episode4 SEPULTURA1/3

 アラーム。

 ガイジュウの出現を知らせるアラームが鳴り響く。

 薄暗い指揮所内のオペレーターが警察等とやり取りを交わす。

「大型1、中型3、小型多数。警察無人部隊が対応中」

 オペレーターが通信コンソールから顔を動かさずに報告を行う。

「自衛隊から要請は?」

「まだです」

 どうせそのうち要請がきて部隊を出す事になるだろう。戦力としては十分だがなんせ自衛隊は ―特に指揮系統の― 小回りが効かない組織だ。小回りが効かない分、こっちが割を食っている。

「戦略支援AIを起こせ」

「了解」

 モニターの隅に映ったAIの状態を示す文字が待機から有効状態に切り替わる。

 部隊の状況を確認する。


GREAT WARRIOR-standing by

MASTER FENCER-standing by


FULL FORCE-standing by

ONSLAUGHT-standing by


SHOOTING STAR-standing by


ARMOR PIERCING-standing by


ANNIHILATOR-standing by


 全ての部隊が出動可能となっていた。

「歩兵部隊は陸路で接近させる。歩兵とフルフォースに伝えておけ」

「了解」

 部隊内通信を使用してオペレーターが各部隊に連絡を送る。

 右モニターに警察から送られてくる現地の映像を映す。巨大な怪物が4体、その周りに無数の小型の怪物が群れて街を破壊していた。警察のドローンは苦戦しており、被害を抑えられていない。敵の数が攻撃能力を優に上回っている。

 しばらくすると中央モニターに自衛隊のマーカーが現れる。ドローン随伴歩兵部隊のみの様だ。

「自衛隊からの要請をあおげ。被害が広がるぞ」

 オペレーターが返答しない。そちらを見ると振り返ったオペレーターと目が合う。

「自衛隊からの要請です」

 詳細をモニターに表示させて確認する。東側のエリアから侵入可能との事だった。

「よし、アナイアレイターを出せ。爆撃目標は小型、エリアはAIに指示させろ。自衛隊にも爆撃すると言っておけ」

 地上部隊に指示を伝える別のオペレーターに対し、

「歩兵部隊はフルフォースに搭乗、オンスロートを護衛にして現地に向かわせろ。アーマーピアシングは地上部隊の支援」

 十分としないうちに地上部隊が基地を出て行き、爆撃機が飛び立つ。

 アナイアレイターの爆撃予定エリアを確認する。警察と自衛隊が上手く全目標を一箇所に集中させており、中央に大型及び中型、そしてその周りの小型がいる範囲が綺麗に爆撃予定エリアに入っていた。

 5分ほどするとアナイアレイターが真っ先に作戦エリアに突入していくのがマップで確認できた。

「アナイアレイター、爆撃を開始します」

 右モニターをアナイアレイターに搭載されたカメラ映像に切り替える。燃える街が映されていた。そして、小型の精密誘導爆弾が多数落とされていく。

 制御翼のついた円筒形の物体が頭を下にして落ちて小さくなっていく。程なくして地上で花の様に爆煙が咲き、最初に爆弾の落ちた地点から左右にリングを描くように広がって収束していく。

 中央モニターに映されたマップが更新されて目標のマークが消えていく。ついでに地上部隊がもうじき到着するのが見えた。近くにある幅の広い道路で直進すれば十字路があり、その先に大型がいる。車両部隊の射程内だ。

