Bパート.友達との再会~ミスティとメリア~
6.西方領モンストン東端、領都。近郊ダンジョンへ。
モンストン領の放射道――中央の王都から、外縁部の国境へ伸びている道には、いくつかの街がある。
貴族の治めていない、宿場町もあるが……三つの環状道の交差には、大きな街が築かれている。
ここはその一つ。領都モンストン。
内環道と放射道の交差にある、モンストン領で国中央の王都に最も近い街だ。
南門で検めを受けて――この領の侯爵令嬢が乗っているので、素通しとなった。
話も行ってたらしい。面倒がなくて何よりだ。
今日は一泊し、明日西門から出る予定だ。
街の中心は混むそうなので、途中で中央の通りから左折して、環状の道に入った。
馬車も通るし、人も割といるので、ゆっくりと進む。
モンストン領はあと、中環道との交差にパールという街があって、外環道は領端近くなので、シャドウだ。
両方とも、確か伯爵家の治める街だったとは思う。
旅程については、今日はこのモンストンで一泊。明日はパールに向かうが、たぶんその前の宿場町までだろう。
その後、パール、また宿場、そしてシャドウという流れだろうな。都合、五泊くらいか?
急げば一日で走破できるんだが、せっかくだから領内を見せたいというので、お嬢様の勧めに従うことにした。
……おまちを。ならなぜ今、実家に案内されてないんだ。
ボクもあんまり詳しくはないが、確か街の中央付近に領主の本邸があるもんじゃなかったか?
ニキスは領都に寄らなかったからわからないが、ファイアはそうだったぞ。
「ストック。今日はどこに泊まるの?」
「西門側で宿を探そう。駐車場があるようなところは、埋まりづらい。
多少高いが、そこで見繕おう」
やっぱり実家に泊まる気がねぇし。
なお、路銀はストックが持ってる。
子どものお小遣いレベルではないが、どっかで稼いできたんだろうか。
必要ならともかく、あまり人の施しを喜ぶ子ではない。
「…………実家に行かないのはなぜだね」
「家族は誰もいないしな。お父さまは王都だし、お母さまはドーンだ。
お兄さまも王都の宿舎でな。国防省に入ってる」
じゃあここの屋敷は空やんけ。
「当家の執事頭はいるがね」
「なおのことお嬢様が使わなくてどうする」
「屋敷だとさすがにどこに行っても使用人がいるが、聞かせたいのか?」
「何を聞かせる気だよ……。
なるほど。落ち着かないんだな。わかったよ」
「肩が凝るほどではないが、私もこっちの方が気楽だ」
学園じゃ、いつもあんなに完璧なお嬢様だったのにな。
今は野生の四歳児を謳歌しすぎて、ぐんにゃりくつろいでる。
神器車は基本的に外から中は見えないけど、それにしたってはしたない。脚開き過ぎだぞお嬢様。
おっとそうだ。四歳と言えば。
「ストック。来月3の日はどうする?」
「どうするって……」
「ボクと君の誕生日だよ。旅程としては、ドーンに入った後だけど」
ボクらは同じ誕生日。6の月3の日生まれだ。
「誕生日なんて、祝うことのほうが少ないから忘れていたよ。
なら、3の日にドーンのお母さまのところを、旅のゴールするという方向で」
「その心は?」
「この旅が祝いだ。誕生日当日までしっかり使って、楽しくやろう」
ほんと、楽しそうな顔しよって。
話しながら環状通りから左折し、直線に入る。
真っ直ぐ進めば、そのうち西門だ。
西寄りはなるほど、宿が多そうだ。
「じゃあモンストン領のうまいものを、しっかり食べていくとしよう。
でもここ、名産なんだっけ?」
「高いぞ?魔物の加工肉だからな」
「ん……おいしいけど高いな。一食くらいにするか」
魔物肉は、獣肉と違って複雑な味がする。魔物ごとにも味が違う。
そしておいしい。高い。加工品が贈答用に売られていたりする。
庶民でもお金を払えば買えるので、手に入らないわけではないが……食卓には上らんな。
「パールかシャドウなら、イスターン寄りの文化が入ってる。
そこでゆっくりお茶するというのはどうだ?」
「いいね。連邦式の茶会は経験がない」
イスターンは……地球で言うところの、イギリスってとこにちょっと文化が近い。いや、日本か?
島国ってわけじゃないんだけど孤立した領土で、文化が独特。
飯には異常なほど執着してる感じはある。長期休暇が楽しみだ。
「あとちょっと文句言いたいんだけど」
「なんだ?」
「ボクは学園にいる間、君のお祝いを欠かせたことはないだろ。
誕生日、忘れんなよ」
君自身のもそうだけど。
ボクのを忘れるんじゃねぇ。
そこはボク、文句言っても許されると思う。
「いつもお前が言い出すから、自分で覚えられないんだよ。
だがいつまでもそれは不甲斐ないな……来年は少し、準備でもしてみるか」
「楽しみにしておくよ」
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