第一章~忍び寄る影~
第5話
「・・・という感じで報告は以上です」
私、蒼月朝香は廃工場で竜二を襲った影のバケモノ通称シャドーについての報告を天野隊長に終えた
「ご苦労だったな。ところでだ、あいつが襲われたのは偶然だと思うか?」
酒で顔を鬼のように赤くしている天野隊長。彼がまさか真面目に聞いていると思わず、奇襲のような質問に少し面食らってしまった。
「・・・多分、竜二は私を追って廃工場に来ただけだと思います。だから、彼はただ巻き込まれただけだと」
竜二が襲われる理由は普通に考えて全く見当たらない。
彼がシャドウの出現場所を事前に察知できたとも考えづらい。
「だと良いがな。なにはともあれ一連の事件の初の生存者だ。何らかの手がかりにはなるだろ」
天野隊長が言う一連の事件というのはシャドーによる連続殺人事件。
最初に被害者が出たのは二ヶ月前。
そこから八人もの被害者が出たが、未だにこの事件を止められていない。
分かっていることは竜二を除いて、被害者全員が
しかしこれは普通の事件なんかじゃない。
その退魔師というのが皆、この街の結界を守る重要な存在だった。
ここ
その守り手が次々に殺されていることは看過出来る問題ではない。
「
私は無駄だと分かっていながら、天野隊長にそう尋ねた。
結界の破壊が目的として考えられないこの事件に私達は彼らと協力するべきなんだろうけど。
実は神社仏閣を初めとした宗教組織とネブラ機関の関係が最悪。
彼らにしてみれば、今まで先祖代々守ってきた土地にネブラ機関というよそ者がズケズケと入り込んできたようなものなのだろう。
理由はともかく、
「全くだな。むしろ竜二の身柄を引き渡すように迫ってきたぐらいだぞ」
私はそれを聞いて、頭が痛くなった。
「おそらく無いと思うが、出来るだけ竜二のそばにいてやれ。用心に越したことは無いからな」
「了解です。それでは私はこれで」
私はそう言って指揮官室を後にした。
竜二は今日一晩はリベリオンの施設で過ごすことになっている。
どうせ暇だろうし後で会っとこ。
私はそんな気持ちで竜二がいる部屋に向かって、真っ白に続く見慣れた回廊を歩きだした。
リベリオン 直治 @Naochi-Yot
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