4 誰が知更雀(コマドリ)を殺したのか
「
「黄妃の
「ですが、
検視官とは下級の官職だ。民間の職だが、
「
「ご明察です」
宮廷で昇進するには、まずは家柄が要となる。大理少卿のような高官になれるのは士族や貴族といった名家のものにかぎられた。
「三階から落ちたら、たいていは脚から落ちるか、咄嗟に腕を延ばすものだよ。彼女は後ろむきに落ちた。それにもかかわらず、腕を延ばした様子がない。落下時にはすでに意識がなかったからだ」
年端もいかない
「なにをぼうっとしているのかな」
「いえ、感心していました。素晴らしい観察眼です。
「……へえ」
彼女がなにをおもったのか、絳は
「しかしながら、どこでそのような知識を。後宮の
「僕は、死に寄りそうものだからね」
何処か謎めいた愁いを漂わせて、彼女は微笑した。
「死の
いずれにしてもだ。紫蓮の検視によれば、
「ですが、
「ああ、やっぱりね」
乾いているが、血の塊だ。
「
「は……」
「……参考になりました。依頼は黄妃の遺体の修復です。これでは遺族にひき渡すのも難しいもので」
「ああ、そうだったね」
裙のすそに施された
「でもまずは、死化粧を施すにあたって、彼女の死をもっとも
「希望、ですか? 希望といわれましても」
あらためて、屍に視線を落とす。熟れて、落ちた果実のような酷い損傷だ。ひとらしいかたちだけでも、復元できれば充分だとおもうのだが――
「彼女はどんなふうに微笑んだのか。なにを喜び、なにを愛し、いかに愛されてきたのか、知りたい」
絳には知るよしもないことばかりだ。それどころか、屍を修復するのに不要なことばかりに聴こえる。
「
「いいや、違うよ」
怪訝げに眉根を寄せる絳にたいして、
「遺族ではなく、投獄されている女官に逢いたいのさ」
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