第9話 不安感

2038年1月15日 14時36分頃 とある人間同士の音声通話にて:


「今日は、どんなご相談でしょうか?」

「急激なインフレによる物価の高騰で、生活が出来なくなり、貯金も底を尽きました。これから、どうやって生活すれば良いんでしょう?」

「それは厳しい状況ですね。何か、資産はお持ちですか?」

「車ならありますが、通勤や買い物に必要なため、手放すわけにはいきません」

「今現在は、田舎にお住まいで合っています?」

「はい。頼れる家族や親戚はおらず、1人暮らしです」

「了解しました。活用できる公的支援制度がないか、調べてみますね」



2038年1月17日 17時01分頃 とある媒体に録音された人間同士の会話にて:


「すみません、貴方。万引きしましたよね?」

「してないです」

「なら、バッグの中、見せてください。なんですか、これ?」

「パンです……」

「あ、水も入っている。他に、何か盗りましたか?」

「他には何も……」

「なんで、盗ったんですか?」

「頼れる人がいないから……、国の制度も受けれないし」

「だからって、盗っていいわけじゃないですよね?」

「生きるのに必要だったんです。何も贅沢品じゃないでしょう?」



2037年1月21日 0時14分頃 とある動画サイト上の動画にて:


「国内は問題で溢れかえっているというのに、政府は、ゼロ・トリガーのことばかり口にしますよね。目を向けるべきは、他にあるんじゃないでしょうか?」



2038年1月24日 20時48分頃 とあるメディアのニュースにて:


「インフレに伴う食材の価格高騰。その影響か、直近3か月間の公的支援制度の申し込み件数は、過去最大を記録しました。国民にとってなくてはならない、公的支援制度。しかし、プルモ首相は、来年度以降、公的支援制度にかかる予算を削減すると発表。そして、以下のような声明を国民に向けて発出しました」


「ゼロ・トリガーの脅威は、差し迫っている。超強力とも言うべき、この殺戮兵器から国民を守るために、我々は、あらゆる手段を実行しなければならない」

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