第2話

「うわあ、今回、ここで終わりか?」

 最後まで読んだホリシイが投げかけた質問に、僕はうなずいて答える。寒さで鼻の頭を赤くしながら、友人は唇を奇妙な形に結び、真剣な目でうなずいた。

「面白いよ。コボルの書く物語は、最後にみんなぶっ壊しちゃうところがいいんだよな」

 褒められてるんだか、けなされてるんだかわからない。

 変わったやつだなあと思う。わざわざこんな稚拙な創作物なんて読まなくても、もっとおもしろい本が、図書館には山のように収められている。一生かけても読みきることのできない膨大な蔵書を、写本士は自由に読んでいいのに。

「なあ、これ、ちゃんとまとめてみないか?」

 読みおえたページをぱらぱらとめくりながら、ホリシイが言う。

「俺たちで、本にするんだよ。ほかの人も読めるように」

 僕は目をしばたたく。ホリシイのやつ、いきなり何を言い出すんだろう。そんなことできるわけがないじゃないか。首を横にふる僕に、ホリシイはちらりといたずらっぽい笑みを見せた。

「図書館の書架に加えるのは無理だよ、もちろん。葉皮紙も使わせてもらえないだろう。だけどメヅマさんの雑貨店で紙を買って、手分けすれば、六冊くらいはすぐに作れるんじゃないか? そんなに長い話じゃないし。それを、ほしいっていう人にそんなに高くない値段で──」

「また紙とインクの無駄遣いかよ」

 声がして、大きな手が後ろからホリシイの持つノートをひったくった。慌ててふり返ると、背の高い写本士が僕らを見下ろしている。顔をしかめながらもにやにや笑いを浮かべているのは、モルタだ。僕らより三つ年上の、くろ派の写本士。

「返せよ。コボルのだぞ」

 すかさずホリシイが食ってかかると、長身のモルタはノートを高く掲げて、僕らの手が届かないようにした。モルタの後ろにほとんど身を隠しているもう一人の見習いが、引きつった顔でこちらをうかがっている。玄派の見習いのモダだ。ホリシイのように抗議の声を上げることができず、ただじっとモルタの方を向いている僕に、モダは怖い生き物でも見るような視線をそそいだ。

「お前たち、こんなことして遊んでる場合か? もうすぐメイトロンでの任務が控えてるんだぞ。なんだってお前らみたいなひよっこを引率していかなきゃならないのか、いまだに納得できないけどな」

 吐き捨てるように鼻で笑うモルタに、ホリシイはひるまず肩を怒らせた。

「モルタが引率するのは、モダだけだろ。俺もコボルも自分たちの流派の先輩に世話になるから、玄派に迷惑はかけないよ。よかったじゃないか、お気に入りの子分を連れていけることになってさ」

 まずい。モルタの目に、さっと怒りが宿る。モルタは僕のノートをにらみつけ、片手でページを開いた。ちようつがいの壊れたドアみたいに、文字で埋まったページがめくれてゆく。

「……くだらねえ。こんなものを書くひまがあるなら、もっと練習しろ。下手くそが。お遊びで貴重な紙を浪費するな。いくら書いてもこんなもの、ごみにしかならないんだ」

「くだらなくない!」

 ホリシイが大声を上げると、モルタの後ろでモダがびくっと身をすくめる。縮れた髪が、すすみたいに揺らいだ。

「図書館にある本も、全部遊びで書かれたっていうのか? 俺たちがこれから救出しに行く本も、ごみなのかよ」

 モルタの顔から、からかいの表情が消え去る。代わりに、憎悪がその顔の色を暗くした。これ以上は口答えするな。僕はホリシイの服を引っ張っていた。

「まだくくりの文字も書けない、お前らみたいな未熟者が書くものが、ごみだって言うんだ。実際、書いても書いても捨てられてるじゃないか。知ってのとおり、新しく書かれた書物は発禁扱いだ。過去にどれだけ書物が量産されても、誰も賢くならなかった。情報が流通するほど野蛮な連中が増えて、暴力が勝つだけだってことが、証明されたからな!」

