第23話 犯人複数説
2038年9月23日 7時50分頃 とある動画サイト上の動画にて:
「これは、現場にいた人が撮影していた映像なんですが、青年が複数回にわたって、オルムの大統領に銃弾を発砲したあと、周りにいる人間の注意が一斉に、そちらの方向に向いています。しかし直後に、別の方向から飛んできた黒い物体がオルムの大統領に命中し、現場は混乱しながらも青年を取り押さえています。これが何を意味しているのか分かりますか。青年は、この事件における囮役だったんです」
2038年9月23日 10時19分頃 とある媒体に録音された人間同士の会話にて:
「手短に答えろ。あんたの名前は?」
「ピン・ファイズ」
「なぜ、オルムの大統領の命を狙った?」
「国民を戦争に巻き込んだからだ」
「いつから、誰と計画していた?」
「10日くらい前からの計画だが、仲間はいない」
「あんたが撃った銃弾は2発。そうだよな?」
「そうだ」
「だが、別方向からの銃弾もあった」
「それは気づかなかった。周りが煩かったからな」
「で、仲間は誰だ?名前を言え」
「さっきも言ったが、俺に仲間はいない。単独犯だ」
「お前が、この事件の囮役なのは明らかだぞ」
「家族のいない俺が、囮役をやって何のメリットがある?」
2038年9月23日 11時35分頃 とある媒体に録音された人間同士の会話にて:
「容疑者の男がついに動機を話した」
「それはご苦労だった。共犯者がいたことについては認めたか?」
「いいや。あくまでも自分は単独の実行犯だと……」
「そんなはずはない。もう1度、事情聴取しろ」
「はい、再度やってみます」
2038年9月24日 8時54分頃 とあるメディアのニュースにて:
「オルムの大統領を襲った3発の銃弾のうち2発は、事件翌日の現場検証により、青年が持っていた、銃の中に入っていた銃弾と一致していることが判明しています。ですが、残り1発の銃弾は、未だに見つかっていません。『魔法の銃弾』とも言われ始めた、この銃弾は一体、どこにあるのでしょうか?」
2038年9月24日 18時32分頃 とある人間の会見映像にて:
「オルムの大統領を銃撃した容疑者の男に対して、複数回に渡る事情聴取を行いましたが、新たな証拠を得ることはできませんでした。今後は、捜査対象を拡大し、容疑者に共犯者がいたという仮説と、容疑者とは無関係の銃撃犯がいたという仮説の2つを検証しながら、事件の全容解明に向けて、全力を尽くしてまいります」
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