第18話 各国の思惑

2038年8月14日 11時27分頃 とある媒体に録音された人間たちの会話にて:


「サリージャが天然資源の輸出を止めたから、国際価格が高騰している」

「他の国々と交渉して、必要分を確保するしかありませんね」

「可能な限り安い価格で、輸入したい」

「それなら、すぐにでも動き出したいところね」

「しかし、幾つかの国々は、反ウェルツを掲げているから、除外せねばな」

「そうなると、天然資源を海外に売っている国々のうち、選択肢として残るのは5か国程度。シェア率10%以上という条件を加えれば、2か国になる」

「厳しいね。でも、何とかするしかない」

「そうだな。多少高くなっても、十分な量を売ってくれるなら構わない」



2038年8月16日 08時54分頃 とある媒体に録音された人間同士の会話にて:


「天然資源の争奪戦が始まっている」

「聞いたよ。世界的に天然資源が不足しているんだって?」

「そうらしい。サリージャは、世界第2位の天然資源供給国だからな」

「ウェルツ辺りは、大変なんじゃない?」

「あり得る。だが今は、ディードルのことだけ考えてくれ」

「心配はいらない。うちの国は輸出していないだけで、意外に天然資源が取れるし、最悪の場合、代替資源への切り替えだって出来る」

「それでも、天然資源の不足が長期間続いたら、耐えるだけの余力はないぞ」

「その時は奪えばいいさ。他に手段はない」



2038年8月20日 13時40分頃 とある媒体に録音された人間同士の会話にて:



「各国から、天然資源の輸出増加の要請が来ています」

「そうか。特に熱心なのは、どこの国だ?」

「何度も要請があるのは、ジェナニス、バーンボノワール、そしてウェルツです」

「ウェルツか。あの国は、我々に大きな借りがある。高めの価格で売れ」

「他の国々は、どうします?」

「国際価格を大きく下回ることがなければ、多少安くてもいい」

「分かりました。それでは失礼します」



2038年8月21日 17時09分頃 とある媒体に録音された人間同士の会話にて:



「天然資源の輸入に関して、かなり難航していますね」

「もう8か国には天然資源を、国際価格で買うという意思を伝えている。なのに、どこも即決には至らないとは……」

「多分、何かありますね。なるべく高い値段で売りたいという相手国の思惑か、嫌っているからこそ、後回しにしようという相手国の作戦か」

「ジェナニスが、明確に嫌われる理由など存在するわけがない。そうだろ?」

「いえ、残念ながら1つだけ」

「何だと言うんだ?」

「世界協同連合及び、ゼロ・トリガー専門の国際組織への参加です」

「それがなぜ、天然資源を輸出する国々から、嫌われる原因になるんだ?」

「世界協同連合には、多くの先進国が参加しています。それが協力して、軍事強化を始めたら、どうなります?後進国にとっては脅威でしかありません」

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