第23話
「犯行現場、日時、そして正確すぎる犯行。これらの情報を紡ぎ合わせれば、おのずと犯人があなたであることは誰だってわかります」
唐突な私の語りに、二人は虚を突かれた様子だった。先に調子を戻したのは吉永さんだった。
「へえ? 聞かせてもらおうじゃないか、探偵さん」
挑戦的な言葉を受け、私は「では」と人差し指を立てた。
「犯行現場からまいりましょう。冬夏くんがまとめてくださった地図から察するに、現場はどれも『学校に近い』です。だから、寮生なのではと疑っていました」
「待った」
冬夏くんが口をはさむ。
「寮生には外出届があるだろ」
そこまで声に出して、彼も気づいたらしかった。
「受付と共謀したのか? 美術室の件で、部員が猫の存在を丹から隠したように」
「違うよ。叔母さんはなにも知らない。ただ単に、僕のお願いを聞いてくれていただけ」
流れを手繰り寄せるべく、私はふたつ目に移ることにした。
「次に、日時。『金土の深夜帯』にしか犯行はありませんでした。これは、犯人がそれ以外の曜日の翌日に予定があることを示しています。決まった日程、決まった時刻。社会人の可能性も考えましたけれど、後述する特徴を持った人間で、学校に近い人物はひとりしか知りません」
「特徴?」
冬夏くんの質問に、私は頷く。
「三つ目、特徴。それが『犯行が正確すぎる』ことでした。『腰、首』そして『足』を『刺す、切る』、被害者の体躯や性別はバラバラなのに、そこだけはきっちりと統一されていました。
今回の通り魔事件と似た事件が、三年前にも発生しています。犯人が逮捕されている以上、同一人物はあり得ない。
――なので、私は『三年前の事件の生き残り』で『犯行を間近に目撃』しており、それを『驚異的な記憶力で憶えている』人物だと考えました。
美術室の件のとき、冬夏くんのお兄さんから聞きました。『瞬間記憶能力』『カメラアイ』というそうですね。三年前の事件の生存者は、当時『小学六年生の女子生徒』と『男子高校生』。このふたりの中ですべての状況に、当てはまるのは」
私は言葉を区切ると、吉永さんがいるであろう方角に顔を向けた。
「吉永さん。あなたしかいません」
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