 モルタが投げつけたノートが、僕の額に命中する。モダが息をむ音が聞こえた。力いっぱい投げつけられた衝撃で、たまらずその場にしりもちをついてしまった。痛い。モルタは、ホリシイに怒っているんじゃない。僕のことが気に入らないんだ。

 と──モルタの背後から丘の道を駆けてきた誰かが、走る勢いを一切殺さずに、手にしていたノートで、モルタの後頭部に一撃を加えた。思わず悲鳴を漏らしたモルタの前に、走ってきた人物が立ちはだかる。

「わたしの後輩をいじめないでもらえる? 任務前にトラブルを起こすなら、あなたにメンバーから外れてもらうことになるけど」

 ひとつにくくった長い髪を揺らし、モルタに向かって威圧的な声をぶつけるのは、セピア派写本士のニノホだった。僕の先輩であるニノホは、ごうぜんと腰に手を当てる。

「……いきなりなんだよ。お前にそんな権限はないだろ」

「あるわよ。このことは老師や館長に伝える。そうしたら彼らには、チームを乱す危険分子としてあなたのことを軍に報告する義務が生じる」

 ニノホがノートを突きつけると、モルタはほとんどどす黒い顔色になり、怒りのために歯を食いしばった。十八歳のモルタの体格はすでに大人のもので、渋面を作るといっそう威圧的だ。

「親が軍人だからって、いい気になるなよ」

 食いしばった歯のあいだから、モルタが低い声をしぼり出す。

「あなたこそ任務の経験が少し人より多いからって、後輩に威張り散らすのはやめてくれる?」

 僕もホリシイも、先輩写本士たちのやり取りをただ見守っているばかりだ。下手に口をはさんでこの事態が悪化することを、僕もホリシイも恐れた。問題になっているのは、僕のノートなのに。モダはすっかり委縮しきって、いまにも泣きそうになっている。

「おーい」

 そのとき、図書館の方から新たな写本士が小走りに近づいてきた。ホリシイが、ほっとした顔をする。

「やめろよ、任務に行く写本士がそろって、何やってるんだよ」

 泰然とした声音で言って、近づいてきた写本士は草の上に落ちた僕のノートを拾う。任務地でホリシイと組むことが決まっている、ブルー派のユキタムだ。

「二人とも、落ち着こうぜ。任務地では流派関係なく、チームとして動くのが鉄則だろ」

「黙ってて、ユキタム。そのチームから、この人に外れてもらう必要がありそうなの」

 ニノホの強い物言いに、ノートを拾ってくれたユキタムが少し目をまるくした。モダが小声で何かを言っているけれど、いまその声が耳に入っている者はいないようだった。日が暮れて、丘の上が暗くなる。もう宿舎へ戻らなくてはならない時間だが、この件が片づくまで誰も動く気配はなさそうだ。いたたまれなさに、僕は手に戻ってきたノートを力任せに握りしめる。

「どっちも、もうよせってば。今回は、ただでさえ少人数での異例の短期間任務なんだ。一人でも外れてもらっちゃ、全体が困ることになる。一番に考えなきゃならないのは、メイトロン龍国の書物の救出だろ」

 ユキタムはそう言うと、冷たい顔をしているニノホの肩を軽く叩いた。そのままモルタの背中を押して、宿舎へ向かおうとする。モルタは身をよじってユキタムの手を払いのけ、ふり向かずに古井戸のそばから歩き去った。小柄な体をますます縮め、モダが慌ててそのあとをついてゆく。

