間章 古本市とコンサート


 直美たちは授業の一つ『古本市』に向け、持参した800冊の本に値札をつけていた。暗記の得意なジョニーとマチルダが会計をやることになり、電卓とノート、ボールペンが菓子の箱の中に置かれている。



 「ジェームズさん!こんにちは」ジェームズは和菓子の写真が載った本を3冊選び、マチルダに札を2枚渡してから「紙袋に入れてくれ」と直美に声をかける。大きな紙袋に3冊を入れて渡すと、「ありがとう」と一礼し美容院へ向かった。

 「値札がはがれそうになってる」直美は小説の表紙に貼られている値札を新しいものに換えた。

 

 「マチルダ。何冊売れた?」「30冊!売り上げは8000円」マチルダは電卓をたたき、余った紙袋を箱の上に置きながら答える。

 「マチルダの計算の正確さには驚かされるよ」ジョニーが干しあんずをかじりながら言い、「売り上げが1万円になった」と付け加えた。


 みづきは61歳のジュリアとベンチに座って湯気の立つレモネードを飲みながら子育てについて話していた。ベラとリズが転落防止トランポリンの網の上で跳ね、「きゃー」と楽しそうな声が響く。

 


 「困っていることは?」「直美の気持ちを聞いてあげられてなくて」「私、保育園や小中学校、高校の寮で働いてきて子育て経験豊富よ」ジュリアはみづきの肩に手を置き、芝生の上に座ってトマトとハムのサンドウィッチを食べる直美たちに笑顔を向けた。

 「この古本市は30年続く授業の一つで、売り上げは親や交際相手と別居し過ごす子どもたちのために使われるの」ジュリアは紅茶を飲み終え、芝生の上に落ちていた弁当の容器をトングで拾いビニール袋に入れた。

  


 ロンドン警察音楽隊の男性20人と亮介がテムズ川の前で歌い始め、コンサートが始まった。茶摘静雄が直美たちに紅茶と毛布を渡し、目を細める。12歳のゴルバチョフとイスラエル人の17歳男子が口論をやめ、聴き入った。

 


 歌い終えて「ありがとうございました」と一礼した亮介はみづきと直美に嬉しそうな笑顔を見せる。

 「活力が出たぞ」刑務官の男性が亮介に言い、「アレックスの父親はトラック運転手として勤務し始めた」と付け加えた。清一やエベレスト、ジェームズも拍手を送る。文房具店とリサイクルショップへの就職が決まった男性受刑者20人も感激して泣いていた。



 古本市が終わり、直美たちは校内で売り上げを計算する。「10万8000円!」マチルダが尻餅をつき、「パパの給料より高いよ」とジョニーが歓喜。焼いたホットドッグを食べながら近況について話した。



 亮介は『カフェ&バー 月明かり』で睦月と乾杯していた。「10月25日に30歳になりましたね」「夏は反抗期で、弥生に怒られてるよ」睦月は湯気の立つ小籠包を箸で亮介の皿に乗せ、笑顔を見せた。




 



 



 



 



 

 






 

 


  


 

 


 

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