的には必要な所へ行くだろう。



 それと恐ろしいことにこの世界では、鍛冶屋木工職人の弟子工とか料理人とかの弟子は給料が出ない。精々お小遣い程度。


 毎日の食い物程度は出るそうだが、弟子の間は現代の刀剣職人みたいに無給。着替えとか洗濯はおかみさんがしてくれるが、着物を買うのは自腹。


 逆に教育料だかレッスン料取られるレベルの、演歌歌手みたいな生活。


 まるで昔の相撲部屋で、先輩の肩をもんだりマッサージをすればお小遣いが貰えるそうだ。


 アニメ業界みたいに月最低保証は五万が限度、他は歩合で稼げるが、稼げるような絵が描けるまでは自主練、親に養って貰ってくれと平気で言い出す狂ってる業界。



「私、こんな豪華な食事見た事無い……」


「俺も……」


 マリオ君の方は、冒険者の食事とかに付き合わされていて、馬鹿丸出しのサディストに「お前は土間で残飯でも食ってろ」と言う奴ら以外の冒険者についてれば、多少豪勢な食事はしたことがあるはずだ。


 リタちゃんの方は貧しさと言う物を知っていて、病気や失明と言う辛い時期があるので、娘みたいに思い上がったJKではない。


 ジャッキーチェンとか(JC)ジーザスクライスト(JC)でもなく、JS卒業年齢だが、貧しすぎて小さすぎて中学生にはとても見えない。


 不遇系の貴族家の娘も、商家でも妾腹でキツすぎる虐待受けていた子もいるので、ソッチは幸せにしてやりたい。


「魔族数千万人殺した褒美らしい、遠慮しないで食べてくれ」


 人間の方も一億人以上始末しているので、もしマリオ君の両親も殺してたら「両親の仇~~~っ!」と言って飛び掛かって来られるが、妹ちゃんが襲撃された時に死んでいたそうなので関係ない。


「マナーとかどうするんですか?」


「そこのナイフで適当に切って食うだけだよ」


 マナーと言っても、本物のナイフでギコギコ肉切って、手づかみで食べる程度の下品すぎるマナーなのでキニシナイ。


 ライ麦の固い黒パンではなく、小麦粉から作る白パンだったが、フランスパンぐらいには固い。


「私…… 幸せ」


「ああ、俺も」


 ヘンゼルとグレーテルみたいな兄妹にも幸せの青い鳥が来たようだ。いつも通り原作の方は酷い内容らしいがキニシナイ。


 泣いて幸せを噛み締めるほどの場面じゃないと思うが? おっと目から汁が。



 食事には毒盛らなかったようで、寝る時にも襲撃はしなかったようだが念のために沼を展開。ギルドのお爺さんみたいに就寝時に襲撃されないよう防衛。


 最初俺に毒盛った料理人みたいに、沼の中でニ三日悲鳴上げまくって、苦しんで苦しんで苦しんでから地獄に行って貰ったので、他の者への警告にはなったようだ。



 翌日


 こちらに来てから、日差しが差し込んで来たら起きるようにはなったが、細菌研究所は夜まで勤務している連中だらけで、翌朝帰って来て昼まで寝る生活が続いて、ちょっと昼夜逆転もした。


