第13話 衝突

2038年5月23日 05時57分頃 とあるメディアのニュースにて:


「ニュースを中断して、速報をお伝えします。ディードルが、ウェルツに対して多方面での全面攻撃を行い、それに応戦する形で、ウェルツが反撃を開始しました。現在、ウェルツは、ミサイルなどの遠距離攻撃のみならず、大規模なサイバー攻撃なども受けており、被害はこれまでになく甚大なものと思われます」



2038年6月9日 08時31分頃 とある媒体に録音された人間たちの会話にて:


「ウェルツに侵攻しろ」

「なぜです?我々が、交戦中のウェルツと戦っても勝つ可能性は低い」

「結果的に、人類をゼロ・トリガーから守るには、これしかないんだ」

「だからと言って、そこまでする必要は……」

「うるさい!処刑されたくなかったら、すぐにやれ」



2038年6月13日 14時15分頃 とある動画サイト上の動画にて:


「見てください、遠くで煙が上がっているのが分かりますか?あれは、数時間前にこの一帯を襲った爆撃によるものです」



2038年6月14日 10時22分頃 とあるメディアのニュースにて:


「ディードルによるウェルツ侵攻から約3週間。膠着すると思われ始めていた戦いに、新たな動きがみられました。ディードルによる侵攻が続いても降伏しないウェルツに、世界協同連合に参加していたクシャナン、ユリーゼ、ヴァヴァジョルが次々と宣戦布告。それに対抗するため、ウェルツはワジョルに支援を要請し、それに応えたワジョルがウェルツに対する武器輸出を発表。これで、国vs国の戦いは、複数の国々が参加する総力戦へと変化してしまいました。この総力戦は、世界的な大戦争を起こす、最悪な引き金になってしまうのでしょうか?」



2038年6月17日 13時16分頃 とある媒体に録音された人間同士の会話にて:


「何もかも失ったんです。家と食料だけでも何とかなりませんか?」

「出来るだけの努力はいたしますが、今すぐにという訳にはいきません」

「どうしてです?」

「他にも、支援を待つ人々はたくさんいます」

「ここに、これだけのお金があります。どうか私を優先してください」

「極端に物資が不足している状況では、あまりお金は意味をなさないのですよ。順番通り待っていただけますか?」

「そんな……。全部失ったのは、私のせいじゃないのに……」



2038年6月19日 22時49分頃 とある人間同士の音声通話にて:


「今の戦争って、戦いを仕掛けた側も含めて、誰も争いを望んでいないんだろ?」

「そうだよ。みんな望んでいない」

「じゃあ、何で、ディードルは、戦争なんて始めた?」

「簡単に言えば、それしか軍事強化をさせる手段が残っていなかったんだ」

「おいおい、軍事強化させるメリットなんてあるわけが……。あっ」

「気が付いた?」

「軍事強化をどこの国々も競って行うようになれば、ゼロ・トリガーに対抗する道筋も見えてくるっていうことか」



2038年6月20日 11時03分頃 とある人間の演説映像にて:


「ウェルツの平和を脅かす者は、誰であろうと断じて許さない。我々は武器を持って勝利を手にする、その瞬間まで戦い抜くことを、ここに宣言する」

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