危機


 「ほら、さっさと起きろよ」


 顔に水をかけられて、俺は飛び起きた。足と手は縄で縛られている。暗くて埃っぽい室内に、ガラクタがたくさん積まれている。ここは倉庫なのか……?

 まずい、頭がズキズキと痛む。


 「まったく、手間かけさせやがって。」


 目の前に2人の男が立っている。身なりは悪くないが、如何せん柄が悪すぎる。


 「お前ら、誰なんだよ。俺にこんなことをして何する気だ」


 「俺たちは、この国の商人。何年もあの農園とかけあってるっていうのに、なんで外国人のお前に販売許可が出るんだよ」

 

 「そうだ、お前だけ甘い汁すするなんておかしいだろ。手を引け。」

 

 何言ってるんだこいつら、自分達の交渉術の問題だろ。


 「断る」


 「へえそんなこと言っていいのか?お前のかわいいハチの彼女がどうなってもいいってか?」


 男が下卑た笑みを浮かべる。

 俺は怒りで目の前が真っ赤になった。

 

 「メルに手を出すな、このクソッタレ。お前らは商人失格だ!」


 「何だと!」


 逆上した男はナイフを取り出し、俺の腕に刺した。鮮血が出る。あまりの痛みにうめき声が出る。


 「へへ、究極お前がいなくなれば権利はこっちのもんよ。お前がとんづらして事業託されたって言えばいいんだからな」


 そうして、男が俺の胸にナイフを刺そうとしたとき、急に倉庫の扉が開き、逆光の中、誰かが入ってきた。

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