Epilogue-1.その後の話を、少しだけ。
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――――また夏が。ボクらの誕生日と……旅の日々が、やってくる。
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不穏な日々も去り、ボクらは……正直戻れるか不安だったが、日常に帰ってきた。
いやその。神器体から生身に戻ったこととかは、問題ないんだがね?
また学生できる、とは。
こう、メンタル的な意味で。
一度幼児に戻った時は、まぁよかったさ。
あんまり幼児のフリをしなくても、よかったのもある。
けどこう……だね。地球で一通り学生やって。
職を経て何年も研究者やって。
その後、となると。何かよくわからない感慨のようなものがある。
魔法学園の屋上は、まぁちょっといろいろとお話を通しておけば出てこれる。
そこでだらっとするのが――ずいぶん前の人生からの、ボクとストックのお気に入りで。
たびたび出入りするから綺麗にしてある柵に寄りかかって、地上を眺めるこの時間が、割と好きだ。
初夏の日差しが少々強いが、まだ過ごしやすい。
「…………また学生することに、なるとはな」
ストックが気怠げだ。
やっぱりその制服姿、君は似合うねぇ。
「二度……いや、三度目か。
でも、ちたぁ勉強も楽しくなったろ?」
「記憶はあるが、私の感覚としては二度目だな。
勉強も、高等部にあがってからの研究への準備も、そりゃ楽しいさ。
いや……」
ストックが、手を伸ばしてボクの顎を撫でる。
「お前とする、すべてが楽しい」
「そういうのはおうちかえってからにしなさい」
「わかった」
そのわかったは、(おうち帰ってからならしてもいいんですねやったー!)わかった、だな?
ボクも君が結構なド変態だというのは、よぉくわかっているとも。
毎夜、どこまでならレギュレーション違反じゃないか試しやがって。
「何か失礼なこと考えてないか?」
「礼は欠いてないよ。昼間っから口に出せることじゃないだけさ」
「では夜に聞かせてもらおう」
ボクの言ったことなら忘れねぇからなぁストック。
絶対後で聞いてくるな。
なら、悶えるくらい、優しく囁いてやろう。
お。
『待ってくれリィンジア!俺にはもう、お前しか!!
あ、ちょ、ビームはまっ、ぎゃああああああ!!』
『『皇子ーーーー!!??』』
「今日のビームだ」
「またか?」
ストックが姿勢を変え、下を見る。
アウラ寮あたりが見えるんだが。
そこで……ラース皇子が、リィンジアにビームを食らっていた。
さすがに必死か。派閥解体どころか、かなり帝国にメスが入るらしいからな。
帝国の発展的解散、来月になったそうだ。
すごい急だけど……どーも王国とか、学園がおこらしいんだよな。
あれだけやらかしたんだから、無理はないけど。
その後に彼らがここにいられるかは、わからんなぁ。
クレッセント側が潰れた以上、もう警戒は必要ない。
いずれ、これまでのやらかしもあって、学園から追放されるだろうな。
ボクの担当でもないし、関係者でもないし、そこは知らん。
対するウィスタリアとリィンジアについては、直に二人の聖女として公表される。
二人の……婚約込みで。
当然その時、皇子は婚約破棄されるわけだ。
笑ってやるのが今から楽しみだ、と二人して言ってやがった。
大丈夫か聖女。いろんな意味で。
まぁいいけどさ。君たちの時間が……ようやく動き出したみたいで。
二人は学生を続けるが、残りの六人は少し別になる。
キリエ、フィリアル、メアリー、サレス、クレア、カレン。
そも今生での立場がないし、事情を知るパンドラでの雇用方向だ。
前世の記憶や蓄積があるから、学びさえすれば生きるのには問題ない。
でもあんまりボクを上に見るのはやめて?
ウィスタリアも、それに乗じてボクに押し付けようとするのはやめよう??