「旦那様、お客様がお待ちです」


「え? もう」


 朝ゆっくりしてから起きると、聖国の三十路姫から送られた間者メイドから声をかけられた。


 早速マリオ君とリタちゃんが起きていて、俺の部屋の前で集合して椅子に座って待っていた。


「おや、ゆっくりしてればいいのに、レベリングなんか昼から出発してもいいぐらいだ」


「いえ、そう言う訳には行きません、ここまでよくして貰ったのに」


 早速込み上げる物があるのか、妹が治って感動して涙ぐむマリオ君。



 遅い朝飯を食ってから出発、まず装備の確認。


「これが経験値倍増の腕輪と指輪、それと身代わりの指輪も渡しておこう」


「え? こんな高価な品物、いいんですか?」


「ああ、二万人ほど来た時に、上位の連中が持ってた奴だから気にしないでいい」


 屋敷を出てから暫くはマリオ君がおぶっていたリタちゃんだが、ここらで乗り換え。


「竜のアンデッドに乗るのと、空飛ぶ絨毯に乗るのとどっちがいい?」


「「エ?」」


 意味が分からなかったようなのでユニゾンして答える二人。オジサンネクロマンサーだし死体にした竜も飛ばせるし、錬金も極めているから絨毯を飛ばすこともできる。


「まあ、絨毯で飛んでゆっくり行こうか」


「は、はい……」


 街が近すぎるので竜のアンデッドは出さず、絨毯で飛ぶ。


「じゅ、絨毯が飛んでるっ?」


 リタちゃんには刺激が強かったのか驚かれているが、魔物魔獣が多そうな所まで飛行。



「あ、あの、ここってハンバーガーヒルって呼ばれている所じゃあ?」


「へえ、そんな酷い名前が付いてるとこなのかい」


 いつも通り周囲に沼を展開、着地した瞬間から魔物魔獣がドボンドボン飛び込んでくれるので、俺と同じパーティーメンバーにした二人の経験値カウンターが回りまくる。


 ポーターは雇ったが運んでもらう荷物はない、全部アイテムボックスとか沼にぶち込んで移動。


 ちょっと休憩しながら飲み物と椅子でも出して、まったりしながらドリンクタイム。コーヒーが輸入されていない世界なので、元と似た世界からお取り寄せ。


「うん、いい景色だ」


「で、でも……」


 ハンバーガーヒルだかミンチスペシャルみたいな高地なので、マリオ君もリタちゃんもガクブル。


 ソビエト映画の「ストーカー」みたいに、例え軍隊を送り込んでも全員ミンチにされる場所なので、その名前が付いたそうだ。



 高地なので遠雷のように遠くで魔物魔獣の悲鳴が届いて来る。他にも「脳みそ~~」とか「生きた体~~」とか聞こえてくる地獄絵図だが、その他は鳥の鳴き声だけが響いて、非常にのどかな場所だ、また来よう。


「カッコー、カッコー」


「ホーホケキョ」


 世界間移動が簡単に可能なのか、比較的近い世界なのか鳥も近似種がいる。インドネシアみたいに七万年前トバ火山が噴火して以降、鳥の種類が異常に分化した場所ではない。土壌菌とか常在菌も近いのだろう。


 魔物魔獣ってのは瘴気に当てられて変異した連中らしいが、魔族って奴らも近似種で、タンパク質の形状も同じなのか同じ食料を食べられるし、同じ病気に感染して死んだ。



 日本人がブラジルグランプリに行くと、常在菌が違い過ぎるので全員水当たりしてしまい、片山右京さんはモノコックの中でゲロ吐きまくって完走、中嶋悟さんでも歯を磨くのにもミネラルウオーター常備。


 実況の古舘伊知郎さんでもプールの水を飲んでしまって下痢下痢。子供用のおむつを貼り合わせて「おっとここで音速の貴公子がインをついて(下痢便中)マンセルを追い抜いた~~」とかやっていた模様。


 でもヨーロッパとのクオーターの亜久里さんだけ無傷。多分遺伝子側に耐性が書き込まれている。


 別にブラジルの菌が悪いんじゃなくて、メキシコの英雄エイドリアンフェルナンデスがインディジャパンに来た時も、二年連増で血便が出るぐらい酷い食中毒で脂肪。でも二年連続で優勝して帰った。


 オーストラリア人の奥さんだけ、日本語喋れるぐらい距離も近かったので無傷。



 ピクニック気分で出て来たので、バーベキューセットでも出して食い物と飲み物の準備、魔物肉の美味い所でも出して、野菜も切って串に刺して行く。


「こ、こんな所でバーベキューですか?」


「ああ、いつもの沼を周囲に張ってるから地上の魔物は来れないよ、空からワイバーンとか空飛ぶ奴が来るけど、地上に近付いたらオシマイだ」


「「エ?」」


 この世界では、ここまで危険な所でバーベキューセット広げて肉焼き始める馬鹿はいないそうで、普通の鳥でも急降下して来て肉かっ攫って行くので不可能らしい。


 獲物を見付けて鳥も降下してきたが、近くに張ってあった沼に捕まって脂肪。マリオ君とリタちゃんの経験値になってくれ。


 ちなみに日本人がやってるのはBBQではないらしい、本場アメリカでは巨大なバーベキューコンロで牛一頭ぐらいある塊を八時間とか十二時間、ゆっくりと肉をローストして、肉が溶けて崩壊し始める所まで焼くのが本場のBBQ。


 炭火を起こして魔法で着火、着火しないのでアルコールかけて生徒を焼き殺した教授もいるそうだが、毎度の如く生徒の救護よりも先に自分達の保身と隠蔽のために動いたそうだ。


「フフンフンフン~~」


 鼻歌でも歌いながら余裕で肉と野菜を焼く、俺には「パンを石に変えるスキル」があるようで、食べられるパンを食べられない何かに変えてしまうスキルがあるので、温めるか焼く程度の事しかできない。


