24 死神の凄み
時をおなじくして
彼には才能や特技といえるものがなかったが、耳だけは昔からよかった。だから酷い嵐のなかでも、
次第に
「
涙はこぼれたそばから雨にまぎれる。
「
「なんで」
だが、靑靑が八歳になったころ、
ちょっとばかりさみしかったが、これで妃として華やかに暮らせるだろうとおもっていた。胡家の邸にいたときは、病弱であるにもかかわらず、女官と変わらないような扱いを受けていたからだ。
父親いわく、女は家族につくすものだと。
そのあと、
姐は幸せになるべきひとだった。
それなのに、姐は死んだ。
「殴られて、殺されたんだよ」「夫だろうね」
泣きながら、何処をどう進んだのか。気づけば靑靑は宮廷の門にまできていた。
宦官になったばかりのときは、不条理な侮辱を受けたり暴力を振るわれるたびに門まできては、ここを越えた都には姐がいて幸せに暮らしているのだと想いを馳せていた。
優秀な官職について、いつかは胸を張って
それだけで
だが、この門を越えても、もう姐は何処にもいないのだ。
「
その時だ。
嵐を
「奥様は殺されたんです」
「旦那様は日頃から奥様を殴ったり、蹴ったり」
「ほんとはずっと、みてた。でも、いえなかったんです。女官ごときにどうやって旦那様をとめることができるでしょうか」
靑靑は慌てて塞がれた門のすきまに耳をあてた。口振りからして中都督の邸で雇われた女官たちだ。彼女たちは声を張りあげて、懸命に訴える。
「奥様の死に顔をみて、いてもたってもいられなくなって」
「どうか、
「奥様を殺めた罪は、裁かれるべきです」
だが
「黙れ! 女官の訴えなどいちいち、刑部尚書様に通せるか」
きゃあと声が聴こえて、女官たちが衛官に突きとばされたことがわかった。
靑靑は一縷の望みをかけ、絳を捜しにいった。
…………
「
「
「絳様、大変なことが。宮廷の門に
「衛官は女官たちの話も聞かず、追いかえそうとしています。絳様、どうか彼女たちの証言を取りついで、真実をあきらかにしてください!」
懸命に訴える
「ああ、そうか。あなたは
「そうです。
「どうか
絳が息をのむ。
靑靑の眼からはとめどなく涙がこぼれた。
悔しかった。哀しかった。ただ、ただ、腹だたしかった。
権力をもった武官の罪を公表して糾弾することがどれほど難しいか、靑靑だって理解してはいる。それでも。
「あなたの想いはわかりました」
靑靑の胸で吹き荒れる激情を、確かに預かったとばかりに絳は彼の震える背に触れる。
「あとは私に任せなさい。罪人はかならず、裁きます。たとえそれがどんな身分も、いかなるものであろうと。罪の重さに違いはないのですから」
罪を罪として扱い、平等に裁く。宮廷ではそんなことがとてつもなく難しかった。
進むさきが嵐になると知って振りかえらずに進んでいく絳の背は頼もしい。それでいて、不穏なものを感じるのはなぜだろうか。
さながら、罪人の
奇妙な凄みが漂っている。
だが、絶望する
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