Z-6.同。~故郷に帰ろう。君と一緒に、生きていきたいから~【ハイディ視点】
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~~~~過去のボクの思惑は、正直はっきりしないけどね。でも君はストックだ。それは確かだよ。
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「まぁ言われて見れば、そう、か。
なんとまぁ」
なお余談だが。あのファーストキスの最中に、ちょっとした施術をしている。
ストックも、魔素を持ちだせるように。
それをしてなかったら……この子は向こうの記憶を、失っていたかもしれない。
ボクが、ストックが地球に戻されるときにそばにいようとしたのは、そのためだ。
たぶんだけど、地球から半島の時は問題ないけど。
半島から地球への転生時は、普通は魔素の持ち出しができないから、記憶消えるんじゃねぇかなぁ。
ストックは何の措置もなく、竜胆の記憶は覚えていたわけで。
でも、一度目。半島から地球に渡ったことは……覚えている様子がない。
勘だけど。あのコンクパールで一度、地球に転生してるんじゃねぇかなぁ。
半島でリィンジアとして生を受け、ストックになり、コンクパールでボクと死んで。
使命を帯びて、地球に転生。竜胆として生まれ、サーバーを建てて。
再度、コンクパールに転生してきた、と。
さっきの神器の話に、矛盾ができそうだけど。
むしろ、地球でのサーバー建てによって、半島の状況が上書きされた、とか……ありそうな話だが。
あのとんでも存在が、逆輸入されるくらいだからなぁ。
上書きされた結果、半島には「神器があった」ことになり。
ボクらはそれを研究。フェニックスを作り……そのおかげで、あの山でストックは復活。
だからそこに再度転生できた、とか。
でなかったら、あんな半端なとこに戻るんじゃなく、赤子からやり直しだろう、普通。
結局使命は全然果たせず、時間を遡ってるわけだしさ。
目的から逆算すると、あの山の続きに転生するのは、まったくの無意味だ。
記憶が上塗りされるのは、娘たちに関することで経験済みだしな。
そういうことが起こらないとは、言い切れない。
確証はまったくないし、ここまでくると与太話だけどね。
「嫌かね?あちらが故郷というのは」
「ハイディはどうだ」
「素敵だと思ってるよ。
こっちも悪かないが。
偶然呼び寄せた何かが、世界を救ったっていうより。
必死の抵抗と執念が実を結んだってほうが、ドラマチックだろう?」
「確かに。私もそちらの方が好みだ」
んむ。趣味が合うようで善き哉。
「納得いったようで何よりだ。
ではそろそろ」
ストックが、床から身を起こして。
ボクも、椅子から立ち上がって。
…………なんで抱きしめられたし。
「ラーメン屋の前に、だな」
「なんでそんなになってるんだよ?」
「いやだって。ハイディがハイディだし。いい女過ぎる。
その上、帰ったら我々は……12?13?」
いやボクがボクだから、って言われてもだな。
どういうことだそりゃ。何がよかったんだまったく。
だが年に関しては、まぁわかったよ。しばらく何もできないね。
向こうじゃ未成年の我々は、いやらしいのはNGだ。
「12だな。あと二年半くらいお預けだ」
「頑張って耐えるから、今のうちにハイディ分を補給させてほしい。
とくにその。キスを、所望する」
なんだ、72時間耐久がお望みか?
……しかし。そりゃお互い様だよ、ストック。
こっちじゃ、赤ちゃんはできないけど。
滅茶苦茶にしてね。
そっと頭を撫でる。
「ん。そうしようか。帰りたくないとか、言うなよ?」
「帰りたいさ。残してきたものが、さすがにちょっと多いし。
それに……この国では、お前と結ばれるのも難しかった」
「そうだな。国籍変えて、他所いかないと無理だ」
僕らは性別違和を抱えてるわけじゃ、ないからな。
どちらかが男性に変わるという選択肢は、ない。
ボクは女で、女性のストックが好きだし。
ストックも、女性として女のボクが好きだ。
男になっちゃったら、本末転倒だよ。
気持ち的には、男女どっちでもいいとは思ってるよ?
でもやっぱり、ストックは綺麗で可愛くてかっこよくなくっちゃ。
…………男性になっても、変わらないような気もするけど。
まぁ、あまりそこの歪みを解消するために、性を変えるのはよくなかろ。
別の違和を抱えて、思わぬ後悔をしそうだし。
「子どもも、厳しい」
「養子ならいけなくもないが、同性カップルじゃ認められにくいところだろう。
やっぱり外国に行った方が早い」
「何年かかるかわからん。帰った方が早い」
「向こうでも、お子さんは6年近く我慢になるぞ?」
……こら、どうした。
体ぴったり、くっつけ過ぎだって。
「我慢するから……その分、その。
そのとき、には」
…………そう求められるのは。悪い気は、しないね。
だめだなぁこれ。ボクも我慢できないや。
今日のラーメンは、ちょっと夜更けになるかな。
「そうだな。まず君の番。それからボクだ。ふふ」
かつて向こうで相談したように。
まずストックから、子を設けてもらわないといけない。
ボクはその次だ。
まぁでも、双子もうおるし……あと一人くらいでいいかなぁ、ボクは。
周りの助力があろうとも、子育てはやっぱり大変だからね。
双子込み、年子で4人も育てたボクのかーちゃんはすげぇわ。
いやさすがに王妃だし、手厚い助力があったとは思うけどね?
おっと。
……ボクの肩に、髪に、ストックが顔をうずめてきた。
その耳が、真っ赤になっていく。
何を想像してるんだ、やらしい子め。
かわいい。
「そ、そういえば!その。どうやって、作るんだ?」
急にどうした。
まぁ気になるのはわからんでもないが。
「んんー?なんだ、知りたいのか」
「そ、それは知りたいとも。
こう、こっちでのアレな感じの、内容とかと……」
あー……。
まぁ綺麗な子が睦み合うフィクションが、あるなぁ?
だが内緒だ。断固黙秘する。
「さぁ?どうだろうな。
ちゃんと6年経ったら教えてあげるよ」
「っ。やっぱりハイディ、知ってるのか!」
「そりゃ、孕まされた記憶があるもんよ。
ストックのえっち」
「~~~~」
こら、体すりすりすんなし。かき抱くなもー。
それなりのお年になっちゃったけど。
君はいつまでも、本当にかわいいね?ストック。
年っていうと、ボクらもう中身はだいぶアレよな……。
あんまりそこに、引きずられないほうがいいだろうけど。
何せ戻ったらまだ12で、学生の続きだ。自分の年を考えたら、羞恥で死ぬ。
よし、考えるのを止めよう。前向きに行こう。
そっと彼女の、さらっとした髪を撫でながら。
「行こう、ストック。
まず休めるところを探しに、ね?」
こくこく無言でうなずく彼女から、身を離し。
改めて、その手をとって。
そうしてボクとストックは。
研究所を引き払って、また旅に出た。
旅がとってもハードで、超!エキサイティン!なものだったことは。
本題に関係ないので、そっと忘れておくとしよう。
さよなら、地球。
ただいま――――我らが故郷。
ちょっと時間が、かかったけど。
ちゃんと二人で、帰って来たよ。
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――――ふふ。いい旅だったかい?ストック。
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