檸檬色の空
窓枠を額縁に
覗く空は
その雲の灰色も淡く
檸檬色の太陽が
滲んでいたよ
雨は降らないのに
湿気ているのは
誰のせい
あなたが住んでいる街の片隅
私の午前は時間切れ
冷めてしまったティーカップ
褪めてしまうお茶の色
温もりはどこかに行って
行方が知れないあなたも何処に
捜さない私は冷たい女
時計の針は重なって
正午になった
始まる午後の予感は何処へ
午後のタスクは目白押し
「忙しいのよ」
その一言でケリはつく
冷たくて
薄情そうなお利口さんが
うそぶいた
「無駄にはしないわ」
心の誰かが囁いている
損をしたの?
取り戻さないと
どうするの…
買い戻せないのは
お金のせいじゃないから、と
投資するのは貴女の時間
とっても貴重で大事な資産だわ
でも、
使わなければ無くなってしまうだけの
そんなおとなの”お伽話”ね
使い果たすのを怖がっていても
使い果たせずに残っているのは
あなたの未練
腐っていくのよ
保存はきかないし保証もないのは
期限切れの約束手形かもしれない
保証人は捜せないわ
あなたが捨てたヒト
ケータイは
便利な時代の
不自由なわたしは
アナログでレトロな黒電話に
ダイヤルを回すのだ
リレーが繋ぐ継電器
その感触の懐かしさが愛おしい
何もかもが昨日のままに
何もかもを明日へつなぐ
こころのベルが鳴り響く
「聴きたいことは会ってから言えよ」
それからでも遅くはないから、と
優しく誘う声音が心地よい
事務所の近所の(いつもの)メシ屋で待ってる
そんな無粋な男の声
昼飯時にお上品な喫茶店なんかで
腹ごしらえなんかできるかよ
笑う彼は四十過ぎ
「今夜も遅いんだろ?」
彼とは”そういう”関係だったし
きっとこれからもそうだろう
腕いっぱいに資料を抱え床にヒールを鳴らす
おんなの足音はそれを告げていた
彼には言いたい事は一杯あった
それが彼女には嬉しくもあり
お楽しみの始まりなのだ
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