 ふん、とニノホが、けいべつしきったようすで鼻を鳴らした。白い息が荒々しい旗みたいに、空気の中に立ち現れる。

「ユキタムめ、あれでまるく収めたつもりなのかな。つまらない言いがかりをつけてきたのは、あっちなのに」

 それからニノホは、ふり返って僕の顔を睨んだ。モルタが目の前にいたときよりも、はるかに凶暴な顔だ。

「コボルも、もっとぜんとしていなさい。あなたがそんなじゃ、あいつ、これからセピア派の全員をめてかかるようになる」

 それはまちがいだ。モルタは、僕のことだけが嫌いなんだから。ニノホのように親兄弟が軍人だからでも、ホリシイやほかの多くの写本士のように両親がこの世にいないという理由で図書館へ身を寄せたのでもない。ちゃんとした身元も知れず、国境近くの町で発見された僕のことを、不気味に思っているんだ。

 力任せにモルタの頭部へぶつけたニノホのノートの革表紙には、傷がついてしまっていた。

「あなたたちも、早く戻らないと夕食を食べ損ねるわよ。明日の外出の許可も取り消されてしまう」

 ニノホは長い髪を大きく揺らして、先に歩き出す。外出というのは、町の広場に来ているサーカスのことだった。各地を巡業するサーカスが図書館のふもとの町に来ており、出発前に僕たちは羽を伸ばしてきていいと、館長から許可をもらっていた。

 太陽は西の山の下へ溶け落ちて、丘の下の市街地はもう暗い水みたいな夜に浸りはじめていた。街灯がともりはじめるのに先駆けて、中央の広場が明るく光っているのが見える。年に一度やってくる、あれがサーカスのあかりだった。

 僕は服についた枯れ草を払い、ノートの表紙を撫でた。いまのいさかいの原因になったノートと、ここで起きたさいな出来事。まるでアスタリットで書物の発行が禁止された理由を、裏付けてしまったみたいだ。そう思っているのを見透かしたように、ホリシイが頭の後ろで手を組み、わざととぼけた声を上げた。

「先が思いやられるなあ、過干渉な先輩だらけで」

 僕が視線を向けると、ホリシイは舌を出してみせる。

「気にするなって。モルタは後輩の才能を恐れてるんだよ。それにしてもみんな、ぴりぴりしてるよな。今回の任務が、それだけ特殊ってことだよなあ」

 これまでにも写本士は、塵禍に襲われた他国に赴いて書物を運び出してきた。だけど、塵禍の被害に遭うのは辺遠地域が多く、国の根幹を揺るがすほどの事態に至ることはなかった。今度のように、王都が被害を受けた例ははじめてだという。この先メイトロン龍国がどうなってゆくか、まだ誰にもわからない。書物を運び出せるかどうかすら怪しいと、ニノホが言っていたんだ。

『才能じゃないよ。』

 僕は自分の言葉を伝えるため、ノートに文字を書いた。ホリシイはちらりと視線をよこしてそれを読むと、何も言わず、幾分芝居がかったしぐさで肩をすくめた。

 僕もホリシイも、それにモダも、他国へ書物の救出に赴くのは今回がはじめてだ。図書館から遠く離れるような任務には、もっと熟達した写本士が選ばれる。……だけどもう何年も、若者や子どもの写本士しかいない。大人の写本士たちは前の戦争の終局になって戦闘員として駆り出され、一人も戻ってこなかったんだ。

「将来、好きなだけ本を作っていいようになったらさ、絶対にコボルは物書きになれるよ」

 ホリシイの声ははつらつとしていて、だけど今度は、うなずくことができなかった。

 モルタの言ったとおり、アスタリット星国では、新しい書物を発行することができない。山岳の向こうの大国、ヴァユくうこくとの戦争で、アスタリットの製造業は徹底的な破壊を受けた。印刷技術もそのひとつで、いまだに完全復旧のめどが立っていない。

 たくさんの書物がいまよりずっと人々のそばにあった時代、人は賢くなるどころか、こうかつに、好戦的になっていった。極めつけに起きたのが、ヴァユとの戦争だった。終結から、まだ十七年。この国は、暗い時代の渦中にある。

