第4話

「はぁッ!?!?!?」

俺は思わず怒鳴ってしまった

「驚いたか坊主。秘密を知りし者には死を!ってやつだな」

天野は酒瓶を傾けて酒を浴びるように飲むと、とんでもないことを言い放つ。


「違う違う違うって!殺さないからね!?」

朝香は慌てて首を振った。

それを見た天野は爆笑している。

「処置っていうのは記憶処理のことなの!」

「いやそれも大概だろ」


「でしょ?でもそんな竜二に提案があるの。私達リベリオンの一員になるというなら、関係者ていう扱いに出来るから記憶消されないで済む」

「おいおいおい、そんないい加減で良いのかよ?なんか話を聞いている限り秘密機関なんだろ?ここは」

それに仕事内容は聞いている限り危険な匂いがプンプンする。

関わるなと本能が告げていた。


俺が否定的な態度を示していたら、天野が酔っ払った勢いの大きな声を出し始めた。

「ガキの癖していっちょ前の心配をしやがってッ。安心しろ、ここは落ちこぼれ部隊、お前みたいな半端者を受け入れたぐらいでどうってことない。それにな、ここにいる奴は俺を含めてロクな奴はいやしない。いまさら上の奴らも騒ぎやしねぇさ」

そう言い放つと天野はまた酒を煽った。


「ま、そういう訳だから。それでどうする?竜二がどうしても嫌だというなら、こんな提案を呑まなくても良いよ。もう分かっていると思うけど、当然命の危険に関わる」

朝香は言い終わると部屋を沈黙が支配した。

俺の返答を待っているようだ。


「・・・決めたよ」

「本当にそれで良いの?」

朝香は心配げな様子だ。

「記憶を消されるのは嫌です。なのでこの提案を受け入れることにします」

俺は天野隊長に頭を下げた。

ちょっと中二病的な気持ちもあるが、おおむねこれが本心だ。


「そうか・・・。せいぜい後悔の無いようにな。蒼月、こいつの教育はお前が責任を持て」

天野隊長を素っ気ない返事を返すだけだった。

たったそれだけで俺の入隊は認められた。

「了解です。じゃあ竜二ついて来て。仲間を紹介してあげる」

そういって、朝香は知上がると俺の腕を引っ張った。


部屋を出て廊下を歩いている最中、朝香が話しかけてきた。

「竜二はなんでリベリオンに入ることに決めたの?最初少し鈍ってたじゃん」

俺は少し理由を言うのが恥ずかしかった。

だからはぐらかそうとしたが、その態度が朝香をより一層駆り立てたらしく、なんでなんでコールが始まってしまった。

「だってさ、告白したじゃん?朝香に、ほら四日前。そんときの記憶を消されたく無いなって、ただそんだけだよ」

朝香は一瞬黙ると小さな声で、呟いた

「なんだ、私と一緒じゃん」


「みんな~!新しく仲間が増えたよ」

朝香に連れられて入った部屋は小さな食堂のようなところで、テーブルがいくつか並んでる談話室といった雰囲気の場所だった。

そこにはすで四人ほどいて、全員の視線が俺に向けられていた。

月城竜二つきしろりゅうじです。よろしくお願いします」

俺は会釈した。

「人間なんて珍しい。三人目だな」

そう口にするのは、ノートパソコンをカチャカチャと叩く十二歳ほどの少年だった。

どことなく中学生独特の生意気な雰囲気を感じる。

「パソコンを弄っているあの子はモノ。通信やサイバー関連の担当をしてもらっている。人間ぽく見えるけど実は幽霊なんだよ」

朝香は何気なく紹介する。

俺は彼が幽霊だということを信じられなくて、近付いてモノの頭を触ってみた

感触は感じるし、何となくぬくもりも感じるが、

「触るなカス。死ね」

即答でモノからそう返された。

「ネットゲームにどっぷりはまってからこんな感じなの」

苦笑しながらそう言う朝香。


「はいは~い。次アタシアタシ!」

元気いっぱいの声を発したのは燃え盛る赤いロングヘアの女の人だった。

「アタシの真名はユリア。そのまんまユリアって呼ばれてるから、気軽にね。種族は天使。戦闘任務を主にしているけど、諜報なんかもするかな。よろしくね竜二君」

そう言ってユリアは胸を張る。

朝香よりもめちゃくちゃに大きい胸してんなぁ、なんて思っていると。

「私って人の心が読めるんだよ」

朝香がボソッと呟いた。

「えっ!?」

「冗談だよ~~?そんな訳無いじゃん」

朝香は笑いながら言った。

だ、だよな。やっぱ冗談だよな。・・・にしても何故あのタイミングが良すぎるような?


「じゃあ次は・・・」

朝香は目配せをした。

桜朱里さくらあかりです。剣術を初めとした忍術そして妖術も使いこなせます」

白の上衣に赤い袴という巫女服を着ている彼女の髪は淡いピンク色で、そして額から白い角が二本生えていた。

「これですか?私は見ての通り人間ではなく鬼人なんです」

俺の視線の気が付いたのか朱里は答えてくれた。

幽霊、天使、鬼人ときたか・・・

いっきにいろんな種族がやってきたな。


「最後は我か」

そう言った少女の肌は絹のように白く、髪は雪ような純白。

左の瞳は紅く、右の瞳は蒼いオッドアイ。

彼女の身に纏う雰囲気は高貴な種族であることを物語っていた。

「ヴァンパイア?」

俺がそう口にした途端、

「分かるか、お主。人間の癖に中々の有能だな。りゅうじ、気に入ったぞ。お前の名特別に忘れずに覚えておいてやる。感謝するが良い。」

あまりの高圧的な態度に俺は思わず押されて、

「あ、ありがとうございます」

「朝香。質の良い素直な下僕を捕まえてきたな。やはりそちは優秀な奴だ。おぉそうだ竜二。特別に我の名ぐらいは教えてやろう。我の名はリフェ・カロザース。医療を担当としておるが、殺してやるぐらいしか治療方法なんて知らん。たまに戦闘任務にも顔を出す故、まぁ精々我の邪魔だけはしてくれるな」

何というかヤバそうな奴だな。

朝香の方を見ると、首を横に振られた。

なるほど、諦めろ、てことか。


「じゃあ竜二。改めてネブラ機関559小隊、リベリオンにようこそ!」

朝香はそう言って俺を見つめて笑いかけた。

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