第25話 巨大な物体

2038年10月7日 3時01分頃 とある媒体に録音された人間同士の会話にて:


「カノス大統領、緊急です!今すぐ起きてください!」

「夜中にいきなりなんだ……?」

「地球外に巨大な物体が出現したんです!」

「どうせUFOだろ?具体的な大きさはともかく、珍しくもない」

「UFOかもしれませんが、あまりにも大きすぎて……」

「どれぐらい大きいんだ?」

「正確なサイズは不明ですが、地球より大きいことは確かです」

「嘘をつくなら、もっと上手く考えてくれ」

「それなら、私と一緒に外を一緒に見てください。いきますよ?せーの……」

「空に浮かんで見える、あれがそうなのか……?」

「はい。カノス大統領の言う通りです」

「分かった。大臣たちを大至急、ここに集めてくれ。1人残らずだ」



2038年10月7日 7時16分頃 とある動画サイト上の動画にて:


「どうですかね?空に浮かぶ巨大UFOを、僕が掴んでいるように見えるんじゃないでしょうか。高評価の方たくさんもらえたら、口の中に入っていくUFOの動画も撮るので、是非よろしくお願いします!」



2038年10月8日 19時35分頃 とあるメディアのニュースにて:


「空に突然現れた、正体不明の物体。それを利用して撮った写真や動画を、ネット上で公開している多くの人々が、今、炎上の渦中にいます。人々が興味を持つはずのネタを日々、発信していた投稿者たち。彼らは、なぜ、炎上しているのか。SNSに投稿された人々の呟きから、その原因に迫っていきます。それではまず、幾つかの呟きを例として取り上げます」


【ウケを狙ったコンテンツを面白く見られるのは、自分に危機感がないときだけ。彼らには、それが決定的に不足している】


【こんな時でも、人々の注目を集めたいのか?今は、どうすれば人類が滅亡を回避できるのか、真剣に議論し合う方がよっぽど重要だろ】



2038年10月9日 8時22分頃 とある媒体に録音された人間たちの会話にて:


「SNSで、色んな人間が炎上している」

「普段なら有難いんだが、今回は、そうもいかない」

「あの物体に対して、どう対応するかという問題もありますし」

「そして、あれが単なる巨大UFOに過ぎないのか、それとも、人類を滅ぼすゼロ・トリガーなのか。我々には、確かめる術がない」



2038年10月9日 17時56分頃 とある人間同士の音声通話にて:


「空に浮かぶ物体はなんだと思う?」

「私が思うに、ゼロ・トリガーでしょうね」

「なら、人類が滅亡するほどの、大規模攻撃を仕掛けられる前に、先制攻撃で、あれを破壊した方が良さそうだ」

「そんなことできるんですか?あれは、宇宙空間にあるんですよ」

「ほとんど不可能に近いが、やってみるしかない」

「何を使うんです?」

「一点集中照射型システムKL-Iと、多方面同時照射型システムKL-IIを使う」

「他に方法はないんですか?」

「他の国のところなら有るかもしれないが、うちは無い」

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