「こっちの方焼けてるよ~」


「は、はい……」


 ハンバーガーヒルでバーベキューして魔獣肉焼いて食ったのは、俺が史上初めてらしいが、マリオ君にもリタちゃんにも無理して食って貰った。


 これからは「一食一万キロカロリー」を努力目標にして食ってもらわなくてはならない。


 プロレスラーなら一食一万五千キロカロリー必要だが、大谷選手やらダルビッシュ投手、スケートの羽生君みたいに食って食って食いまくって貰わなくては身体が作れない。


 食いっぱぐれて低賃金で、リタちゃんみたいに体が小さすぎて、腹の中の寄生虫にも食われて、ガタイが出来ていないようではレベリングも失敗に終わる。


 それから小一時間肉焼きまくって食べて貰った。


「もうたべられない」


「おかわりしなさい」


「ええっ?」


 パワーレベリング中なのでひたすら食って貰う。ピーマン嫌いだったら、パプリカでも避けて貰ってひたすら食う。「トレーニング後三十分以内にタンパク質を補給だ」と言う訳でマッスルマッスル。


 プロテインバーが売ってないのでチクワバーでも何でもタンパク質を補給。ポパイみたいにホウレン草の缶詰だけじゃ許さない。


 追い込んで追い込んでベンチの横で転がって「ハァーハァー」言ってる状態じゃないが、それでもひたすらタンパク質補給。



 食いまくって貰ったので、マリオ君とリタちゃんの哀れなタヒ体?が転がっていたが、パワーレベリング的には成功した。


「二人共、レベル幾つになった?」


「え? はい、レベル75…………?」


 マリオ君側で、余りにもおかし過ぎる数値を見て絶句。


「レベル52?」


 ょぅじょレベル1か2ぐらいだったリタちゃんでもレベル52、もうどんな職業にでも転職可能だろう。


 二人で顔を見あわせて異常すぎるレベルアップに驚いている。


「これがパワーレベリングと言う奴でね、今も周囲に設置した沼に、肉を焼いている匂いに釣られて魔物魔獣がドボンドボン飛び込んでくれている」


「でも、俺何もしてません」


「俺も何もしていないよ、沼設置して飛び込んでもらってるだけ」


 レベル八千万には程遠いが、俺の従者やポーターになるなら、とんでもないレベルに上げておかないと着いてこれない。


 ついでにリタちゃんの方もとんでもないレベルに上がって貰って、病気耐性とかも付けておいてもらう。


 タマネギ剣士扱いで村人Aなので、高レベル装備でも渡して置けば、もう姑息卑怯な冒険者達でもリタちゃんに一筋の傷も与えられないだろう。


「次は何に転職する?」


「「エ?」」


 二人共イミワカンナイ状態でユニゾン。まず「転職」と言う概念がないのか、一生を村人Aで過ごすのが普通の連中なので、戦士にも剣士にもなれない。


 ましてや上級職になれるはずもなく、三次職とか夢のまた夢。


「サムライとかも良いけど、まずは自分を治療できる職業かな? 僧侶を極めてから侍も良いけど、騎士や聖騎士なんかどうだい?」


「俺が…… 聖騎士に?」


「私っ、聖女になりたかったんですっ!」


 マリオ君が絶句している間に、普段は大人しいリタちゃんが積極的に発言した。


「うん、聖女も可能だね、なってみようか」


「はいっ!」


 怪我と病気に塗れた人生だったから、聖女になりたかったリタちゃん。第一志望を叶えて「ざまあ」街道を突っ走って貰おう。


 屋敷に来ている不遇系の令嬢とか商家の娘とかも連れて来てやれば良かった。もちろん不遇系のみレベルアップ、傲慢系のクズはレベル上げてやらない。



 その日は終日レベル上げ大会開催、日が暮れて虫が入って来たから中止して、それまでは食いまくって貰ってひたすらレベル上げ。


 マリオ君はレベル20聖騎士、リタちゃんは更に大聖女に転職してレベル10になった。



 細菌研究所


 研究所にも用事があったので立ち寄り。休暇届け出してるのに出勤とか「おい、定時に出勤してくるとはどういうことだっ?」「嫌だなあ、今日俺有休ですよ、定時出勤ぐらい許して下さいよ」「そうか有休だったか」みたいな狂った会話がされる日本企業じゃないが、それでも責任者みたいに仕事任せられたら仕事が面白過ぎて家で休んでられないから出勤してくる奴みたいに出勤。


「副所長、どうしましたか? 確か休暇では」


 それでも休暇で出てくる奴を訝しんで効いてくる連中。ここはエジプトのピラミッド建設みたいに、休暇も誕生日の祝いも許されている公共事業で、二日酔いの時も休暇が認められる日本以外の外国。


