第9話 迷子
「...迷子だ」
森の中で俺は絶望していた。
かれこれ3日ほどだろうか?この森で彷徨っているのは。
この前出会った冒険者に言われた通りに来てみたものの、一向にこの森を出られる気がしない。幸い食料は変な実が食べられる...美味しくはないが、あるので困ってはいない。ただ、どっちに進めばいいのか全く分からないので一向に抜けられる気がしない。
「困ったな...といっても進むしかないか」
とりあえずその辺の木に目印をつけながら前へと進んでいった。目標がなかった序盤に比べたら希望がある分、気分もそこまで悪くなかった。
-カーネル視点-
「さて、この辺でいいかな...」
俺はさっきのやつが持っていた魔物を取り出した。
「いやあ、それにしてもバカだね。人の言う事を簡単に信じちゃってさ」
そう、あの青年に教えた森を抜けた先に俟っているのはただの大陸の端っこの崖である。
村など存在していない。
「あんなのが街に来てもらっても困るし、そもそも転移魔法を使えるとか信じる田舎者じゃ街で騙されて終わりさ。そういう点では優しかったな俺は。」
最初は心配で声をかけたが、どうもクソ田舎から出てきた平民らしく、おまけにめちゃくちゃブサイクだったので流石にそこまで助ける気にはならなかった。
「いやあ、それにしても何であいつがこんな魔物を持ってたのか...」
カーネルが手に持っている盗んだ魔物、実はレアモンスターである。
なかなかお目にかかれないのに加え、コイツから取れる素材がなかなか使いやすく肉も美味いので高値で取り引きされるのだ。
「まあ、コイツが手にはいっただけで遠征は成功かな...街に戻るか」
街まで30日というのも嘘だ。
教えた森と逆方向にある森を抜ければ5日ほどで着くだろう。
「まあ、せいぜい元気でな...ブサイク君」
こうしてカーネルに転機のきっかけを盗まれてまだまだ不憫な旅を続ける事になるクライであった...
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