祭りと野球部男子の苦悩


 亮介と直美、アリアとジーニアスは肌の出ない浴衣を着て祭りに来ていた。あめ売りの男性・高潮が2匹のカツオを肩に乗せて太鼓をたたき、鷹野がヘラを使い焼きそばに火を入れている。

 「スイミー!」「直美ちゃん」金魚が描かれた浴衣を着た澄子が直美と丸太に座り、マンゴーのシロップがかかったかき氷を食べ始めた。

 「ママは旅先で所持金がなくなって、空腹なんだって」澄子は母から送られてきたラインを直美に見せ、「かき氷おいしいなあ」と嬉しそうに付け加えた。


 

 「亮介先生」温泉小野球部で12歳の男子が亮介の隣に座り「僕、暗記力が突出した『ギフテッド』で、18歳の兄にけがをさせられることが多いんです」と赤く腫れ上がった腕を見せる。高潮が「腫れ上がってるな」と言い、保冷剤入りのタオルを男子の腕に当てた。

 「暗記力は何に活用できると思う?」亮介に聞かれ、男子は「街案内や食料の在庫確認、所持金の浪費防止など」と答える。


 「ジュードの授業で街案内の体験に参加した時、どうだった?」鷹野が紅しょうがと青のりたっぷりの焼きそばを亮介に渡し、男子に聞く。

 「『聞き取れない』『ゆっくり話して』って言われることが多かったです」「それが改善点だ」鷹野が言った時、高潮がかけ声を上げながら太鼓をたたき踊り始める。亮介や直美、ジーニアスたちも踊りを楽しんだ。



 街案内の授業で横浜に行った時、男子は行きつけの本屋についてジュードに英語で

説明し「聞き取りやすかったぞ」と驚かれた。バナナとが乗ったパンケーキを食べていると、ソファー席にトラック運転手の男性が座るのが見えた。



 「兄ちゃん」男性は弟に気づき、ブルーベリーとヨーグルトをかけたパンケーキを食べ終えてから隣に座り話し始める。

 「『がまぐち旅』で千葉に行き、食料や水を断水している場所に運んだよ。大学を不合格になってから怒りを抑えられなくなって、お前を殴ってた」男性は弟に「ごめん」と泣きながら謝り、病院に同行した。



 ジュードが温泉小の職員室でじゃがバターと赤身の牛肉弁当を食べていると、「ジュード先生の街案内授業、面白い!」と小4の男子5人が話しながら入って来た。「北海道も行ってみましょう!」「10月にしよう」と答えると、歓喜の声を上げ階段を上がっていった。


 「社会科教師になって2年ですが、授業の参加者が多いです」駅に向かって歩きながら鷹野に言うと「地図記号の暗記が好きになったやつがいるらしい」と嬉しそうな笑みを見せ、ジュードの肩に手を置く。

 鎌倉駅で野球部の男子に会い、「練習に復帰できそうです」と報告される。「よかったな」「はい!ありがとうございます」男子は二人に手を振り、横須賀線で帰って行った。男子の兄やマオたちも試合を観て歓喜した。

 


 

 

 


 


 



 

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