第12話 分断

2038年5月7日 14時10分頃 とある動画サイト上の動画にて:


「ゼロ・トリガーなんていう幻想から目覚めるんだ!」

「いいや、嘘じゃない。というか、お前の話なんて誰も聞いてないからな」

「考え直してくれ。政府の言うことを信じてたら、人生めちゃくちゃになるぞ」

「そう思うのは自由だが、邪魔はするな。帰ってくれ」

「……。どうなったって知らないからな」



2038年5月11日 20時05分頃 とある媒体に録音された人間の話にて:


「ゼロ・トリガー、ゼロ・トリガーって、うんざりだ。在ろうが無かろうが、そんなことはどうでもいいだろ!くだらないことに金を使うな!」



2038年5月16日 15時19分頃 とある媒体に録音された人間同士の会話にて:


「なるほどな~。ゼロ・トリガーって、人類を滅亡させる専用兵器なのか」

「ねえ、こんな動画見るのやめて、現実と向き合ってよ!」

「紛れもなく、これが現実じゃないか」

「本当に、そんなこと思っているの?」

「もちろん。いつか人類は滅亡するのに、君はなんで、それを信じないんだ?」

「逆に、ゼロ・トリガーの存在を信じて、何になるの?」

「全く……、話にならないな」

「話し合えば解決すると思った私が馬鹿だったみたいね。私たち、別れましょ」



2038年5月20日 18時24分頃 とあるメディアのニュースにて:


「ワジョルのヒン暫定大統領が、ゼロ・トリガー対策を進めている国々を、『茶番に過ぎない、子どもじみた真似はやめるべき』等と非難して、各国のリーダーから、クレームとも取れる発言が次々に寄せられています」


「ヒン暫定大統領の根拠なき発言に、深く失望している。大きな脅威から、国民を守るために、どんな事をするのが適切なのか、もっと慎重に考えてもらいたい」


「ワジョルのリーダー的存在は、誰が聞いても分かる通り、愚かな発言をした。ゼロ・トリガーが茶番だという指摘は、事実に反するものであり、それを子どもじみた真似と言って非難する言論は、世界を敵に回すことに等しい」



2038年5月21日 10時53分頃 とある人間の演説映像にて:


「我々が直面しているのは、まさに裏切りです。ゼロ・トリガーに対抗しようとしない国々は近く、悲惨な運命を迎えることになるでしょう」

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