第5話



 私は、両親に時間を作ってもらい、お父様の執務室で相談することになった。私が机に広げ始めた資料を、お父様もお母様も怪訝そうに見ている。



「ララ。これは?」



「学園の先生に頂いた、就職に関する資料です。」



「「就職?」」


 お父様とお母様は、声を揃えて目を丸くした。資料と私の顔を見比べる表情は険しい。



「ララ。あなた、就職したかったの?」


 お母様の言葉に、私は迷いながら正直に答えた。



「はいとも、いいえとも、言えません。」



「それなら……。」



「ですが、もう卒業前のこの時期に、私には縁談が来ていません。今までは、お父様とお母様の為になるような結婚をすることが私の目標でした。」



「ララ……。」



「ですが、それは難しいようですし、私も無理して結婚したいとは思わなくなりました。それより、自分の好きな語学に関わる仕事がしたいと思ったのです。」


 私の言葉に、お父様とお母様は顔を見合わせ、渋い表情で考え込んでいる。暫く経った後、お父様がゆっくりと口を開いた。




「ララ、お前の気持ちは分かった。だが、私たちも愛する娘の将来について考えてきた。」



「はい。」



「待たせてしまい申し訳ないが、もう少し時間をくれないか?」



「で、ですが、もう学園では将来が決まっていないのは私とエイミーだけなのです。」


 学園では、そのことで意地悪をするようなクラスメイトはいないけれど、それでも将来が決まっていない私とエイミーは居心地が悪い。どうにか、卒業前に方向性だけでも決定しておきたい。




「う……。肩身の狭い思いをさせていたのだな。すまない。」



「ララ。ごめんなさいね。出来る限り急ぐから、あと少しだけ時間をくれない?」


 お父様とお母様の説得に、私は頷くことしかできなかった。




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