第14話 軍事強化

2038年6月27日 15時12分頃 とある媒体に録音された人間同士の会話にて:


「あれは何ですか」

「多方面同時照射型システムKL-IIです」

「なるほど。あのシステムを使うと何ができるのかな?」

「1秒間につき、最大50発の高出力レーザー光線を照射できます」

「戦闘機なんかも撃墜できる?」

「もちろん。あれさえ破壊されなければ、国家の防衛は楽に行えます」

「実に頼もしいですね。ちなみに、あれは幾つありますか?」

「現在、2つだけです」

「それはまずいですね。必要な資金を予備費から捻出することを確約しますので、すぐにでも増産を始めてください」



2038年7月2日 16時25分頃 とある人間同士の音声通話にて:


「本当に、停戦交渉に向けた用意が出来ているんだな」

「そうだと言っている。世界協同連合は、戦争なんか望んでいない」

「ならば、身の安全のため、中立国で停戦交渉をしよう」

「分かった。あとで、複数の候補を送っておく。早めの回答を求める」

「届き次第、迅速に回答させていただく。では」



2038年7月10日 11時33分頃 とある媒体に録音された人間たちの会話にて:


「賠償金を払う。武装放棄はしない。それが世界協同連合側の提案か?」

「そうです。合意が得られれば、武器の支援だってします」

「狙いはどこにある?」

「ゼロ・トリガーから人類を守るための、大幅な軍事強化です」

「また、その話か……。なぜ、ゼロ・トリガーというものにそこまで拘る?」

「人類滅亡の危機が、刻一刻と迫っているからです」

「デタラメだ。私は全く信じないぞ」

「問題ありません。今1番大事なのは、停戦交渉に関する合意の事ですから」



2038年7月13日 03時46分頃 とある人間同士の音声通話にて:


「こちら、TT4。予定地点への移動許可を求む」

「TT4、移動を許可する」

「了解。TT4、予定地点に向けて移動を開始」


「こちら、TT4。予定地点へ到達。ターゲットエリアへの爆撃許可を要請」

「TT4、爆撃を許可」

「了解。TT4、ターゲットエリアへの攻撃を開始」



2038年7月13日 09時38分頃 とあるメディアのニュースにて:


「ウェルツ第3の都市ウィエンが、ミサイル爆撃により、壊滅的な被害を受けました。この爆撃を行ったのは、秘密組織NAGを率いるネアノニアとみられています」



2038年7月13日 14時52分頃 とある人間同士の音声通話にて:


「停戦交渉でやっと合意したというのに、我が国を爆撃するとは何事だ」

「大使館の方にも、苦情や抗議の声が届いていますが、私どもの国の軍隊が、爆撃を行ったという事実はございません」

「それなら、違うという証拠を説明してもらおうじゃないか」

「分かりました。我が国の領空内から発射されたから、ネアノニアの軍隊が攻撃したというのが貴方の主張ですが、ポナバナが常に我が国の軍事基地を監視しているので、何かあれば、すぐに警告を知らせる連絡がそちらに届くはずです」

「確かに、今回は警告が来ていない……」

「それに、貴方の言っている情報は、出所不明の単なる噂でしかありません。事実を明らかにしたいのであれば、もっと綿密に調査したらいかがですか?」

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