 だけど、いずれアスタリットは立ち直って以前よりも豊かになる。そうなれば、高度な教育を受けた賢い国民が増えるだろう。そのときにこそ書物は必要となるはずだ。写本士はそのために、一冊でも多くの書物をつぎの時代へつながなくてはならない。……図書館の責任者である、アサリス館長の言葉だった。塵禍に襲われた周辺国で、そのままにしておけば消えてゆく書物をかき集め、後世に残してゆく。それが使命だ。

 だからほんとうは、新しい物語を書くなんていうのは写本士のするべきことじゃない。練習用のノートに、僕みたいに自作の文章を書いている者はほかにもいるらしいけれど、読んだことはないし、僕だってホリシイ以外に見せたことはない。ノートは使いきるたびに、それぞれの流派の老師に渡す規定がある。そしていつたん渡すともう戻ってこない。いくら書いても失われる。完全な無駄なんだ。いつか国が持ち直したら。知識のためだけじゃなく、物語を楽しむためにたくさんの書物を必要とする人間が増えたら……そうしたら、無駄ではなくなるのかもしれない。だけどそんな遠い未来のことを、僕はうまく考えることができなかった。

 いまの僕たちはいつもうっすらと空腹で、自分だけの家庭というものを持たず、未来に期待しない。期待するほどの力がない。

 図書館の建つ丘の上に、名前のない星が光った。一等星なのに名前がないあの星は、アスタリット星国でしか観測できないのだという。夕間暮れの冷たい空の色と、そのただ中に毅然と輝く星が、ますます地上を暗い場所に思わせた。

 先のことを考えないように、僕は下を向き、ホリシイは空に視線を向けて、宿舎への残りの道のりを歩いた。窓から灯りの漏れている宿舎まで、サーカスから漂うチョコレートのにおいがほのかに届いていた。


 海を足下に、北大陸のほぼ中央に位置するアスタリット星国。アスタリットを縁取るかっこうで、周りを五つの旧植民国が取り囲んでいる。北のペガウ犬国。アクイラよくこく。南のナビネウルりんこく。西のトトイスえんこく。そして東、半分海にせり出した形の、メイトロン龍国。

 アスタリットとこれらの周辺国は、南は海が、北は山脈が、西は砂漠が壁となって、そのほかの国とは行き来が簡単にはできない。そんな広大な土地を、風に乗って訪れる災い、塵禍が襲うようになった。

 何が原因でこの災いが発生したのか、いまだ誰も知らないらしい。

 塵禍が通過していったあとには、はいきよしか残らない。人も家畜も、空気に乗ってやってくる大量の黒いちりにふれるや否や、表皮が灰色の塵になり、内側からも同時に壊死がはじまる。直撃に遭えば即死。わずかでも吸い込めば確実に塵禍に体をむしばまれる。治療法はなく、さいした者は本来とはかけ離れたすがたになって、苦しみながら死んでゆく。やがて細かな粒子に砕かれた体は、新たな塵禍の一部となってさまようのだ。

 十五年前のアクイラ、七年前のペガウ。そしてたった二週間前に塵禍に吞まれたメイトロンの王都。風に乗ってさすらう性質のためか、何度も塵禍の被害に遭う土地というのはない。ひとつまたひとつと周辺国が塵禍に見舞われるたび、つぎは自分たちの番ではないかと、アスタリットに重い空気が漂う。

 実際、いつそうなってもおかしくはないのだ。


 メヅマさんの雑貨店で、僕たちは採寸して仕立てられた制服を身に着けた。そでやズボンの丈を調整しておいてもらった全員分の制服が、完成したんだ。

「あなたたち、ちっとも大きくならないわねえ。生地も糸も、ほんの少しで足りちゃう」

 声音に頰笑みをふくませて、メヅマさんは首をかしげた。雑貨店の奥の、物置と住居を兼ねたスペースに同じ意匠の服を着てならんだ僕たちは、髪が伸びかけたマネキン人形みたいだ。ブルー派のホリシイとノラユは青、玄派のモダは黒、セピア派の僕はくすんだ茶色。制服の色はそれぞれの流派のインクに合わせてある。左袖にはめる腕章があって、流派ごとのペンの天冠にある紋章がしゆうされている。