立場と言えば……もう二人。
ソレイとカンナ。早々に体を作って、ロザリオとブローチから追い出した。
うるさくてかなわなかったので。
この二人はもう、社会・常識とかその辺から学ばねばならない。
実はちょっとした課題があるんだが……それはまた、落ち着いてから、だな。
なので、エリアル様にひとまずポイした。
そのエリアル様は、あのクラソーとまだ交際を続けているそうなのだが。
クラソーと、契約してるサクラさんが、パンドラに出入りするようになった。
今まで無役だったスノーが、パンドラの顧問として名を連ねるらしく。その部下として。
たまに口説かれる。お獣様に。そしてエリアル様もサクラさんに口説かれ、よく修羅場っている。
早くしっかりしないと、エリアル様がそのうち「三人で!」とかわけわからんこと言い出すぞ?勘だが。
頑張れよ、クラソー。
ディックは……クラソーの代わり?となったらしい。
詳しいことは聞かされていない。
そういやクラソーは、ストックの前の時間での部下・ラリーアラウンドと行動を共にしていたはずだが。
彼らと一緒にいる、ということだろうか。
……そりゃあ、より手強くなりそうだな。敵にならないことを祈ろう。
「そういやあそこの……ウォン家だったか?あの兄弟。
あれは、何がどうしてああなったんだ?」
「んー?」
ハラード・ウォンとアシャード・ウォンが、センカとフィラに付き従っている。
なぜかフィラが、来年から会長になるって息巻いてるんだよね、生徒会の。
それで二人を引きずりまわしてる、らしい。ハラードは現役生徒会長だし。
しかしフィラ。初等部にいろいろあって滑り込めたばっかりなのに。なんでや。
まぁ彼らを真人間にせよ、と言ったのはボクだが。
その道筋の一環として、考えがあるんだろう。
「二人の要望」
「よくわからんな……」
それをボクに言われても。
なお、学園考査更改前……7の月以前であれば、試験を受けての即入学が可能だ。
授業は遅れての入学なわけだが、今年は前期半分休校だったからね。
なので頑張ってすぐに入ってきたフィラには、あまり影響がない。
今は魔道具科で、センカと一緒に魔道具作りを学んでいる。
なおセンカは無事ご両親と再会でき、最近は元気いっぱいだ。
人形の量産にも気合いが入っているようで……あれ、どうしよう。
置物にしとくの、もったいないんだけど。さすがになかなか、使い道がないなぁ。
彼女たちの少し後ろを歩いているオリーブとリコも、フィラ生徒会に入るとかなんとか。
いいんかね?なんか。パンドラが牛耳ってるみたいになるが。
しかも生徒会業務、それなりにあるぞ。リコはともかく、オリーブは忙しかろうに。
オリーブは魔道具技師としての歴は長いが、今はアリサにいろいろ教わっている。
医者は他に適任がいなかったのでボクだ。
リコの多発魔結化症、自身の過魔力化症、フィラのメンテナンス。
彼女が取り込んでいるテーマは多い。
なお、オリーブの実家のカワーク社には、一度彼女の近況を報せに行ったが。
「そんなことより次の開発はまだか」と言われた。
ほんとは酒が飲める年になってからしたいが、そこまで言うならなんか考えてみるか。
リコの方は、正式に共和国常任議員辞職の方向で動いているらしい。
そして忍一門・箒衆忍頭の後継人員も、もう見つかったそうで。
その子は今、彼女の実家・ロール家で修行中だとか。
それがどうも……ゲーム『揺り籠から墓場まで2』の悪役令嬢の子らしいんだよ。
帝国の、エンヴィー・クレードル。王国に協力的な、穏健派の皇女。
何がどうなってそうなったって気もするが、ビオラ様あたりの手回しかなぁ。
なお、同じ作品のヒロインについては、ダリアの義理の妹になることが決まっている。
まだだいぶ幼いはずなんだが、彼女の方からソラン王子を口説き落としたとかなんとか。
恐ろしい。中身が転生者ってことはないはず、だが。ないよね?
ああそうそう。話は変わるがね。
あの休園はね、やはり学園所属の人たちが自由に動ける期間を作るため、だったらしいよ?
いろんなところに伝手があるからねぇ。結果として、様々なことが特急で進んだらしい。
少し、その「様々」の具体的になったものを、振り返る。
皇子とウォン家、両方に関係あるんだけど。
来月、もう一つビッグイベントがある。
ロード共和国と、ウィスタリア聖国の段階的併合の発表だ。
もちろん、二人の聖女――――今、大柄な子をまたぶん投げたやつと、その伴侶のお披露目もある。
大丈夫だろうか、あれを聖女だと公表して。
いや、共和国経典通りの記述に近いし、大丈夫か??
聖国内の、呪いの信奉者たち。
共和国内に入り込んでいた、工作員たち。
これが一掃できたため、話が急速に進んでいる。
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