6-2.同。~冒険者ギルドは王国固有・国管理下の準軍事組織です~
「ん。ところでハイディ、そこはどうだ?」
ストックが少し身を乗り出して、窓の外を見てる。
通りの左側にある建物だな。INNの看板が見える。
「んん?珍しい感じのとこだね。ストック、駐車場は空いてそう?」
「空きはありそうだ。少し寄せて停めてくれるか。聞いてこよう」
「わかった」
近くに寄せて、クルマを止める。
一階部分が駐車場になっている、二階建て。宿としちゃあ珍しい作りだ。
厩舎とか馬車置き場のついでに、駐車場があるものなんだけど。
ここは、駐車場しかなさそう。すでに何台かとまっているが、まだだいぶ空きがある。
普通、こういうところは宿の奥側に庭があって、そこに厩舎とかがあるんだよね。
奥行のない土地ってわけでもなさそうなんだけど。何だろう。
ストックは車を降りると、建物の表にある階段を上って、二階に上がっていった。
一階は駐車場しか見当たらないので、二階が受付だろうか。
しばし待つと、ストックが戻ってきた。
外装を叩かれたのが聞こえたので、助手席側の窓を開ける。
「空いてる。停めてきてくれ。
スペースの番号があるから、それを覚えておくようにとのことだ」
「ありがとう。ちょっと待ってて」
7番に停めて、表に出ると、階段の上にストックがいた。
ボクも階段を登って追いつく。
彼女が扉を開けてくれたので、中に入った。
扉は建物全体からすると向かって左隅くらいだったが……入るとすぐに受付と思しきカウンターがあった。
左壁側がそのカウンター。右手はホール……食事処になっているようだ。今は午後遅くだが、結構人がいる。
右手奥の壁には何か、大きな掲示板らしきものがある。
天井は少し高くて余裕がある。
正面奥にはいくつか扉がある。そのうち右手の方は厨房かな?給仕の人が出てきた。
「ハイディ、クルマは」
「ああ。7番に停めたよ」
「クルマを止めたので、受付願います」
ストックがカウンター向こうの女性に話しかけた。
ん?あの制服、見覚えがあるような……。
「はい。こちらに記帳を。タグを確認させていただけますか?」
「こちらを」
「……確かに」
ここ冒険者ギルドやんけ!?
冒険者は、魔物の眷属退治依頼を中軸に行う、武装何でも屋。
こういう人たちは半島中どこにでもいるけど、冒険者ギルド、と言ったら王国行政。
エングレイブ王国国防省の、下部武装組織だ。よその国にはない。
他の国には、行政の業務補助をしてくれる、精霊ウィスプなんて便利なものはないからね。
冒険者ギルド支部は王国各街にはだいたいあると聞く。
どこもこういう、食事処や宿を兼ねた建物らしい。
そして王国の冒険者はギルドに所属し、依頼を請け負う形で日銭を稼いでいたりする。
冒険者の仕事は危険な分、稼ぎは悪くない。
ダンジョンにも潜ったりするが、魔物は貴族が倒すから、眷属間引きだけが仕事だ。
どのみち、ダンジョンの浅層には魔物は滅多に出ないしね。
あとは街の困りごとなんかを引き受けてるんじゃなかったかな?
この辺は縁がなくて、あまりやったことがない。
「ご記帳ありがとうございます。ストック様と、ハイディ様ですね。
お部屋はどちらになさいますか?」
「こちらで。前払い分はこれで大丈夫ですか?」
「はい」
ストックと受付さんの間で、やりとりが進む。
それしても四歳児……なんで冒険者タグを持ってる。
タグ……冒険者証は金属の首飾りだ。小さな板がついていて、その部分が身分証になってる。
表に名前。裏には1~3本の線が刻み込まれる。金属の種類と傷の数でランクが変わる。
また、板の中心に小さい丸い結晶があって、実は記録魔道具の類なんだそうな。
で、ランクは10段階で表現されている。
初級はタグがない。そりゃこんな魔道具紛失されたら困るしね。
そこからブロンズ1~3、シルバー1~3、ゴールド1~3と続く10段階。
初回発行は無料だが、再発行はお金がかかる。
初級は冒険者登録手続きをして、依頼を達成したらブロンズの1がすぐもらえる。
1~3は規定の回数・質の依頼達成で上がり、色が変わるときは昇格試験がある。
前のときはボクもタグ持ってたんだけどね。王国内で活動するのに便利だったから。
学園から王都には出られないけど、クレッセントが王国周辺を航行しているときに、入国してやってたりした。
いろいろ便利な仕組みで重宝した。王国限定だから、他の国ではむしろ苦労したなぁ。
今回はどう考えても王国で暮らすことが多いし、必要があれば持つけど。
……普通4歳では無理やない?
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