第3話

「・・・・ッ!!!」

影のようなバケモノに何度も何度も切り刻まれるという悪夢に苛まれていた俺は目が覚めるや否や跳び起きた。

汗をぐっしょりとかいており、着心地は最悪だ。

いつパジャマを着たんだ?俺は確か学校終わりに廃工場へ行ったから、制服の筈なのに・・・

寝ぼけていた頭がようやく起き始めてくる。

そして、ここが自分の部屋や病院なのではなく、全く身に覚えの無い部屋だということにやっと気が付いた。

白を基調とした内装はまるでSF映画で見る未来の宇宙船のよう。

天井を見上げても電灯らしきものは見当たらず、天井や壁、床そのもの全体が光っているようだ。

その灯りは心地よく、窓が一切無いのにまるで地上のような、むしろそれ以上の解放感がかんじられる。

パジャマだと思っていたものは、入院患者が着る病衣にそっくりで、俺が連れてこられたことは明らかだった。


「おはよう。ゆっくり寝れた?」

自動開閉式の扉が開き、一人の少女が部屋の中に入ってきた。

彼女の身につけている制服、瞳の色、顔や口調、声色まで全て蒼月朝香あおつきともかそのもの。

だけれども、この全く見知らぬ怪しい施設に身近な人がいるという現実を受け入れることはそう簡単なことじゃない。

・・・・・

・・・

「朝香、、、で合ってる?」

しばらくの沈黙の後、俺は恐る恐る尋ねてみた。

彼女は俺の言葉を聞くや否や、口角を上げて


「合ってる、合ってる。私は蒼月朝香。竜二が思ってるその人で合ってるよ」

朝香は笑って答えた。

彼女の緊張感の無い態度と自分の知っている人がいるということを確信できたことで安心感が込み上げてくる。

そうすると今度はほったらかしにされていた疑問が込み上げてくる。

「ここはどこなんだよ?それにどうして朝香がここに?ていうかさ、お前俺のこと殴らなかったか?」

「それについては司令と一緒に話すつもり。少しは動けそう?」

俺はベッドから起き上がりながら、多分、と返した。

疑問を早く解消したいという気持ちははち切れそうだが、朝香の様子とこの近未来的な施設にいるとうだけで、俺が抱いている疑問は全てすぐに明らかになるように思えた。


向かい合わせで配置されている二人がけのソファーと社長机が置かれている部屋に通された俺はソファーに座らされた。

「でお前がリベリオンに入りたいという物好きな野郎か」

向かい合って座った白髪の男が口を開く。

酒瓶をラッパ飲みしており、顔がすでに赤くなっている。剃り残しの髭がだらしなく生えており全体的に清潔感は無かったが、体格ががっちりしておりこの人には逆らえないような威圧を感じる。

「いやあの、、、リベリオンって何ですか?それよりもここが何処なのかも・・・」

恐る恐る答えると・・・

「あん?お前、ただ巻き込まれたタイプの奴かよ・・・しゃねぇな、説明してやる。耳かっぽじってよく聞けよ。おっとその前に俺は天野重一あまのしげかずだ。」

天野と名乗った男は酒瓶を机に叩きつける勢いで置くと、神妙な面持ちで話出した。

「じゃあ話そうか。この世界の真実を」

ただならぬ雰囲気にゴクリと唾を飲み込んだ

「この世界には魔物と呼ばれる存在がいる。その悪しき存在から平和を守っているのが俺たちネブラ機関って訳だ。それでリベリオンってのは俺たちの属する部隊のことだ」

「・・・・。えっ説明それだけですか?」

「他になんか言うことあるか?・・・ねぇな。説明は以上だ!」

いやいやいや。

この世界に魔物と呼ばれる存在がいるだって?

そんなの常識だ。

小さい頃からずっと言われていることだし、実物は見たこと無いけどググればすぐに出てくる。


「ごめんね。この時間ならまだ飲んでないかなって思ってたから。私から説明するよ」

朝香は苦笑しながら話し出した。

「天野の言ってることはまぁ大きくは間違っていない。魔物を倒すのは確かに私達の仕事なんだ」

「でもそれは警察やあと規模は小さいけど猟友会とかがするんじゃないか?」

実際に見たことがあるわけじゃ無いから詳しくは知らない。

だけど警察組織が主に魔物対策を行っているということを社会の授業で習ったことがあったような気がする。

日本以外の国も似たようなもので、警察や軍が主導して魔物対策を行っている。

希にバチカン市国とかの特殊なケースで、独自形態の組織、例えば聖騎士団なるものが伝統的に存在していること。

これが大体俺の知っていることだ。

「普通は警察が処理するんだけど、警察じゃ対応が難しい組織的な脅威や突然現れた魔物に高火力武力を行使して解決するのが私達の任務」

「公安みたいな感じ?」

「認識はそれで良いけど、公安にも対魔部隊が私達と別の組織としてあるからごっちゃにはしないでね。要するに私達の組織の目的は魔物絡み対テロ活動っていうこと」

なるほどな・・・。よく分かんないし、やっぱ公安って認識で良いか。

「最初はよく分からないって感じでもいいよ。それで、ここから竜二にとっては本題なんだけど、政府に属しているとはいえ秘密機関な訳だから、私の正体を知っちゃった竜二って今、処置対象人物にカテゴリーされっちゃっているの」

ふ~ん。処置対象ね、、、

「秘密を知りし者には死を!ってやつだな」

天野は酒を浴びるように飲むと、とんでもないことを言い放ったのだった。

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