Ver5.3 本当にエラーコード九十九なのか?
人体発火。
幽霊の目撃。
呻き声。
ビルの管理人?オーナー?
身なりの良いそのおっさんは、汗を拭きながらそう言った。
(ハンカチをもった腕はオートマトン化されていた。しかも軍用か)
そう言えばそんなことを言っていたなと私は思い出しながら茶をすすっていた。
クソンとジゥは驚いているようだった。
(まぁそりゃそうか)
「何より一番困っているのは人体発火でして……。オートマトンも、オートマトン化手術を受けた人間も、等しく燃え始めるんですよ」
「えっと……プログラムの動作不良とかは……?」
ジゥがそう聞くと、おっさんは首を横に振った。
「ありえません。うちは特にセキュリティ面が強い会社ですから、ハード的な面でも、ソフト的な面でも、社員への福利厚生として最高級のモノを与えています。CES傘下の企業ですから」
随分なお話だな。
『だから、絶対に我々のミスではない』
そう言いたげなセリフに聞こえた。
おっさんの元に、秘書らしき人が来た。
何かを耳打ちすると、おっさんは頷き、席を立った。
「すみません、この後会議なので私はこれで……会社の中は自由に見て言ってください。地下以外であれば、セキュリティパスは不要なので。では」
そう言って、おっさんは応接室を出て行った。
「セキュリティに自信がある会社で、セキュリティパスは不要ねぇ……昔の故事成語とかにありそうな話だな」
「違いますよね、それ」
ジゥが睨みながらそう言ってきた。
こわ。
「えっと……?」
「この状況での第一声はそれじゃないですよねって言ってるんです」
「状況……というのは、依頼の内容の話?」
「そうですよ。こんなひどい状況の依頼ならすぐに連絡してください」
「でも、この依頼ってお前から来た依頼だろ?内容くらい知ってただろ」
ジゥは大きくため息をついた。
なんだよ。
「私が依頼人の詮索をしないのくらい知ってるでしょ?何年の付き合いなんですか」
「いちいち覚えてねーよ」
「それじゃ今から覚えてください。次やったらグーです」
いつもグーですよあなた。
「でまぁ……この状況、やっぱりエラーコード九十九だよな?」
話の雰囲気を変えたくて、そうジゥに話をふると。
「そう思います。けど……」
「……なんだよ」
「果たして3つ全てが異なる怪異なのでしょうか……とね」
「結局調べないと分からんか」
「それをあなたがしておくべきだったんですけどね……」
蛇のように睨みつけてくるジゥ。
やばい。
むしろ雰囲気悪化してる。
だが、こういう時に便利な人間が仲間にいるではないか。
「ク、クソン、お前はどう思うよ?」
と、隣に座るクソンに話をふった――
だったのだが――
「……あれ? クソン?」
そこに、クソンの姿は無かった。
―――Ver5.3 本当にエラーコード九十九なのか? 終
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