第43話 初めての町

 集落を徘徊して、捕らえられていた獣人達も助ける。

 なんとなく、嫌そうな雰囲気だが何故だ?


「一塊でいてください」

 そう言い聞かせて、場を離れるが、探査の端ですぐに逃げ出したのを感じる。


「あらまあ。まあ良いか」

 後でその理由が分かるが、先にここに居る盗賊の殲滅が大事。

 逃すと面倒になりそうだしな。


 それからまあ、追いかけ回してすべて終わった。

 途中、降参をしていた奴もいたが、話をして、ついぶん殴った。

 元商人で、自分のために繋ぎをつけ、盗賊達に知恵と人脈を与えた本人。

 商売に負けて、自暴自棄になったようだが、その後がひどい。


 商売敵の荷車を捕らえて、呼び出し。応じてきたのに金銭事捕まえ、さらに請求。

 結局、強盗をして店そのものを潰した。

 その時、行ったことを嬉しそうに本人が語っていたが、あまりにあまりで、途中で手が出てしまった。

 

 まあ幾人か、話をしたがさすが盗賊。

 色々おかしい。

 諦めて、全滅させた。


「さてと、怒りにまかせて全滅させたがどうしよう?」

「そのままにしておけば、動物やモンスターが食べますが」

「アンデッドとかにならない?」

「あーそうですね。この場は、これまでもひどいことがあったから、いわゆる穢れの場になっている可能性はあります」

「じゃあ浄化するか?」

「焼かないと駄目ですね」

 テレザが言ったことをシルヴィが補足してくれる。


「手間だが、集めて燃やすか」

 土魔法で大きな穴を造り、すぐ脇から穴の底へ空気穴を通す。

 真ん中の穴で火を燃やすと、上昇気流ができて勝手に空気を吸い込むだろう。

 一般的にダコタファイヤーホールと呼ばれる竈。

 それの大きいものを造る。

 火をつけ、日本人の心があるため、塩を振る。

 魔力を錬り、周囲を浄化する。


 ところが、この集落だけのつもりだったが、予想以上に浄化の光は広がった。

 また力が、おかしなことになっている。

 まあ、浄化だ。問題ないだろう。


 そして、目の前で起こっている現象にも目をつぶる。

 上空十数メートルまで、火柱の上がる、火災旋風のような火葬も終わり、骨一つ残っていない穴を埋める。

 何かあれば、とりあえず、埋めれば問題はなくなるというのを何かで見たな。

 列車だったか?



 予想外に遅くなったため。集落跡から、場所を少し移動して、就寝。

 二人共が、寒いのと言ってにじり寄ってくる。両側から抱きつかれて、押しくらまんじゅう状態だが、何とか寝る。

 だが、そんな人の気持ちも、状態も関係なく、騒動は俺に近寄ってくる。


 暗闇の中、俺達を囲む亜人達。

 十人程度。二手に分かれて、もう一つは、盗賊がいた獣人のアジト跡地に向かったようだな。


 むろん大分前から、気がついていた。

「起きているのだろう」

 問いかけられる。


「ああ。あんたちはなんだ?」

「隠れ里の亜人だ。どこかから、逃げてきたのか?」

「そういう訳じゃない。旅を始めたばかりだ」

 そう言うと、騒めきが起こる。


「旅だと?」

「ああ」

「どこから来たんだ?」

「チトセの町。その前は王都の方だな」

「チトセの町? 王国なら、奴隷しかいないはずだ」

「今はもう。奴隷はいないはずだ」

 微妙な言葉の違いだが、大きく内容は違う。


 話を聞けば、逃げ出した亜人達の集落があるようだ。

 さっき捕まっていた人たちは、仲間割れだと思い。混乱のさなかに逃亡を決意したのだろう。


 彼らから、この国の状況を聞く。

 連合共和国なので、小さな国が集まり一つの国を構成しているイメージらしい。

 元の国は、今は州と呼ばれて、それぞれの法により自治が行われている。

 今居るところは、ババリア州と呼ばれ、昔から王国と繋がりが深い。

 その為、亜人の扱いもひどい。


 聞くと、この州内には、いくつかの隠れ里があるらしい。

 皆がドラゴンの谷と呼んでいたらしいが、そこに町を造ったことを説明。

 亜人なら、真面目に働くなら、受け入れてもらえることを説明する。

 ついでに他の隠れ里にも、教えてくれるように伝える。


 ただ、盗賊達と取引があったようで、集落がなくなっていたことで驚かれた。

 取引と言うが、うまく騙されて搾取だな。

 盗賊達は、捕まえた被害者から取り上げた古着や道具などを押しつけて、食料を持って行っていたようだ。

 それでも、奴隷時代よりましだったため、受け入れていた。


 説明すると、皆と相談をして決めるようだ。


 だがそれも、数日後。

 偵察に行って帰ってきたら、アジトがなくなっていた盗賊達が、隠れ里を尋ねてきたことで真実とわかり、移動をしたようだ。

 当然ながら、盗賊はその日のうちに村で消息不明になった。


 俺達はその頃、近場の町へと到着したが、町には入れず門前払い。


 州都となるババリアキャプトから外れ、ハンターの町と呼ばれる、ベネターデビラへと向かう。


 ここは、このコンチネンスビスタ大陸で、丁度山脈を挟んでエクシチウムの樹海と、点対称の位置に存在する。

 そのためなのか、ダンジョンと呼ばれる洞穴や遺跡が多数あり、ハンターが集まっている。

 此処で取れる資源が、ババリア州の大きな収入源となっており、ハンターがそこそこ保護されている。

 そのため、ここには多くないが、亜人が暮らしている。

 そんな話を聞いて、様子を見に来た。


「亜人か? 何しに来た? ハンターにでもなりに、どこかから逃げてきたのか? そんな、ひ弱な体じゃすぐ死ぬぞ」

 立派な体の門番さんが、見下ろしながら威圧してくる。

 ここでも熊系獣人か。


 俺はハンターカードを出す。確かこの大陸では、まだ共通だったはず。

「うん? ハンターだったのか? みない…… かお…… 金クラス? しっ失礼しました。ベネターデビラへ、ようこそ」

 一歩下がって、敬礼してくれた。


「ありがとう。さて、二人も登録をしに行こう」

 そう言って、メリディウムポーツム共和国初の町へと足を踏み入れた。

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