Z-4.同。~帰り道の確認~【ハイディ視点】

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~~~~地球での旅行は、向こうより毎回スリリングだ。映画が何本作れるか、わかったものじゃない。


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「あーそういえば……具体的にはどう帰るんだ?


 目印の魔素があればいい、という話だったが」



 おや?そういや説明……いやしたぞ。聞いてなかったなこいつ。



 ああわかった。


 きっと帰れないと思って、聞き流してやがったな?



 ボクとストックは、ロザリオの首飾りと、青いブローチをしている。


 ボクたち自身がイメージしやすい形で……ここに自分の魔素を生成している。


 研究の過程で、生成方法自体がわかったので、それを自力再現してるんだよね。



 生成にはコツはあるが、別に機器なんかは必要ないんだよ。人間が身一つでできる。


 ちょっとオカルト染みてるけど、ちゃんと現象としては研究し尽くし、存在は証明してある。



 魔力化までは辿り着かなかったけど、それは地球の人たちで頑張ってほしい。


 というか、魔素の魔力化は向こうでもはっきりわかってないからな。


 帰ったらやってみようかしら。



「こいつを目印に、あるものが道をずっと作ってきてる。


 遠い宇宙を隔てて、あの世界から」


「おいまさか……」


「ピコマシンだ」



 ボクが作った、ナノ単位より小さな、神器。


 マリーの魔力流制御を解析しきり、操作できるようにした代物。


 そいつら自身に自己生産機能があり、増殖しながら命令に従い、今地球を目指している。



 門を応用し、ボクのスマッシュの光速移動を真似て、結構な速度で飛んできてるんだよ。


 ボクらの魔素を目指して。



 んで、ボクらが帰ったら「道」になってる分は自壊する。



 なお今更だが、人間大の物体が光速移動なんてしたら、この地球なら滅んでしまうが。


 向こうは魔素による不思議移動だから、大丈夫だ。


 自分で解析した結果、魔力流の質量転送と近い現象だとわかっている。



「あれが到達したら、道ができる。


 向こう側の『目印』とこちら側の『目印』を結ぶ形でな」


「向こう側の……腕輪か?


 いやまて。ピコマシンの動力はどうなってる」



 おや気づかれた。



「そりゃボクだ」


「え。おい。いつか言っていた通り、本当にお前を……まさか。


 フィラにやったように、体を、別の」


「そ。神器体を作ってね。


 最後に君とキスをしたのは、生身じゃないってわけさ」


「んがあああああああああああああ!!??」



 そして情緒がお壊れになった。



 ボクの生身の肉体を、あちらに残しておく。


 帰る場所を示す、この上ない目印になるだろう?


 時間、空間の特定に使え、ピコマシンの動力源にもなる。



 ピコマシンは神器だから、結晶出力が原資なんだよ。


 つまりボクの体「が」要る。



「……はぁ。なんてこった」


「ふふ。でもこれで、あっちのファーストキスはノーカンってことだ。


 ちゃんと初めては」


「ああ……だが」



 すっと。


 唇を、重ねられた。



「15になったその日に、とはもう言わない。


 帰って早々、必ず頂く。


 お前は。ハイディは。


 私のものだ」



 その間近な赤い瞳に。


 あの、5つの誕生日が。


 君に陥落させられた日が、見える。



 またボクが、君に堕ちていく。



 年を重ねれば重ねるほど、君はかっこよく――――



「じゃあそのファーストキスが、たまらないものになるように。


 今のうちに、キスでもっととっろとろになれるように、しようか」


「しっ!?今以上に!!??死ぬ!私死ぬぞ幸せで!!


 というか体力がもたん!!」


「体力お化けの君が何を言うんだね?


 やろうよ」



 そっと耳元に口を寄せて。



 ――――72時間、耐久ディープキス。



 ささやいた。



「ふぁあああああああああああああああああ!!」



 とてもかわいくなったね。



 ひとしきり痙攣してから身を離したストックが、呼吸を整えている。



「ふぅ、はぁ。


 は。話を、戻すが。


 あとは迎え……迎えに来るのは、シフォリアか」


「ん。あの子には目印を辿れるように、教えてある。


 その通りに斬ってもらえれば、時空間をつなぐ」



 シフォリアの技があったのは、僥倖だった。


 なければ、もう一つ何か手段を講じなければならなかった。


 まぁ向こうには準備があるけど……こっち側がなぁ。



 いずれかの魔導くらいは、なんとか起動できるように研究が必要だったろう。


 つまり、魔素の魔力化研究だ。何年かかるかわからん。



 時空間を渡るから、向こうに帰れば同じなんだけど。


 時間をかけ過ぎると、こっちで何か起こらないとも限らない。


 病気なんかになってしまったら、たまったものではない。



 帰るのは、早いほうがいい。



「我々はもう結構な年だが?」



 確かに、このまま帰ったらちょっといろいろ大変だが。



「向こう側は、ボクらが消えた直後くらいだ。


 そことつながるので、あちらの法則……精霊の力に従って。


 彼らの認識に合った状態に戻されると見ている」



 クエルとシフォリアの出現したときが、そうだったわけで。


 彼女たちは実年齢より、数年若い姿で出て来た。


 キーになるのは、精霊が認識している、当人の年齢。



 ボクとストックは、金の精霊アウラの化身である、ウィスタリアとリィンジアに認識されている。


 だから向こうで最後に彼女たちと別れたところが、時間起点になる。


 そのために、あの決戦では彼女たちとの融合体で戦いたかったんだよね。



 直後くらいに、ストックが帰ることになるだろうと踏んでいたから。



 で、ボクは生身の体が向こうにあるから、それとの融合だろう。


 ストックは消えちゃったが、これに関してはストックがあちらに行った時と同じことになるだろうな。



「ちょっと渡る前に簡単な実験するけど、それで確認可能じゃないかな。


 魔素って不思議存在が、だいたいなんとかしてくれる」



 何せ、こっち飛んできたボクが、赤子になったからな。


 逆だってちゃんと都合がつくんだろ。



 魔素については自分で研究しといて、不思議存在呼ばわりもよろしくはないが。


 そうとしか言いようがないんだから、しょうがない。



 まぁ並べ立てると、だいぶガバガバな気がするが。


 そもそれを言うなら、ボクがどうやってここに来たんだよ?


 というところから、議論を始めなくてはならない。



 あのくらいガバでも来れるんだから、帰りだって大丈夫さ。


 我らには精霊の加護がある。

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