毒針

「私の蜂蜜ハニーちゃんに何するの!?」


 メルだった。でもいつもと違い、翼は大きく、お尻のあたりから何か巨大なものが出ている。

 針だった。

 顔は怒りで真っ赤だ。


 「ああこんなに血が……許せない」

 

メルがこちらを見て悲鳴を上げると、今まさに俺の胸に刺そうとした男に飛びかかって、自分の針を突き刺した。


男はうめき、ナイフを落とすと、そのまま崩れ落ちた。もう1人の仲間は逃げようとした。

 

 とその時、


 「そこまでだ!」


 大量の警察と、メルの農園の人たちが入ってきた。俺たちは助かったのだ。


 「メ、メル、ありが……」


 そこでおれは言葉を失った。男を背中から刺したメルも、顔面蒼白になって倒れていた。


 「メル、どうしたんだ!?」


 「……蜂蜜ハニーをよろしくね」


 彼女はまるで遺言のように囁くと、そのまま意識を失った。


 「え、え!?てか蜂蜜ハニーってどっちのこと!?俺なの、蜂蜜なの!?」


 パニックになっている俺のところに、リーナさんが駆けつけてきた。


 「まさか、メルさん、針刺しちゃったの!?」


 「え、それがどうしたのか?」


 「っ……蜜蜂獣人は」

 リーナさんは声を詰まらせる。

 

   一生で一度だけ、毒針を使えます。でも。

 


   使うと死んでしまうんです。

 


 その言葉を聞きながら、俺は、痛みと疲労で意識を失ってしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る