SNS禁止の『がまぐち旅』
源泉中の入り口に到着した満月は美花の先輩で15歳の男子二人のあごに頭突きし、押収したスマホを石の上に置く。
「後輩を泣かせたって?」ラフがどすの利いた冷ややかな声で聞き、キバであごを挟んで腫れ上がらせる。泥の板で粉々になったスマホを見て呆然とする二人を満月が「スマホなしで過ごしな‼」と一喝し、カボチャをラフと分け合って食べた。
長者がハクサイを食べ終え、「停学になったか」と小声で言う。「今の若者は、SNSの危険性を知らぬ。タルトが『お金の大切さについての授業もやらなければ、事件は減ら―――ん‼』と憤慨していた。ちっぽけなものだ、人間も」源次郎が階段の上の落ち葉を尾で拾いながらぼやく。
「金に執着し、人を死亡させる事件も後を絶たん。『スマホを使わない授業』の一環として、自力で稼ぐ『がまぐち旅』で経験を積ませよう」
長者の案が採用され、源次郎が「金が欲しければ自力で稼げ。旅に行ってこい」と寺に来る人に旅用の小さいがま口と倹約ノート、ボールペンを渡す『がまぐち旅』が始まった。
提灯とマオ、源泉中の14歳女子・冬道美花と輪島鈴は犬も同伴できる旅館で自転車に乗せた木材や野菜の運搬で汗を流していた。
「お前たちと旅ができるなんて」提灯が嬉しそうに言い、「俺の実家は居酒屋で、つまみを作ることが多かったんだ」と付け加えた。
「ホストは嫌いだ―――!」マオが川に向かって絶叫し、ムクドリが飛び去って行った。「母ちゃんが学費をつぎ込んで、途方に暮れたなあ」恥ずかしそうに言うマオに、「今の目標は?」と提灯が聞く。「4キロマラソン走破!」「沿道で鼓舞しよう!」「ええ」「うん」
「水の音を聞きながら無心になると、睡眠薬を飲まなくても寝られる」鈴の肩に美花が手を置き、「困っている人の力になろう」と励ました。
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