第6話 丸裸の男
「現場は歌舞伎町交差点です。サンタの動画は見ましたか?」
ブチ犬は、まだ薄い捜査資料を机に広げた。
「ああ、見たぞ。なんとかって言い残していたな」
「はい。“クネヒー”と聞こえますが、まだ動画を解析中です。死んだサンタの身元はすぐにわれました」
サンタの身元とは、おかしな感じだな。
「名前は、さんたくろう」
う、うん? サンタクロースだもんな。
「いえ、
待て〜い! 冗談だよな⁈
「先輩? 聞いてます?」
「ツ、ツッコミどころが満載で」
眼球が乾きそうだ。
「さ、
「本名です」
「職業……」
「職業サンタです」
「なんだそりゃ⁈」
「国際サンタクロース協会から公式に認められたサンタクロースです」
「サンタさんって……」
一人じゃないの〜⁈
「あ、先輩ってサンタクロースを信じている人でしたね」
「信じているんじゃない。いるんだ」
「……そ、そうですね」
なんだ、その
「えー……続けますね。もちろん『
なんだ、俺はいつも落ち着いているぞ。
「
な!
俺の眼球だけでなく、口の中の水分も一気に引いていった。
“
それは、我が
千年もの昔、ギフテッドと呼ばれるIQ120以上の才能豊かな子供が多く生まれる
その結果、天才的な頭脳を持つ社会不適合者を
かろうじて生き残った一族の者は、二度と血を濃くすることを禁じ、近親交配をすすめた当時の当主・
しかし、天才を生み出す血に目をつけた
そんな先祖の
うっそ〜ん!
「先輩? 落ち着いてくださいよ?」
落ち着いていられるか!
「お、落ち着いて、い、いる」
俺はかろうじて答えた。口の中がカピカピだ。
「お茶、飲みます? あ、緑茶はダメでしたね」
うん、寝られなくなるから。
「水しか……あ、チョコレートがありますよ。甘い物を食べて落ち着いて……」
ブチ犬が言い終わらないうちに
じわっと
「そ、それが俺を捜査本部に入れた理由か」
「はい。死亡したサンタの情報を新宿署から聞き、すぐに一課の課長と話をつけました」
「ちょっと整理させてくれ」
「はい、なんでも訊いてください」
素直でいい後輩なんだが、面倒な事件を持ってくる面倒なやつだと思い出した。
俺はこめかみを
一ページ目に、
これは異例なことだ。
鬼塚さんは世界の注目が集まるサンタ事件に日本のメンツをかけて取り組むためだと言っていたが、
俺は親父のサインをピンと指で
「また親父か……」
俺がはじめて“
俺の親父。
日本警察のトップに君臨する警察庁長官は、おふくろの尻に敷かれっぱなしで、ついでに娘(俺の姉貴)にも普段からやり込められてる、心優しい父親だ。
だが、家族には見せない顔がある。それが今、ハッキリしたぞ。
「親父は……長官は
「ええ⁈ それはどういう意味ですか⁈」
「まんまの意味だ。新宿のサンタクロースが死んだと一報を受け、速やかに新宿署からこちらに捜査権を移してお前を呼んだ。お前なら俺を捜査に誘うと確信を持ってな」
「長官は三太九郎と
「面識……いや、それはないな」
時代ごとに天才犯罪者を生む
このイタチごっこに終わりはあるのか?
親父がなにを考えているのか知らんが、俺を巻き込んだ以上、俺のやり方を通させてもらうぞ。
サンタ事件をまるっと丸裸にしてやる!
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