ラジオで教師・保育士募集
実直と中秋、14歳でSNSぎらいの冬道美花は地域清掃で鶴岡八幡宮に来ていた。「教師や保育士の退職が増加してる」中秋がコイの池に入りながら言い、「働きたい人には採用前に忍耐力をつけさせ、スマホやパソコンを悪用しないかや子どもをたたかないかも注視」と実直が付け加え、炭酸入りジュースの缶をトングで拾う。
コイたちはゴミの減少と、淡い緑色の着物と足袋姿で受験生へのお守りを買うジルに歓喜していた。
「ラジオで教師や保育士になりたい人を募集するのはどうですか?」美花が小声で聞く。「『便箋と封筒の店 高見』で葉書を見よう」3人は清掃を終え、焼き芋を食べてから鶴岡八幡宮を出た。
「箋蔵さん。葉書ありますか?」『便箋と封筒の店 高見』の前で中秋が風鈴を振ると黒柴のようかんが顔を出し、葉書の入ったかごをくわえてきた。美花が茶柱の絵つきを1枚取り1000円を渡すと、500円玉を足でレジから出した。
「ありがとう」3人が店を出ようとした時「助けて!」と声がし、あごが変色した3歳男児が駆け込んできた。実直が大声で泣く男児をソファに座らせ、絵本を朗読する。男児の母親と交際・同居する24歳の男が店内でバールを振り上げたが、ようかんの吠え声で駆け付けた強一と元カツオ猟師の高潮に取り押さえられた。
「ありがとう」男児はようかんと高潮、実直に向かって嬉しそうに手を振り、強一と箋蔵に付き添われて病院へ向かった。
美花と別れ銭湯高校の男子寮に戻ると、「茶柱の絵つき葉書?」と居間で追試に向け勉強しながら『Young Flowers』のラジオ番組を聴いていた18歳の男子が中秋に声をかける。
「フランクさんに送るんだけど、保育園での事件が多発してるよな」「給食を長時間食べさせたり、暴言も多い。保育士になりたい人が減る」
「お抹茶飲む?」実直がもみじまんじゅうと切り分け用の木、お湯入りのやかんをおぼんに乗せ、机に置く。
「もみじまんじゅうを切って食べてから抹茶を飲み、使い終えた木を折った紙に包んで見えなくする」中秋たちがもみじまんじゅうを食べ終えると、実直が抹茶の粉末とお湯を混ぜるシャッシャッシャッという音が響いた。
「最後に、飲み終えた器と口を指と紙で拭く」説明を終えた実直に「もみじまんじゅうと抹茶、美味かった」と18歳の男子が言った。
フランクは『Young Flowers』の2階で届いた300枚の葉書を読んでいた。『子育て経験豊富で教師・保育士になりたい方をラジオで募集しませんか 謹厳実直 佐々木中秋 冬道美花』と書かれた一枚が夜の放送で紹介され、教師・保育士志望の5人が集まった。授業や園内での子どもへの声かけと言葉遣いを注視し、60代の男性が教師として勤務することが決まった。
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