第10話 電話
とりとめもない考えが、電話の音で中断された。
「陣痛が始まっています。子どもを引き取ってください」
言葉の調子からすると、かなり切羽詰まっているような若い女性の声だった。
「落ち着いてください。今、どこからおかけですか。救急車を呼ぶほどですか。だれか、そばにいますか」
「アパートから電話しています。すぐには、産まれないけれど陣痛があります。私一人です。どうしたらいいですか」
「救急車を呼んでください。あるいは、かかりつけの産婦人科に電話してください」
突然、電話の声が怒りを帯びた。
「それができれば、苦労しないんだよ。救急車を呼ぶわけにもいかないんだよ。何とかしてくれよ」
一瞬、横柄な話し方に、電話を切ろうかと思ったが、困って電話をしてきたのだし、赤ん坊の提供者になる可能性が高いからと思い直した。
「住所はどこ。もし三十分以内の距離であれば、自動車を回せるよ」
「△△です。自動車を御願いします」
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