 地上部隊に随伴するアーマーピアシングは爆撃のため離れた位置で待機している。

「地上部隊は爆撃が終了し次第、前進させる。ケリは地上部隊でつける」

 オペレーターがチラと自分を見てからまた正面を向いた

 左モニターにアナイアレイターの詳細を出し、先程の攻撃効果を見る。小型が半数以下に減っている。兵装を確認するとまだ十分に爆弾は残っていた。

「アナイアレイターに再度攻撃させる。待機させろ」

 オペレーターがアナイアレイターに指示を伝えている。

 これまでの経験上、数を減らした小型は散るか大型の周りに集まるはずだ。多分、大型と中型の数が多いので集まるはずだが。

 マップの目標を示すマークが密集し始める。予想通りか。

「アナイアレイターに再度攻撃させろ。目標は中型。SAND STORMを使用」

 アナイアレイターが再度爆撃の為、侵入を開始。爆撃ルートに乗る。

 右モニターを見る。

 大型精密誘導爆弾サンドストーム、3発投下。

 目標に当たる前に信管作動、先程の小型精密誘導爆弾とは比べ物にならない巨大な爆煙が上がる。

 左モニターの攻撃評価ではほぼ小型を掃討していることがわかった。

 幅の広い国道の十字路にマーカーを置く。

「オンスロートをマーカーの地点に移動させ、フルフォースは東側に散開し部隊を展開させろ」

 装甲兵員輸送車で構成されたフルフォースが散開、散開した先で歩兵部隊を展開していく。

 右モニターには搭載された25mm機関砲及び同軸6.8mm機銃を発砲するフルフォース1からの映像が映される。切り替えると、120mm滑腔砲で中型に攻撃を浴びせかけるオンスロートに替わる。

「中型A、腕部損傷を確認」

 中央モニターでその個体をアップ。ゴリラの様な体格の犬っぽい、頭は竜に似た犬猿的な目標の左腕が取れかけて、肩の付け根あたりから皮と一部の外骨格だけで繋がっている状態であった。

「中型Aに集中攻撃」

 オンスロートが徹甲弾を撃ち込み、フルフォースが機関砲、機銃、対戦車ミサイルを撃ち込んでいく。

 歩兵部隊もミサイルランチャーやアサルトライフルに装備したアンダーバレルグレネードランチャーを使用、アーマーピアシングは上空から機関砲で火力支援を行っている。

「中型A、活動を停止」

 中央モニターのマーカーが一つ消える。

 マーカーの一つにアラート、AIが過去の行動パターンからガイジュウが攻撃化傾向へ移行した可能性を伝えてくる。最も近い部隊は、フルフォース4とマスターフェンサー3。

「アーマーピアシングに中型Cを攻撃させろ」

 AIの予想通りにフルフォース4のいる方向へ中型Cが突っ込んで来る。AIが包囲網の変更を提案、承認する。すると、部隊が中型を牽制しつつ後退していくのがモニター上でわかった。

 大型へ攻撃を加えていたアーマーピアシングが移動、フルフォース1の後方へ。

 かなり攻撃を加えているが、目標Cは暴れまわっている。このままだと街の被害が増えるな。

「全ての兵装を使用して中型Cを沈黙させろ。アーマーピアシングにはロケット弾の斉射を行わせろ」

 フルフォース及びマスターフェンサーが頭部への集中砲火を開始、中型Cの外骨格が剥がれて怯む。

 その隙をついてアーマーピアシングが搭載していた全ロケット弾を発射、頭部を吹き飛ばす。

 頭を失った犬猿にさらなる攻撃を地上部隊が加えて完全に沈黙させる。

「自衛隊から通信。空爆を行うので退避されたし。との事です」

 外部との連絡を担当するオペレーターが報告を上げる。

 自衛隊とデータリンクされたシステムを使用している為、中央モニターにエリア等が表示されている。左モニターに詳細を出して確認。4機の爆装した戦闘機が東側から侵入、大型精密誘導爆弾8発を落としてしていくという内容であった。

「全ての部隊に敵を抑え込ませろ。爆撃がくるまで釘付けにしろ」

 こちらが目標を抑え込んでいると、自衛隊の機体が爆撃態勢に入る。すでに部隊は爆撃ルートから外れていつでも問題ない状態であった。

「爆撃まで一分」

 戦闘機から爆弾が落とされる。今日一番の派手な爆発が起き、爆心地には四肢のちぎれたガイジュウの残骸が転がっていた。

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