8 女は愛に命を捧げた
「女が、命を賭けるとすれば、それは愛だろうね」
「なぜかといっていたね。それは、きみがいちばん、わかっているんじゃないかな。
「どうして、それを」
「そ、それは
「きみとそろいなんだね」
鈴が視線を彷徨わせ、慌てて言葉を重ねる。
「か、花琳様はおやさしく、女官の身には過ぎた物をくださることがありました。これもそのひとつで――」
「隠さなくてもいいさ。女と女が愛を結んでいても、僕はおかしいとは想わないよ」
紫蓮は穏やかに語りかけた。
「これは
「そうです。愛していました。愛されていたのです。道ならぬ恋だとはわかっていても」
それは告解のようで、誓いのようでもあった。
「だって、
「奴婢として黄家におつかえし、家畜のような扱いをされていた私に花琳様だけは、食べ物をわけてくださった。歌を教えてくださった。花琳の"
重い息をついてから、鈴は続けた。
「
そこで、ふたりはつながったのだ。ちぎれた翼を寄せあうがごとく。
「
もはや逢えない愛するひとの指をたぐり寄せようとするように耳飾りを握り締めて、鈴は涙をあふれさせる。
「
最愛のひとの死を受けいれられない、受けいれたくないとばかりに彼女は頭をかかえてうずくまる。
「あんなふうに落ちて、つぶれたものが花琳様だなんて、ぐちゃぐちゃになった頭が、折れた頚が、ゆがんだ脚が――花琳様のものだなんて、そんな、そんなの」
紫蓮はやわらかく眥をさげた。
「哀しいことだけれどね、
「で、でも、あんなにひどく」
「だいじょうぶだよ」
「きみの罪を晴らせるよう、いま、彼ができるかぎりのことをしている。もし、できたら、そのときはきみが黄妃を
あらゆるものが死にいたる。
その死がいかに穏やかでも、どれほど悲惨なものであっても、死という現実に違いはない。だからこそ、いかに
死者はよみがえらない。
はなれてしまった魂もまた。
ただひとつ、例外があるとすれば。
「あなたの花嫁にふさわしく、よみがえらせるからね」
残された
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