第7話
*
俺は自分の手をもみながら、俺はある一室を睨んでいた。
なんの変哲もない五階建てのマンションだ。白地で汚れが目立つせいか、やや古ぼけた印象を受ける。だが、そんな外観の印象とは異なり、中はそれなりに近代的な設備が整っていて綺麗だった。
日鞠 白夜が十夜をかばっている。
以前この仮説を思いついたときは、馬鹿げていると思ったけれど『着物姿の人物が現場にいた』という噂話もある。一パーセントでも確率があるのなら、それを疑うべきだ。
そう、だから今夜、日鞠さんの家に張り付いているわけで。
息を吐き、一度だけ行ったことのあるクラスメイトの家をまじまじと見つめる。これといって数分前と変化はない。監視し始めて一時間は経過したが、
病院の別れ際、日鞠さんはこんなことを言った。
――まず、図書館で調べましょう。三年前の事件も、今回の事件も全部。十夜という人間を知る前に、事件を知る必要があると思うのです。
日鞠さんの言い分はもっともだし、その提案も受け入れた。彼女の言葉から察するに、その周囲にも『十夜』という人間はいないのだろう。
だというのに、くすぶる炎のように疑念が居座り続ける。日鞠さんが言ったことすべてに「本当か?」と思ってしまう。
思いついたことをすぐさま行動に移すあたり、今日の俺はかなり疲れているらしい。けど、こうやって頭と体を動かしてないと落ち着かないのだ。
日鞠を頼って協力を仰いだのに、俺は彼女のことを疑っている。
信じる。
そんなありきたりなことが、こんなに難しいことだと思わなかった。
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