 こいつらも寝ないで働いて、復讐のためなら悪魔に魂売ってでも働く連中なので、人の事は言えない。


「ああ、騎士団に配属されたんでねえ、何時までも出頭しない訳にも行かないから、ここも片付けて行かないと」


「はあ、そうでしたか、他の連中も志願してまで最前線行きとか」


 レベル千ぐらいになって「俺、この手で魔族共を始末しに行くんだ」とか狂った目で言ってた連中は、自分で志願して行ったらしい。


 平民だらけの国内警備の騎士団に行っても、魔法師なんかは不倶戴天の敵らしいし、「騎士団長」な~~んて仰せつかっても剣も握ったこともない奴採用されるはずもないから「呼ばれてませんでした」「追い出されました」なら言い訳も効くが、出頭しないとまた暗殺団がやって来る。


 アイテムボックスに研究成果とかぶち込んでいって、私物も片付けて行く。



 そこで掃除担当か洗濯担当のオバハンから、何やら重苦しい話を困り顔で聞かされた。


「なあ、副所長さん、あたしらの村でも近所に腸詰とか分けてやってたんだけど、もう限界なんだ。冬越せないし娘売るしか無いって言ってるんだよ、オオカミとかクマの肉でも良いから、食べるもん分けてやってくれないか?」


 なんでも世間では飢饉らしく、穀物も瘴気で取れなくて「徳川の稲は立ち枯れよ、オンキリキリバサラハ~~っ!」みたいな感じで、沢田研二が呪いの言霊で稲も麦も芋も枯らせたらしい。


「何だ、早く言ってくれたら、ここ襲いに来た連中全員肉にしてるから(人間魔族含む)、幾らでもあったのに」


「いいのかい?」


「ああ、元手はタダだ、域らでも持って行ってくれ。いや、トン単位いるなら俺が持って行った方がいいか?」


 アイテムボックス持ちで沼持ちなので、俺が移動して配達した方が早い。


「じゃあ、近くの村に配達に行こう」


「え?」


 叔母さん鳩が豆鉄砲喰らったような顔していたが、副所長権限で外にも出れるし、叔母ちゃんでも仕事中に出られる。


「竜のアンデッドに乗って行くのと、魔法の絨毯どっちがいい?」


「「エ?」」


 イミワカンナイ状態のオバチャンも連れて、家の周囲の村にご案内。


「ひいいいいいっ、絨毯がっ、絨毯が飛んでるううううううううっ!」


 地元のオバチャン二人ほど連れて飛んで行って、ちょっと騒がしかったが移動。



 肉配布会場


 村の広場で鹿肉とか猪肉とかオーク肉出していると、物欲しそうな連中が寄って来たので配布開始。


「いやあ、叔母ちゃんから飢饉だって聞いてなあ、好きなだけ持って行くといいよ」


「「「「「「「「「「「ハア?」」」」」」」」」」」


 貴重な肉をタダで配る馬鹿は居ないそうで、捕まえるのも大変で、猟師の罠にかかったマヌケな奴だけが肉になって、野草の採集でもしていて対面して魔物魔獣に襲われたら、人間の方が餌になるらしい。


「そんな馬鹿なことがあるか~~!! コイツは詐欺師だっ、娘達を攫おうって魂胆だっ、オイイイッ! 娘見付からないように隠しとけえっ!!」


 また基地害のジジイが出て来て、杖で殴りかかって来る系統だったので、俺やらオバチャンに殴りかかって来たので沼の中。


「黙ってろ、クソジジイ」


 近所のオバチャンにも殴りかかって来て、自分の土地は通さないんだとかホザいて、足に掴みかかって来て、村の中歩いているだけで家に連れ込もうとするアタマオカシイ奴だそうなので、広場に連れて行って高い所に吊るすか、このまま沼入りで良いと言質貰ったので入沼。


 それから肉食い大会になって、足や腹バッサリ切ってジュージュー焼いて食って、ミンチ作る機械も動きまくり、内臓肉腸詰にしていってグツグツ煮て、桜のチップとかで燻製にして、ハムでも作って食いまくり。


 味薄いので海岸で取って来た塩も配給しまくり、ついでに海魔とか海産物もジュージュー焼いて、薪が足りないから沼で周囲の森伐採してやって、真空乾燥した薪大量に出してやって焼きまくり。


「助かったよ、あんた。こんなに沢山食べられる物があるなんて、これで冬越しできるよ~~」


 お婆ちゃん涙ぐんじゃって祈り始めるぐらい。何かで見たが、中世なら裕福な村でも四人に一人は餓死するレベルだそう。


 何処かの北朝鮮ぐらい冬の食い物に困っていて、春先には食い尽くしてしまって、野草が生えたら山に行って採集してくるらしい。


「え~と? ここがこの状態って事は、近所の村も全部?」


「ああ、村も街も全部さ」


 と言う訳でピキーンとスイッチ入っちゃって、近隣の村にも街にも肉を撒きに行く。鹿肉猪肉オーク肉はご馳走なんだそうで、オオカミとかクマの討伐証明とか肉も置いて行って金に換えて貰う。

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