第18話 Kへの斡旋

 ○Tケースの対応は、急ぐ必要があったが、難しいケースだった。この赤ん坊を引き受けられる親がいるのだろうか。公的機関にすべきかと傾きかけたが、もう一度思い直した。

 あるいは、Kならば、引き受けてくれるのではと思い、里子として、しばらく育ててみないかと連絡することとした。

 Kが多忙なことは、分かっていたので、用件だけを連絡した。後は、私と妻に任せるとの返事だった。

 Kの妻に来社してもらった。スーツ姿の彼女と向かうと、何か、面はゆい感じがした。だが今日は、K夫婦へのアドバイスのためだ。

「若干、話しにくいところがありますが、お願いしたいのは、両性具有で産まれて、出生後手術をし、男子に性別を決定した子どもです。この子を養子にとは言いません。里子としてしばらくお願いできればと思ったからです」

さすがに、、両性具有と聞いてKの妻は、驚きを隠せなかったようだ。

「このようなと言っては、失礼になりますが、どうして私どもにと考えたのか、Sさんのお考えをお聞きしたいのですが」

「このような子は、思春期になれば、性自認の問題が発生する可能性があります。そんな面倒な子どもを養子にしたいと考える親はまずいないでしょう。とすれば、施設に入ることになりますが、私としては、出来れば避けたいと考えたのです」

「何か、Sさんて、営利会社に勤めているとは思えないですね。社会福祉に携わっているような」

「私の性格でしょうね。こういうことは、誰かがしなければならないが、だれもする者がいない。だから私がしているというわけですね。それに、Kさん夫婦なら、この子の問題を引き受けてくれる力があると私は信じています」

 併せて、軽度の遅れがあるが、環境的なもので心配はいらないと思われる旨を伝えた。彼女は、自分の一存では決められないので、夫と相談してくると言って帰っていった。

 二日ほどして、Kから電話があった。難しい子どもを預けるんだなとは言ったが、お前を信頼するとの返事だった。その言葉が、かえって私の責任を再度自覚させた。面会日を後で連絡することにした。

 その日、K夫妻は、時間よりかなり早く来た。私は、相談室で待ってもらった。Jが、Kの妻はきれいな人ですねと感想をもらした。

 しばらくして、母親と生後六ヵ月の可愛い男の赤ん坊が現れた。

母親には、しばらく退席してもらい、赤ん坊を挟んで、K夫妻と話し始めた。

 Kの妻は、赤ん坊をひと目見て気に入って、それじゃ、ベビーベッドから色々なベビー用品を全部購入しなくてはと言ったので、私は、それは無駄だと伝えた。赤ん坊はすぐに大きくなって、全部不要になるので、リースするのが一番良いと助言した。衣服もバザーで、高級品が安く入手できる。Kは、お前って本当に雑多なことを知っているなと言っていたが、赤ん坊を扱う商売をしているなら、それくらい当然だと私は言ってやった。

 このケースに問題がなければ、K夫婦の養子になる予感がした。

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