夏の反抗期


 睦月と弥生はブレイキンに打ち込む14歳の娘・夏の反抗期に困り果てていた。「俺との会話が減った!帰宅するとすぐ2階に行っちゃうし」弥生は「食器は洗っておいてくれてる」と夫の肩に手を置いた。

 「ただいま」「おかえり美奈」帰宅した12歳の次女・美奈が「お姉ちゃん、ブレイキンの授業で予選通ったよ」と嬉しそうに報告する。

 「睦月さん、弥生さん!夏が立てこもり犯に捕えられ、ジェームズさんが救出に向かっている」『カフェ&バー 月明かり』の入り口でフランクが息切れしながら言い、ローズが呆然としている美奈の肩に手を置いた。



 

 ジェームズは軽量のさすまたを持ち、フードバンクに入る。キャベツやトマトの保管庫の前に立てこもり犯が立ち、レンガを投げた。ジェームズはさすまたで立てこもり犯を転倒させ、気を失い倒れている夏に駆け寄り『カフェ&バー 月明かり』まで連れて行った。



 「夏!」「お姉ちゃん‼」睦月と弥生、美奈に抱きしめられた夏は「ありがとうございます」とジェームズに一礼する。

 「睦月と弥生は懸命にお前を捜していたぞ」店内にいたローズとフランクにも笑顔を向け、ミネストローネを飲み終えてから「茶摘さんも茶葉を乾かしていた時、立てこもり犯に浅手を負わされたと言っていた。用心しながら過ごせ」と付け加えた。



 「クリスマスツリーが折られてる」泣きながら入って来たホルンの髪をなで、イチゴとブルーベリーのケーキを出す夏。

 「賢哉さんが白い網で修復してる」弥生が言い、「睦月と作ったの。リュックサックにもつけられる」と黒いひもを通した手縫いのクリスマスツリーを渡す。ホルンはケーキを完食し「美味しかった。ありがとう」と3人に手を振った。




 「お父さん。今日は小籠包にしない?」「ああ!」睦月は嬉しそうに箸とレンゲを机の上に置く。

 「ブレイキンで、小籠包の皮を破る時に出る湯気を再現した」と夏が父に小声で照れくさそうに言う。

 「ツリー専門店の入り口に置かれているジンジャーブレッドマンにもひびが入ってたって」弥生が小籠包を食べながら言い、「ロンドン警察署音楽隊のコンサート会場で、椅子にのぼって砂利入りのビンを投げようとした音楽嫌いの巨漢がヒュージさんに一喝され、マンホールに激突したらしいわ」と付け加えた。


 賢哉はフィンランドから輸入された20本のツリーを修復し終え、茶摘の紅茶店でレモンの皮入りクッキーを食べていた。「白浜巡査、ありがとうございます」ツリー店の男性が賢哉に頭を下げ、フランボワーズのマカロンを食べる。

 「俺の実家は古道具屋で、皿や机を修復してた。3年前に空港でポピーと出会い、搭乗員の男性を救出してからロンドン警察署で勤務してる」賢哉は紅茶を4杯飲み終え、クッキーを完食した。



 



 

 

 




 

 

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る