 セピア派の魚、ブルー派の鳥、玄派の象……写本士はインクの色だけでなく、流派ごとのシンボルと老師からの教えを背負っている。

「子ども扱いしないでほしいなあ。俺たち、これから国外での任務に行くんだぜ」

 腕や足を動かしてみながら、ホリシイが訴えた。袖が細く、二本の足に合わせたズボンのある制服は、写本士の平服よりはるかに動きやすい。ひもを編み上げる革製のブーツも、履くだけでどこへでも歩いてゆけそうな気分にさせた。身にまとうものが変わっただけで、自分自身が大きくなったと錯覚するには充分だった。

 だけどメヅマさんは、決してからかいを込めて言ったわけではないんだ。

 僕たちは少しずつ縮んでいる。ヴァユと戦争をしに行ったアスタリット人の兵士たちは、みな僕たちよりも背が高く、しっかりとした筋肉もついていた。戦争で農地が失われ、充分な食糧が分配できないせいで、若ければ若いほど体格に恵まれないのではないかと言われている。

 体格だけではない。たった十五歳の、正式に修行も明けていない見習い写本士が塵禍が通過した土地へ書物の収集に行くのは、今年がはじめてなのだという。熟練した写本士が足りないせいで、なんの経験も積んでいない見習いが、突然現場へ投入されることになったんだ。

「あなたたち、危なそうなところへは、絶対に近づいてはだめですよ。仕事よりも何よりも、命が大切なんだから」

 メヅマさんは、戦争が終わってまもなくだんさんを亡くしたそうだ。周辺国とアスタリットを行き来する物資運搬をして働いていたメヅマさんの夫は、国境の向こうで命を落とした。運搬トラックが元民兵の強盗グループに襲われ、そのまま二度と戻ってこなかった。

 そのせいで、メヅマさんはいつでも全身が灰色だ。頭髪や目が灰色なのは一般的なアスタリット人の特徴だけれど、メヅマさんは喪に服していることを表すため、身に着ける衣服も上から下まで灰色なのだ。いつも、何曜日であろうとも。

「大丈夫です。二度も塵禍は来ないし、先に国軍が入って安全を確保しているから」

 姿見に映る自分を眺めていたノラユが、メヅマさんを安心させようとふりあおいだ。やっと結わえられる長さになったノラユの髪の先が、新品の制服の肩をさらりと払う。

「それでも、気をつけなさい。帰りを待っていますからね。帰国後には、うちの店でお祝いをしましょう」

 メヅマさんが、ノラユの肩をせた手で包む。それから椅子にかさねていたハンガーを抱えると、たぶん無理矢理に明るい表情を作った。

『新しいノートと、チョコレートをください。』

 僕は、雑貨店で買いたいものをノートに書いた。ページを向けると、メヅマさんは眼鏡を軽く押し上げ、顔を近づける。

「はいはい。ほかの子たちも、買うものがあったわね。だけど、あまり荷物を増やしすぎないでね。重量超過すると、軍に取り上げられてしまうから」

 ちょうどそのとき、雑貨店の入口のベルが軽やかに鳴った。

「みんな、準備できた?」

 入ってきて声をかけたのは、ブルー派の写本士、アスユリだった。彼女も今回の任務の参加者だ。長く伸ばして三つ編みにした髪が、肩の下で揺れる。僕らが着ているものと同じ意匠なのに、アスユリの青い制服はしっかりと体になじんでいた。

「完璧ですよ。どの子も体にぴったり」

「ありがとうございます、メヅマさん。──それじゃ行こう。みんな待ってるよ。スピード狂のセピア写本士さんが、早く走りたくてうずうずしてるの」

 おもてで警音器が一度、高く鳴った。げいバイクに乗った先輩写本士たちが、外で待っているのだ。

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