SNSの危険性とお金の大切さ


 温泉小の教室ではタルトと源次郎による『SNSの危険性とお金の大切さ』という授業が行われていた。


 「日本はお金の浪費国になってきています。1日に使う金額を書いたノートを見せてください」タルトが『20万円(アニメのグッズ購入代)』と書かれたページを見て驚愕し、「千円以内に減らして!」と11歳女児を一喝。「所持金が少なくても乗り切れる案をノートに書いて発表するのが、月曜日までの宿題!」と全員に言う。女児は「千円以内じゃ、タオルやペンライトが買えない」としょげていた。


 「SNSは便利だが、危険なものでもある。ラフと満月によって撃退された源泉中の男子二人は後輩に暴言を送り続け、停学となった。顔の見えない相手と知り合うと、連れ去りや暴行で命を落とすこともある」

 源次郎が話し終えると教室が静まり返り、マラソン部主将の小6男子・マオが「注意しないとな」と小声で言った。


「スマホを使わない授業も、やったほうがいいな」「ええ。長者さんの実兄にも、妙案を出してもらいましょう」

 

 

 刷り上がった『質素倹約新聞』10部を職員室の机に置いてラジオ体操をしていたみづきに、直美が「ママ。お守り買いたい」と言う。「給食の肉だんごとわかめ汁を食べてからでもいい?」「うん」タルトが「やけどに注意して」と給食室に向かう教員たちに呼びかけていた。

 厚手のブラウスとズボンに着替え、手をつないで鶴岡八幡宮に向かうと、受験生で混雑していた。合格祈願のお守りを買い終えた美花が「みづき先生、直美」と二人に手を振る。


 「長者さんに、『嘲笑を気にしない知恵』を渡されて前向きに過ごせてる」美花は直美に「温泉小で調理師試験を受けようと思うの」とノートを見せる。「体調、崩さないようにね」「ありがとうございます、みづき先生‼」


 

 直美と一緒に足踏みをしていると、石段に腰を下ろしておにぎりを食べていた50歳の女性がみづきに近づいてきた。

 「はじめまして。あたしはフードバンクの店長・八ツ橋福。ロンドンで行われる『スポGOMI大会』にも出るよ。チーム名、考えておいてね」と言って飲み終えたビールの缶をリサイクルボックスに入れ、歩き去った。

 (酒豪……)呆然とする間に、直美は無病息災のお守りを買って通学用のリュックサックにつけていた。



 

 ―――銭湯高校・女子寮。個室でラジオを聴きながら勉強していた美花の机に、寮長の女性が湯気の立つきりたんぽと大根おろし入りハンバーグを置く。「鈴はタルトの指導とコイの池で行う瞑想で、飲むせきどめ薬の量が減っているらしいわ」「よかった!」

 内容が簡潔に書かれた四角い付箋つきのノートを見て、寮長は「試験当日まで風邪を引かないように。早寝早起きも習慣にしよう」と声をかけ退室した。

 



 


 


 



 


 

 


 

 

 



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