第16話


 なんだかどっと疲れた気がする。頭を使ったせいだろうか。

 帰ろうかと声をかけた時も、一階に降りる最中も、日鞠さんは無言だった。ずっと何かを考えこんでいる。


「ちなみにだけど、日鞠さん。どっちが双海先輩で、二木先輩か、聞き分け出来てた?」

「いいえ」


 何気なく振った話題にようやく日鞠さんは口を開いた。


「ただ、一人称でどちらがどっちだかはわかったので、問題ありません」


 そっか、と俺は頷いた。ここでやっと彼女は俺のほうを向いて、微笑む。


「お疲れですね」

「そりゃあね」


 俺は肩をすくめた。

 放課後だけで、三組から情報を聞いた。それだけで頭が痛くなってくる。


「日鞠さん」

「はい」

「明日、用事ある? ちょっと情報を整理したくって」

「構いません。ただ、あまり周りに聞かれない環境がいいですね」

「おすすめの喫茶店があるんだけど」

「喫茶店、ですか」

「俺の家」

「なるほど」


 彼女はふ、と笑った。


「そこにしましょうか」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る