第16話 非難の応酬

2038年7月23日 18時13分頃 とある人間の会見映像にて:


「軍事強化に積極的なウェルツこそ、世界の平和を乱しています。他国を名指しで非難するよりも先にまず、自分たちが武力拡大をやめるべきでしょう」



2038年7月25日 10時49分頃 とある人間の会見映像にて:


「軍事強化は、ウェルツが望んだことではありません。これは、停戦合意に至るまでの経緯をまとめた世界協同連合側の公的文書を見れば、分かったはずです。それにも関わらず、サリージャはウィエンを攻撃しました。そんなに、サリージャは、ウェルツと戦争がしたいのですか?」



2038年7月26日 15時57分頃 とある人間の会見映像にて:


「サリージャは、どこよりも強く、世界の平和が実現することを願っています。ウィエンを、我が国が爆撃したというのは事実ではなく、ウェルツによる自作自演によるものです。勝手な推測による言いがかりは止めてください」



2038年7月26日 19時21分頃 とある媒体に録音された人間同士の会話にて:


「サリージャ政府が、ウィエンへの爆撃を否定していたぞ」

「そうせざるを得ないんですよ。やったかどうかに関係なく、非を認めるのは、自分たちのプライドが許さない。独裁政府なんて、そんなものです」

「それなら、今回の再調査結果は、紛れもない事実だと判断して良いんだな」

「もちろん。でも、サリージャへの報復攻撃はやめるべきでしょう」

「なぜだ?国民は、サリージャに対する復讐を期待している」

「サリージャだけでなく、サリージャの同盟国であるズィンボルにまで、戦争参加の大義名分を与えてしまいます」

「う~む。ズィンボルは世界協同連合に属さない、唯一の先進国。それも相手するのは避けたいところだな。だが、どうする?」

「1つ良い案があるんです。首相に、断られるの覚悟で提案してみましょう」



2038年7月31日 22時04分頃 とある媒体に録音された人間同士の会話にて:


「本当に、これでいいのか?」

「ああ、問題ないらしい。でも、きっとニュースになるぞ」

「かもな。だけど、政府幹部が集まって決めたことだから、もう覆せない」

「さて、国民はどんな反応するんだろうな」

「どうだろう。案外、すんなりと受け入れるんじゃないか?」

「まあ結果は、首相の演説が流れた後のお楽しみってとこだろうな」

「ふっ、眠れない夜になりそうだ」



2038年8月1日 09時35分頃 とあるメディアのニュースにて:


「ウェルツのバーハ首相は、『これによる一部の国々との関係悪化は避けられないものになる』と話したうえで、以下のような声明を発表しました」


「ウェルツは、慎重に協議を重ねた結果、サリージャとの国交を断絶することを決定した。これは非常に重い決断ではあるが、サリージャが我が国に行った敵対的行為を考えれば、むしろ当然の結果に他ならない」

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