第19話 戦争危機
2038年8月23日 9時42分頃 とある媒体に録音された人間たちの会話にて:
「今回の議題だが、お前たちは分かっているよな?」
「もちろんです。そのために、各国を代表する人間が呼ばれたのでしょう?」
「そういうことだ。我々は今から、天然資源を先進国に輸出するかどうかの判断を下すため、話し合わなくてはならない」
「でも、それと同時に結論を急ぐ必要がありますね」
「一時的とはいえ、輸出量を国際価格の高値安定のために、減らしていますから」
「しかし、先進国の要請通りに天然資源を輸出すると、軍事強化に使われる可能性が捨てきれません」
「とは言え、天然資源の輸出先は、ほとんどが先進国。それを止めるとなると、そこに経済の大部分を頼っている私どもの国では、大きな経済損失が……」
「お前たちの考えは分かった。メリットとリスクを比較したうえで、結論を出そう」
2038年8月23日 10時17分頃 とあるSNSの動画にて:
「サリージャが天然資源の輸出を止めてから、新たな対立の火種が生まれたかもしれない。これが間違いであることを、心から願うばかりだ」
2038年8月25日 17時36分頃 とあるメディアのニュースにて:
「天然資源国機構で知られる国際組織は先日、現時点での天然資源の輸出増加は行わないと発表しました。背景には、大規模な軍事強化を実行している、各先進国の存在がある模様です。これにより、世界的な天然資源不足に陥っている多くの国々は、さらなる苦境を迎えることになりそうです」
2038年8月29日 15時28分頃 とある媒体に録音された人間たちの会話にて:
「このままでは、国民生活に影響が出てしまう」
「天然資源国機構への働きかけは、どうなっている?」
「ダメだ。交渉の席に着く気すらない」
「では、私たちも、それなりの覚悟を決めなければならないようですね」
「覚悟?一体、何の覚悟だ?」
「他国に対して戦争をする覚悟のことです」
「ゼロ・トリガーへの対抗と生活防衛を両立するには、それしかない……」
「決議に移ります。戦争に賛成の方は右手を、反対の方は左手を上げてください。はい、降ろして大丈夫です。結果は、賛成多数で、戦争という手段に踏み切ることが決まりました。皆さん、本日は、お集まりいただきありがとうございました。準備のできた方から、退室して結構です」
2038年8月29日 16時33分頃 とある媒体に録音された人間同士の会話にて:
「お願いです!お願いですから、戦争という手段だけは止めてください!」
「それがどういうことか、分かったうえで言っているのか?」
「もっと平和的な解決の道を……!」
「フォーリーよ、良いかね?武力行使に出なければ、事態が改善しない事だってある。これは、私たちの国の未来を左右する重要な局面なんだよ」
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