Ver2.2 身体が先か、魂が先か

「調査?」


 2本目のペットボトルを空にしたところで、ジゥは話を切り出して来た。


「ええ、私の顧客を」

「意味わからんな。テメーの客ならテメーで処理しろよ」

「そうしたいのですが、今回は特殊でしてねぇ。貴方の降霊術が必要なんですよ」

「口寄せな」

「扶鸞でしたっけ?」


 席を立ち上がった。

 完全に気分が失せたので。


「……帰る」

「あら、受けてくれないんですか?」

「誰が受けるかボーケ」

「じゃ、1000万」


 歩く足が止まった。


「……は?」

「ペットボトル1本500万。2つだから1000万」

「いやおい待て。これは私が買っておいたやつ」

「証拠は?」

「は……?」

「私も買っておいたんですよペットボトル。ほらこれ」


 と、さっき私が飲んでいたペットボトルを拾い上げ、底を指差す。

 そこには星のマークが付いていた。


「星マーク、付けといたんですよ」


 ニコリと笑うジゥの顔を見て私は察した。


 ―――こいつ、またやったわ……


「払ってくれます?」

「……そんなお金ないです」

「あらーそれは大変。でもタイミングばっちりじゃないですか。私の仕事を手伝え 

 ば、きっかり1000万、報酬でお渡しできますよ?」


 ―――ああ、そうですか。


 もう返す言葉も出てこない。

 これも全てジゥの思惑通りだったということだ。

 結局、コイツに声をかけられたら、終わり。

 クソンみたいに全部無視すりゃいいのにな。

 まったく、自分のお人好しさ加減には呆れちまうよ。

 (あれ?私結構いいやつじゃね?)


 と、ぶつくさ言っていると、ジゥは席を立ち上がった。


「それじゃ、行きましょうか」

「おい待て。なんも中身聞いてないんだけど」

「うーん……まぁ簡単に言えば」


「身体が先か、魂が先か。ということです」




―――Ver2.2 身体が先か、魂が先か 終

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