第4話 対翼竜。そして拠点作り。

 多少は落下したが、相手も当然追いかけてくる。


 頂きますな感じで、口が開かれる。

 うーん。噛まれると痛そうな、とげとげの綺麗な歯並びが観察出来る。

 ワニのような、サメのような尖った歯。

 噛まれると、いやだなぁ。


 だから、顎の先に足を掛けて上顎に這い上がる。

「あっ、ちょっと蹴ったら前歯が折れた。以外とひ弱?」


 そして、目と目の間を、ぶん殴る。

 地面までもう距離は少ないが、背中まで移動して少し気分を満喫。

「竜戦士ってこんな感じかな?」

 首の後ろに立ち上がり、腕を組み、正面を睨む。


 高笑いをしようとしたところで、着地したらしい。

 そして、落下の衝撃で、膝まで翼竜に刺さる。


「うえ。以外と脆いな。足が抜けない。よっと」

 何とか両足を、刺さった背中から引っこ抜く。

 のぞき込むと、背中はかなり筋肉がある。

「食えそうな気がするなあ。危険だが川に向かうか」


 川の水で侵食された崖にも、意外と湧水はしみ出している。

 川の水を求めてくる動物やモンスター。未知の場所なら水生生物の危険性もある。

 だが、よく分からないがこの体なら、大丈夫な気がしてきた。


 翼竜の尻尾を掴んで、引っ張り始める。

 だが、当然羽が周りに引っかかり、じゃまだ。

 血抜きにも良いし、力任せに羽の付け根からむしると簡単にむしれた。

 捨てようかとも思ったが、羽が使えそうなので一緒に持って行く。


 西側へ向かう。

 もうそろそろ川なのだろう、水音が聞こえる。

 木が途切れ、目の前にも草が茂り始めてきた。

 ダニが怖いが、草の中に分け入っていく。


 当然、足下に地面が無く、気がついたときには草で滑って滑落する。

 山などでは良くあるから、気を付けよう。

 落ちはしたが、高さはそんなに無く。五十メートルくらい?

 すちゃっと地面に着地。

 足首まで埋まった状態で、どっちかというと、追いかけて落ちてきた翼竜の方が怖かった。


「結構。深い渓谷だな」

 両側が、切り立った崖。

「これなら、モンスターも来ないだろう」


 川をのぞき込み、水の中の気配を探る。

 ゴブリンに気を付けたおかげで、色々な情報を感知出来るようになった。

 非常に便利だ。ワニとかがいると怖いから念入りにチェックをする。

「魚と、蛇かな?」

 体長十メートルを越えた長さのものが、すぐ脇の淵になった部分。底の方にいるな。


「まあ良いか」

 翼竜の羽を、瀬の部分で、水洗いをする。

「水をはじくし、そのままシェルターの材料に出来そうだな」

 一人でいると、独り言が多くなるのはどうしてだろう?


 まあ複数人でいて、独り言を永遠しゃべれば、おかしな人認定だろうが。


 翼の腕の部分を地面に置き、頂上を? 

「いや羽の生え方からすると逆だな、当然周りに木は無いし」

 そこで、ゴブリンから取り上げた、棍棒を忘れてきた事に気がつく。

「薪も必要だし、取ってこよう」


 崖の下から飛び上がる。

 やはり身体能力が化け物のようで、あっさり崖の上を飛び越してしまう。


 とりあえずの目的地。

 さっき翼竜と落下した地点に戻り棍棒を回収する。


 持って行くのも面倒なので適当に、西に向けて投げる。


 他にも残してきた棍棒を探したが、すでに持ち去られていた。

 意外と治安が悪いらしい。

「ゴブリンの死体まで無いな」


 戻る途中に、二チームのゴブリンを壊滅し、十本の棍棒を新に得る。

「どこから持ってくるんだろ? 棍棒のなる木でもあるのか?」


 とにかく崖に戻り、はたと思い出す。

 シェルターの材料。二股でも何でも良いが、木の棒が必要だな。

「竹や笹があれば便利だが、ここまでの道中。見ていない。時間を掛けるなら、煮込んで曲げても良いが、枝をへし折ってエックス型に組むのが、まあ基本だよな」

 道照は子どもの頃、『ロビンソン・クルーソー』を読んではまり、幾度か自身でサバイバルをした経験があった。


 また森側に戻り、ついでに蔓草なども採取する。

 見つけた蔓はイワガラミぽいが、白い小さな花が噛みつきに来たし、茎から出ている短い根は、ウニョウニョしながら人に巻き付こうともしてきた。

 この世界怖ぇ。


 地面から根っこを引き抜いて、こぶみたいな所を踏んづけたら動きが止まった。

 かなり丈夫なので、引きずって帰る。


 そして、また崖から飛び降りる。

 人間大丈夫と思ったら、五十メートルくらいの紐無しバンジー程度。すぐ慣れるようだ。


 でだ、下に降りると、せっかく捕った俺の翼竜に、食いついてジタバタしている奴がいる。

 見た感じは、蛇では無くウナギ。


 相対的に気持ちが悪い円口類の八つ目系では無く、ニホンウナギっぽい。

「これ、巨大化したオオウナギかな? 食えなくは無いが、まずいって言っていたよな」

 オオウナギは太平洋とインド洋の熱帯、亜熱帯域に広く分布していて、珍しくはない。

 日本でも、利根川以西に生息している。沖縄辺りでは一メートルから、一メートル五十センチ程度がゴロゴロしているらしい。


 近寄って絡まれるといやなので、石を掴んで投げる。

 見事に右目から入り、頭が爆散したが、動きは止まらない。


「食いつくのはやめたようだから、放っておこう」

 ドタンバタンじゃらじゃらと、せわしくのた打っている。

 寂しいから、BGM代わりに、丁度良いかもしれない。


 取ってきた木の枝を、手前側と奥側、おおよそ二メートルくらい距離を開けて、それぞれの場所に、柱をエックス状に組む。方法としては、二本の枝を軽くツタで括り散けないようにする。そして広げて地面に突き立てる。


 本当なら、上部に出来ているV字部分に柱を乗せて、それに枝をもたせかけて屋根を作っていくが、今回は、翼竜の羽がある。腕の部分を乗せオーバーラップ。つまり重なりを作って雨が入らないように作る。

 長さがあるので、べきべきとへし折ってついでに奥の壁を作る。


 床は、石を除けて、砂を運んできて敷き詰める。

 ふと思いついて、石を尖らせてナイフを作り、翼竜の皮を切り取る。お腹のふかふか部分を床に敷いてみた。


「これは良い」

 ちょっと生臭いが、さわり心地は非常に良い。後で、肉側を燻せば良いだろう。

 簡単な、燻製なめしだな。


 ナイフを作ったついでに、フェザースティックを作り、さらに細かなくずを集めて、火打ち石で火をつける。

 火打ち石。石は適当に硬いのを拾えば良い。だが、手元に鉄が無い。

 石同士でも火花は出るが、鉄との方が効率が良い。


 マグネシウムなどのロッドと、こすりつけるストライカーと呼ばれる金属プレートをセットで、ファイヤースターターという名前で市販されている。

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